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外国人労働者の現状と課題~技能実習制度の現状と課題

今日は技能実習制度の現状と課題についてまとめてみたいと思います。
はじめに

 技能実習制度は、日本の労働市場において外国人労働者を受け入れるための重要な制度です。平成5年に創設されて以来、この制度は日本の経済と社会に大きな影響を与え続けています。

 私は12年前からこの制度に実務と運営などに関わることとなりました。現在、約32万人の技能実習生が日本で在留しており、主にアジア諸国からの若者が日本の様々な産業で働いています。

 しかし、みなさまがご承知のように、この制度には多くの課題が存在し、改善の余地があることが指摘されています。

1.技能実習制度の現状

①在留者数と受け入れ国

 技能実習制度の対象となる技能実習生は主にベトナム、フィリピン、中国などアジア諸国からの若者です。

 これらの国々からの実習生は、日本での技術や知識の習得を目的として渡航し、日本国内の多様な産業に従事しています。

 現在、技能実習生の在留者数は約32万人に達しており、年々増加傾向にあります。この増加は、日本の労働市場における外国人労働者の重要性を物語っています。

②受け入れ職種と労働市場への影響

 技能実習生を受け入れる職種は建設業、食品製造業、耕種農業、機械加工業など90職種に及びます。

 これらの職種は日本の経済活動において重要な役割を果たしており、低賃金の職種での慢性的な人手不足に悩まされています。

 例えば、建設業では東京オリンピックに向けたインフラ整備や都市開発プロジェクトが相次ぎ、深刻な人手不足が問題となっていました。

 食品製造業でも、低賃金の職種と高齢化や少子化の影響で労働力が不足しており、技能実習生の存在が欠かせません。

③技能実習生の労働条件と待遇

 技能実習生は労働関係法令が適用される雇用関係の下で働きながら、実践的な技能や技術を習得します。しかし、実際の労働条件や待遇には多くの問題が存在します。

④労働時間と賃金

 技能実習生の多くは長時間労働を強いられており、過労による健康問題が懸念されています。法定労働時間を超える労働が常態化しているケースも少なくありません。

 また、賃金も低く設定されていることが多く、実習生の生活を圧迫しています。賃金の不払いが発生することもあり、実習生の経済的な負担が増大しています。

⑤休暇制度

 休暇制度の不備も大きな問題です。多くの実習生が十分な休暇を取ることができず、労働環境が過酷なものとなっています。

 これにより、実習生の精神的・肉体的な健康が損なわれるリスクが高まっています。

⑥労働環境

 一部の職場では過重労働や適切な技術習得の機会が不足していることがあります。

 特に建設業や農業では、過酷な労働条件が問題視されており、技能実習生が適切な技術を習得する機会が限定されているケースがあります。

 これにより、技能実習生が母国に帰国後に活かせる技術や知識を十分に習得できないという問題が生じています。

⑦実習実施者側の問題

 技能実習制度の運営には、実習実施者側の問題も少なくありません。不正行為や労働条件の悪化が指摘されており、制度の信頼性を損なっています。

⑧賃金の不払い

 一部の実習実施者が技能実習生に対して賃金を適切に支払わないケースがあります。これは実習生の生活を直接的に脅かし、彼らのモチベーションを低下させる原因となります。

 また、賃金の不払いは法的に許されない行為であり、実習実施者に対する厳しい取り締まりが求められます。

⑨パスポートや在留カードの取り上げ

 実習実施者が技能実習生のパスポートや在留カードを取り上げる行為も問題となっています。これは実習生の自由を奪い、事実上の監禁状態に置く行為です。

 こうした行為は人権侵害に当たり、厳しい処罰が必要です。

 約10年前に私が関わっている実習先でその会社が初めて受入れした1年目の実習生たちが失踪目的で実習にきた情報がありました。
 2年目となる在留カードの更新が終わった際に、経営者がすぐに実習生にパスポートを返さないというタイミング。
 この実習生たちが入国管理局に連絡して、私たちは厳しい罰則を受けました。
 その半年後にその実習生たちは堂々と失踪しました。

東城さん、いかなる場合でもパスポートを返さないはいけないことだと言われました。

⑩労働条件の悪化

 一部の実習実施者が労働条件を守らないケースが見られます。例えば、適切な労働環境を提供せず、実習生が過酷な労働条件に置かれることがあります。

 このような環境では、技能実習生が十分に技能を習得することが難しく、制度の目的を達成することが困難です。

⑪実習生側の問題

 技能実習制度には、実習生側の問題も存在します。多くの実習生が経済的な事情により失踪を選択せざるを得ない状況に置かれています。

⑫経済的な負担

 技能実習生の多くは母国で高額な費用を借金して渡航しています。日本での収入を元に借金を返済することを期待しています。

 高額な費用となるケースでは、実習生を送出す機関の母国ではそれがビジネスとなり、中間でお金を要求する個人やブローカーで悪質な人たちが存在するからです。

 ほとんどの場合には会社側からの応援もあり解決していけることが私たちの周りでは当然です。

 しかし、実際には賃金の不払い、不適切な労働条件、過酷な労働環境などの問題に直面し、計画通りの収入を得ることができないケースが多々あります。この結果、実習生は失踪を選択せざるを得ない状況に追い込まれます。

