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良いポリコレ、悪いポリコレ

「ポリコレは脳の認知機能を低下させる」という記事が少しバズってたけど。


ポリコレは脳の認知機能を低下させるようです。

米国のテキサスA&M大学(TAMU)が2022年に報告した研究によれば、人間がポリコレ(特定の人々に不快感を与えないための配慮)に基づいた言動を行った場合、脳の認知機能が低下し、私生活の質が棄損される可能性が示されました。

ポリコレは脳の認知機能を低下させると判明!(ナゾロジー 2024/10/13)


でも、この記事が参照している英文記事(2022年のもの)を読むと、見出しから想像させる内容とは、少しニュアンスがちがう。


ポリコレが認知機能を低下させる、という結果が出たのは事実だけど、それは、職場でのポリコレの「コスト」を測る研究なのね。

これは、経営学(business administration)の先生方がやってる研究なわけです。そういう限定的な分野の知識であることを認識する必要がある。


「職場で、同僚の気持ちを害する可能性のあることは、一切言わないように、しないように」

と指導されたら、労働者の疲労は、指導されないより、増す。

という研究結果は、まあ、当たり前でしょう。

ポリコレの導入は、管理の強化であるとともに、労働の強化だからね。

通常の仕事の上に、「気を遣う」という仕事をやらされている。


こういう、普通に考えれば当たり前に予想できることでも、ちゃんと統制された実験で結果を出すのが学問だ、というのはわかるけどね。

労務管理上は、もし職場にポリコレを導入したら、それにともなう追加の疲労感をいやすための、何らかの施策が必要になる。そうしないと、パフォーマンスが落ち、疲労が別の被害を生む可能性もある。

でも、どのような施策が適当か、というところまでは、この研究は示唆していません。


私が興味を惹かれたのは、元記事には、逆の結果が導かれた研究も紹介されていることです。


研究誌に報告された他の実験では、ポリコレが、男女混合グループにおいて、よりクリエイティブな結果を出せることも示されている。

(That study, published in Administrative Science Quarterly, found evidence that political correctness among mixed-sex work groups was positively associated with creative output. Teams exposed to political correctness norms tended to generate a higher number of divergent and novel ideas compared to control groups.)


ポリコレのビジネスへの影響に関する研究では、今のところ、プラスとマイナスの両方が言われている、ということです。


学者ではない私の勘で言うと、

「性で差別するな」

という「禁止」タイプのポリコレは、ただ抑圧的で疲れさせるだけだけど、

「性を無視しろ」

という、従来の枠を壊す、積極的行動を促すメッセージなら、生産性があるのではないか。

適切な例かは分からないけど、たとえば、いつも職場で同性だけでランチを食べているなら、男女混合でランチしてみる、とか。そういうところから、クリエーティブなアイデアが生まれる可能性はある。



そうは言っても、一般的な意味での「ポリコレ」には、私は反対だけどね。

上の話題と離れて、選挙が始まったから言っておくと、

「差別主義者」

とか、

「パワハラ体質」

とかいう言い方を、やめていただきたい。

政治家に、「主義者」「体質」といったレッテルを貼るのは、極力慎重に願いたいね。

「ポリコレ」は、もとは毛沢東の言葉だと言われるけど、基本的には「既成権威や権力の価値の引き下げ」に関連していると思います。基本的に左翼的。文化大革命的。そこが「政治的」であるゆえんですね。

それにいい面があることを認めた上でも、ポリコレは、やっぱりこの世からなくしてほしいけどね、私は。


<参考>


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