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エッセイ

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ふと思いついたことや昔の思い出を書いています。
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十人十色のアイドル論:「アイドルについて葛藤しながら考えてみた」感想

十人十色のアイドル論:「アイドルについて葛藤しながら考えてみた」感想

アイドルオタクの間で話題の新著「アイドルについて葛藤しながら考えてみた」を読んだ。

アイドルとは実に厄介なエンタメだ。外から見ると少々気味が悪い世界(少なくとも僕はそう思っていた)だが、内から見ると眩しすぎるぐらいに輝いている。楽しさもドキドキも切なさも味わえる。坂道のようなメジャーアイドルであれば毎日何かしらのコンテンツ供給があり、本書の中でも触れられているようにある種のインフラのように生活の

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渡邉美穂の卒業と世界の終わり

渡邉美穂の卒業と世界の終わり

渡邉美穂がアイドルを卒業する。

振り返ってみれば、僕が日向坂とともに歩んできたこの二年半は、思い通りに行かないことばかりだった。胸を張って、いまのところ僕の人生でいちばんの谷だと言い切ることができる。二年前の春に彼女に振られて、そのまま世の中はコロナ禍に突入し、年末年始は濃厚接触者になって一歩も家から出られず、年が明けて心機一転と思ったらこんどは職場で激務の部署に飛ばされ、毎日のように怒られたり

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27クラブ

27クラブ

マッチングアプリで知り合った女性とランチをした。

去年の年末、地元の友だちが婚約し子どもも生まれるという報告を聞いて、このままではいけないと思い、僕はこのサービスに登録した。ちょうどコロナ禍直前の春に、僕が彼女に振られたのと入れ替わるように出会ったふたりは、この二年の間に愛を育み、家族になったのである。二回目のデートを終えてこれから付き合おうかというタイミングの彼らと僕の三人で飲んだこともあった

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とある一日(とその前後の数時間)の記録

とある一日(とその前後の数時間)の記録

Noteに溜まっているメモを整理しようと下書きを眺めていたら、ことしの8月15日に書いた日記が見つかった。東京オリンピックが終わってすぐの頃だ。わりとしっかり書いているのに、公開手前で放置してしまったらしい。せっかくなのでここに記録として残しておこうと思う。

金曜の夜は友人とひさびさに電話で話した。いつも最近ふれた映画や本の話からはじまって、夜遅くまで哲学や社会学にまつわるあれこれを語る。大学時

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ツイッター歴8年

ツイッター歴8年

ツイッターのプロフィール欄を見たら「2013年6月からTwitterを利用しています」と書いてあった。僕はそろそろツイッター歴8年を迎えるらしい。

僕はいま25歳だ。人生のだいたい三分の一というと、その時間の長さにおどろいてしまう。それと同時に、どれだけの時間を無駄に過ごしてきたのだろうと不安になる。僕がツイッターをはじめたタイミングで産まれた子どもがこの春小学三年生になったと考えると、その重さ

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散歩道の桜を追って

散歩道の桜を追って

朝起きてすぐスマホを開いたら、見たいと思っていた映画のチケットが完売だった。すっぽり空いてしまった午前中の予定を、どう埋めようか。ほかの映画でも見ようかとしばらく悩んだ末、せっかく天気もいいし、お気に入りの散歩コースでひとり花見をしようと思い立った。

近所の公園は、僕と同じようにこの雲ひとつない空に誘われてやってきたであろう花見客で溢れていた。といっても、それなりに大きい公園だし、人手が多いとは

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アイドルとの向き合い方

アイドルとの向き合い方

バラエティ番組として「日向坂で会いましょう」のファンになったのがおととしの9月。それから日向坂46をアイドルとして意識し始め、追いかけるようになってから、そろそろ丸一年が経つ。コロナ禍で思うように外出できず、ずっとおうちに篭っていたこの灰色の期間をたのしく過ごせたのは、まちがいなく日向坂46のメンバーのおかげだったと思う。ハマった当初は地上波番組に出演が決まっただけで大騒ぎだった彼女たちも、いまで

