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問わず語り

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私の作品集です。見ていただけると、とても嬉しいです。
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#1週間創作チャレンジ

ダレデモダレカ。【ショートショート】

ダレデモダレカ。【ショートショート】

あーもしもし。もしもし。聴こえますか?

周波数あってる?

この放送誰かに届いてるかな。まぁ別にいいか。届いても届かなくても。届く時は届くし、届かない時は届かない。そんなもんさ。でも届いた方が嬉しいのは確かだね。届いてたらいいなぁ。

まぁ、気にせず始めちゃおう。

誰かの為の誰かを紹介するラジオ番組!!

ダレデモダレカ~!!始まるよー!

この番組は誰かの提供でお送りします。

さぁ、今日は

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「わからないもの」の時間。【渾身の短編・3710文字】

「わからないもの」の時間。【渾身の短編・3710文字】

僕の中学校には、一風変わった授業がある。 

「わからないもの」の時間だ。

道徳の時間を使って行われるそれは、特徴として先生がモノを教えない。

先生も本当にわからないものを生徒と一緒に考える。というのがコンセプトとしてあるらしい。

ルールは大きく分けて3つ。

・この授業に参加するかどうかは生徒が選べる。興味がなかったら自習しててもいい。推奨はされてないけど寝るのにも寛容だ。興味が出たら参加

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お茶会。【空想親睦会】

ティーさん(以下T)「ミルクティーとロイヤルミルクティーの違いって結局の所牛乳に依存するのよね」

T「ロイヤルも牛乳の方に掛かっちゃってるわけよ!ロイヤルティーじゃないの。結局ミルク!!」

ミルクさん(以下M)「もー。いきなり手厳しいなぁ」コーヒーさん(以下C)「あぁ~でもわかるなぁ!」

C「カフェオレもミルクの手柄みたいなとこあるもんね。コーヒーがミルクのおかげでカフェオレに名前変わったよ

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1000の時。【ショートショート】

1000の時。【ショートショート】

「なんですかソレ?」

先輩から発せられた聞きなれない単語に思わず聞き返す。

「1000の時を知っているか?」

先輩は大真面目な顔をして私に繰り返した。私の訝しげな表情で知らない事を察すると、一呼吸置いた後に説明を始めた。

「09月30日から10月01日に変わる瞬間に日記帳を開くと、到達できると言われている時だ」

毎年1度、その瞬間にしかチャンスがない。先輩は重苦しい表情のまま私に続ける。

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閉店場所千秋楽。【ショートショート】

閉店場所千秋楽。【ショートショート】

「のこった!のこったのこった!!」

この相撲が通常と違う点は、土俵から出た方が勝ちで、残っている方が負けという点にある。

負けた者にはレッテルが貼られる。

最初は10と数字の書かれたレッテルは、今や50にまで膨らんでいた。50%offと書かれた、屈辱のラベル。

自分に全く価値がないと言われているようで、全く陰鬱な気分になる。

申し遅れた。私は缶のペンケースだ。

税込56円の缶のペンケー

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蓋もある実の話。【ショートショート】

蓋もある実の話。【ショートショート】

なんのとりとめも無い我らの町に、唯一のランドマークとしてそびえ立つ木があった。

樹齢800年を越えると言われるその木は、町の真ん中にある広場に堂々と生えていて、なにしろ目立つのでよく待ち合わせ場所として活用された。

いつしかその木は、「約束の木」と呼ばれるようになった。

町興しの一環で約束の木をモデルにした「ヤッキー」と名を冠されたゆるキャラが誕生し、その絶妙に間の抜けた顔で一時期だけ人気キ

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読みごし、極上。【架空インタビュー】

その争いは、とあるラーメン店で起きた。

「ソラシドラーメン」店主、宍戸 空(シシド ソラ)さんが証人だ。

今日は宜しくお願い致します。

「おぉ、なんでも聞いてくれなー!」

さっそくですが、当日の様子から。

「その日も常連客が多かったが、一組だけ新規の連中がいたな。速さ同好会と本人達は言うとった」

ーー速さ同好会。

「あぁ、私も気になったんで聞いてみたよ。なんだいそりゃあ、と。速さを

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