⑬失踪のリスク

 失踪した実習生は不法就労者として生活することになり、さらなる搾取や人権侵害のリスクに直面します。

 また、失踪は実習実施者や受け入れ機関にとっても大きな問題であり、制度の信頼性を損なう要因となります。

2.改善策と提案

技能実習制度の改善には、多方面からのアプローチが必要です。

①労働条件の改善

 技能実習生の労働条件を改善するためには、法的な取り締まりの強化と労働条件の監視体制の整備が必要です。

 具体的には、労働基準監督署や関連機関による定期的な監査を実施し、労働条件の適正性を確認することが求められます。

 また、技能実習生の労働環境改善のためのガイドラインを策定し、実習実施者がこれを遵守するよう指導することが重要です。

②実習実施者側の不正行為の取り締まり

 不正行為の取り締まりを強化するためには、罰則の厳格化と実習実施者に対する教育が必要です。

 不正行為を行った実習実施者には厳しい罰則を科し、再発防止のための措置を講じることが重要です。

 また、実習実施者に対する教育を通じて、技能実習制度の趣旨や遵守すべき規則を周知し、不正行為の発生を未然に防ぐことが求められます。

③経済的支援策の検討

 実習生側の経済的な支援策を検討することも重要です。具体的には、渡航前の費用負担を軽減するための制度を順守することでこのことは監理団体に義務づけされています。

 また、低賃金や会社が業績悪化により就労を続けれない場合には、日本での生活費の支援を行うことが考えられます。

 さらに、技能実習生が適切な賃金を受け取れるよう、賃金の適正化を図るための制度を日本労働者の賃金の適正化の制度と併せて整備することが求められます。

3.まとめ

 技能実習制度は、日本の労働市場において重要な役割を果たしている一方で、多くの課題が存在しています。

 労働条件の改善、実習実施者側の不正行為の取り締まり、実習生側の経済的支援など、多方面からのアプローチが必要です。様々に議論を重ね続ける必要があると思います。

 技能実習制度は、1981年の外国人研修制度から始まり、1993年に技能実習制度が創設され、2010年には在留資格「技能実習」が設定されました。これにより、技能実習生は労働者として認められ、労働関係法令の適用が拡大されました。しかし、制度の運用には多くの課題があり、これに対処するための改正が繰り返されました。最終的に、2023年には技能実習制度の廃止が決定され、2024年には新たな在留資格「育成就労」が創設される見通しです。(※沿革を下段に記載します。)

日本は、将来の日本の社会のために
より良いしくみを構築できるはずです。

最後までお読みいただき本当にありがとうございます。

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☆参考になるサイトを挙げておきます。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』技能実習制度
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%80%E8%83%BD%E5%AE%9F%E7%BF%92%E5%88%B6%E5%BA%A6

日経ビジネス:社会問題化する「技能実習生」 制度の現状と課題
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/011800630/

法務省:出入国在留管理庁:技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議
https://www.moj.go.jp/isa/policies/conference/03_00033.html

最終報告書
https://www.moj.go.jp/isa/content/001407013.pdf
最終報告書(修正履歴付き)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001407282.pdf

エヌー・ビー・シー協同組合:技能実習生の給与状況は?相場や給与設定を解説
https://www.nbc.or.jp/blog/20220615_2946/

「技能実習制度及び特定技能の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応について」
(令和6年2月9日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/pdf/taiosaku_r060209kaitei_honbun.pdf

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※技能実習制度の沿革要約

技能実習制度創設以前

1981年(昭和56年)
 出入国管理令の一部を改正する法律(法律第85号)が成立し、「産業上の技術又は技能を習得しようとする者」の文言が追加され、外国人研修制度が創設された。

1990年(平成2年)
出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(法律第79号)により、在留資格「研修」が定められた。
 法務省告示第247号により、団体監理型の研修が設定された。
 技能実習制度創設から在留資格「技能実習」の設定まで。

1993年(平成5年)
「技能実習制度に係る出入国管理上の取扱いに関する指針」(法務省告示第141号)により、在留資格「特定活動」の一類型として技能実習制度が創設された。当初、研修・技能実習の期間は最長2年間だったが、1997年に3年間に延長された。技能実習への移行には、技能検定基礎2級相当試験に合格することが要件とされた。

在留資格「技能実習」の設定以降

2010年(平成22年)
出入国管理及び難民認定法の改正により、在留資格「技能実習」が設けられ、研修期間が技能実習1号、特定活動(技能実習)期間が技能実習2号とされた。

2016年(平成28年)
「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)が成立し、外国人技能実習機構が設立された。

2017年(平成29年)
技能実習法の施行により、技能実習3号が設けられ、技能実習2号から3号への移行には技能評価試験の合格が必要とされた。

2019年(令和元年)
改正入管法が施行され、技能実習から特定技能への移行が可能となった。

改正までの経緯】
2006年(平成18年)
 規制改革・民間開放推進会議が答申を出し、研修生保護に関する法案の提出を求めた。

2007年(平成19年)
 厚生労働省と経済産業省がそれぞれ中間報告書を公表し、研修制度の見直しや保護制度の強化を提案した。

2009年(平成21年)
 出入国管理及び難民認定法改正案が成立し、2010年7月1日に技能実習制度関連の改正が施行された。

2015年(平成27年)
 安倍内閣が技能実習法案を閣議決定し、受け入れ期間を最長5年に延ばすとした。

2020年(令和2年)
 新型コロナウイルス感染症の影響で、特例として技能実習生の異業種転職が認められた。

2023年(令和5年)
 現制度の廃止と新制度への移行を求める中間報告が出され、11月には有識者会議が最終報告書をまとめた。

2024年(令和6年)
「育成就労」の在留資格創設を柱とした改正案が閣議決定された。

まとめ
技能実習制度は、1981年の外国人研修制度から始まり、1993年に技能実習制度が創設され、2010年には在留資格「技能実習」が設定されました。これにより、技能実習生は労働者として認められ、労働関係法令の適用が拡大されました。しかし、制度の運用には多くの課題があり、これに対処するための改正が繰り返されました。最終的に、2023年には技能実習制度の廃止が決定され、2024年には新たな在留資格「育成就労」が創設される見通しです。

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