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Starting Point

Starting Point

ふと去年のいまごろは何をしていただろうかと気になり、カレンダーを眺めてみた。2020年1月4日土曜、彼女と初もうで。ランチにちょっと高い回転寿司を食べたあと、明治神宮を参拝した。前日家族で引いたおみくじの結果が悪かったので引き直したかったのだが、ここにあるくじはどれも吉凶の占いがない。知らない神様の詠んだありがたい和歌が書いてあったが、もう内容は忘れた。あと、神前式を挙げる和装の男女が目の前を通り

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アイ・ラブ・ユー。できるか、青年。

アイ・ラブ・ユー。できるか、青年。

「男はつらいよ」シリーズは名言の宝庫である。中でも「男はつらいよ 寅次郎頑張れ!」で寅さんが恋に悩む青年にかけたことばは随一の力を持っている。

「アイ・ラブ・ユー。できるか、青年。」

帝釈天で産湯を浸かった生粋の江戸っ子がつかう「アイ・ラブ・ユー」のことば。あえて横文字である。そこに含まれるキザっぽさと照れ隠し、あまりにストレートでこっ恥ずかしいその響き。カッコつけてあえてその〈ダサい〉フレー

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立石昼飲みチャレンジ

立石昼飲みチャレンジ

免許の更新を口実に休みを取り、兼ねてから気になっていた立石での昼飲みを敢行した。僕の狙っている栄寿司と宇ち多"はどちらも立石を代表する大人気店で、土日に行けば行列は必至。食べたい料理も食べられなさそうだったので、できれば平日の昼間にこっそり行くのがいいと思っていた。しかもこのご時世である。なるべく密を避けて楽しみたい。四半期末でヒマではないのだが、そろそろ更新期限が来てしまういまこのタイミングしか

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カレーうどん

カレーうどん

お昼に食べたレトルトカレーのにおいが、食道を逆流して口の中に漂う。ランニング中の僕は胃からせり上がるその生ぬるいガスに気持ち悪くなってしまった。カレーは大好きな食べ物だ。いつ食べても美味しい。しかし、一度食べたが最後、次の食事までスパイス臭と向き合うはめになる。晩ごはんがカレーのときは最悪だ。だいたい作った分を食べ切れなくて、翌日の朝ごはんも残り物のカレーになってしまうからだ。僕の胃の中ではカレー

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Go To Cinema

Go To Cinema

近所の映画館が約2ヶ月ぶりに再開するらしい。やっとか、と思った。ほかの映画館はすでに営業を始めていたのに、最寄りの映画館はしばらく再開の兆しがなかったから、正直言って僕はすこし焦っていたし苛ついてもいたのだ。だから再開の報を聞くと僕は急いで映画館のホームページを開いた。なるほど、当然のことながら通常通りの営業とはいかず、いくつかの制限やルールが設けられるらしい。シアターの入り口には検温器を設置、座

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かきくけこんな日も

ツイッターが殺伐としている。もともと〈みんな仲良く〉の雰囲気ではなかったけれど、さいきん特に空気が悪い。それも仕方のないことだとは思う。みんなが一様に不安を抱え、この不確実な時代を生き抜くための答えを求めている。思い通りに行かない怒りや苛立ちは他者への攻撃に向かい、反響しあって負の感情を再生産していく。毎日ツイッターを開くたびに誰かが怒っているのを見ることにも疲れた。そろそろ僕のソーシャルメディア

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水と生きる

水と生きる

僕は飲み会が好きだ。家でひとり映画を見ながらビールを流し込む時間もたまらなく幸せだけど、やっぱり友人や後輩とお酒を酌み交わし会話に興じる時間の方が楽しい。飲みすぎた日の翌日に「もうこんなことしない」と後悔しても、次の週末にはそのことをすっかり忘れて夜の新宿を歩いている。僕の脳には都合の悪い記憶を自動消去する便利な機能がついているのだ。

会社の人とのいわゆる〈飲みニケーション〉は気を遣うし若手の僕

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