見出し画像

【長編傑作】評価経済の世界~お金に変換できない評価という新しい価値観

2020/9/19 , 9/20@八王子

【参考】橘玲著)残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法


リナックスOSは、多くのエンジニアの無償の成果によって、完成した。
エンジニアたちは、なぜ、無償で、自分たちの貴重な時間と、スキルを使って、リナックスOSの開発プロジェクトに参加したのか?
そこでは、貨幣より、もっと価値のあるものが存在した。
それは、評価である。リナックスのプロジェクト内での評価である。
SNSに例えるとわかりやすかもしれない。
" 1万イイネ " と " 1万円 "のどっちの価値に重きを置くのか?
リナックスのプロジェクトに参加したエンジニアは、" 1万イイネ " に価値を見出した。
それは、貨幣経済ではなく、評価経済によって、もたらされた最も有名な成功例である。
貨幣より価値がある評価の世界とは?

リーナスの法則

リーナスの法則
人生にとって意味のあることは、3つあり、段階を追って進化していく

1.生存
人類はその長い歴史の大半を、伴侶を獲得して次世代に遺伝子を残すことに費やしてきた。

2.社会性
人は社会的な生き物だから、人との繋がりの中でしか生きられない。社会のヒエラルキーの中で、高い序列を手に入れるために、多くの時間を費やす。
テクノロジーは、生存のためのツールから、社会性、つまり、コミュニケーションのためのツールに進化した。それは、生存が容易になり、社会性の重要性が増したことの証明である。

3.娯楽
豊かな社会では生存に対する不安はなくなり、テクノロジーによってインターネット空間にアクセスできるようになった。
生きる目的が、娯楽に移行するのは必然だ。

リナックスのプロジェクトは、最低限の衣食住を確保したエンジニアが、インターネットを介して共同作業を行なう環境を手に入れたことで、はじめて成立した。リーナスは、金銭や仕事とは関係なく、好きなことを純粋に楽しむことこそが人生の意味だという。エンジニアこそが、人類の進化の最終段階にはじめて到達した"選ばれし民"である。

所有権

オープンソースのプロジェクトでは、ルールが、自然発生する。
所有権についてのルールである。

オープンソース
ソフトウェアのソースコード(プログラミング言語で記述された文字列)を無償で公開し、誰でも自由に改良・再配布ができるようにしたソフトウェアのこと

<所有権を獲得する方法>

1.誰もいない未開の地(フロンティア)を開拓すること。
自らプロジェクトを創始すること。

2.正当な手続きを経て所有権が移転すること。
プロジェクトの所有者が、開発や保守作業に時間を割くことができなくなったとき、後継者に引き継ぐこと。

3.放棄されたプロジェクトを占有すること。
所有者が消えたか興味を失ったプロジェクトを見つけたら、自分が引き継ぐことにしたと宣言すること。

オープンソースは、所有権を放棄することで誰にでも自由に改変・利用できるようにする活動と考えられがちである。
しかし、実際には、自然発生したルールによって、所有権が明確にあり、所有権がオープンソース文化の原動力だったのだ。

リナックスのプロジェクトでは、創始者リーナスがすべての所有権を有するのである。そして、所有権を有するリーナスの絶対的評価制度によって、評価が安定する。

評価システム

リーナスがエンジニアたちから最大級の名誉を贈られたのは、オープンソースでOSを開発するという巨大プロジェクトを創始し、成功させたからだ。

エンジニアたちは、なぜ、リナックスのプロジェクトに無償で参加するのか?プロジェクト創始者リーナスが、リナックスのプロジェクトに参加するエンジニアを評価する権限を持っているからである。エンジニアが、バグを発見したのか、バグを修正したのか、新機能を開発したのか、その貢献度によって、リーナスから評価を与えられる。

エンジニアなら誰でも、リナックスのようなプロジェクトを自ら創始し、名誉を一身に浴びたいと考えるが、現実には難しい。そこで、エンジニアは、リナックスのプロジェクト内での評価を得ることに、尽力する。

そのときに重要なのは、自分の貢献度が正しく評価されるかどうかだ。

リーナスは、プログラマーではなく優秀なプロジェクトマネージャーに例えられる。リーナスの優れたところは、評価をめぐるエンジニアたちのゲームの本質を理解し、公正にエンジニアを評価する仕組みを作ったことだ。

その公正な評価こそが、世界中の優秀なエンジニアたちを無償で働かせてOSを開発するという"奇跡"を起こす源であった。

評価経済

リーナスの法則では、豊かな社会では金銭よりも評価の方が魅力がある。

金銭は、量が増えるにしたがって、魅力がなくなる。

『財布に10円しかない人が、1万円もらう』のと、
『貯金が1千万円ある人が、1万円もらう』のとでは、同じ1万円であっても、感じ方は全く異なる。

それに対して、評価は、自己実現欲求・承認欲求といった高次の欲求を満たすので、麻薬と同じで、依存性がある。

それに、評価は、貯金と違って、放っておくと時間とともに失われてしまう、人々から忘れられてしまう。

評価は、金銭よりもずっと貴重な資源なのだ。

リナックスが成功すると、リーナスのもとには、様々な儲け話が持ち込まれるようになったが、リーナスは金銭に支配されることはなかった。リーナスは、" 評価の信用が失われてしまうこと " は、 " ゲームのルールを変え、エンジニアがゲームオーバーすること " であると認識していた。

<金銭とモチベーションの実験>

ボランティアで実験に参加した大学生たちにパズルを解かせた。
パズルはおもしろく、自由時間でもパズルをやり続ける学生がかなりいた。
次に、解いたパズルの個数に合わせて金銭を支払うことにした。
すると、学生たちは、自由時間には雑誌を読んだりして休憩するようになった。
金銭は課題に取り組むモチベーションを高めるのではなく、失わせたのだ。
パズルを解くのは、おもしろいからだ。
ところが、金銭を支払われると、パズルを解くことが仕事になってしまう。
その結果、ゲームのルールが変わって、本来の"おもしろさ"がどこかに消えてしまう。

リナックスのプロジェクトに金銭が介入すると、ゲームが、つまらなくなってしまうことをエンジニアは、本能的に知っているのだ。

エンジニアが金銭を求めていないのではない。

現代にもっとも尊敬されるのは、"好きなこと"をやって高い評判を獲得し、莫大な富を手にする選ばれし民だ。

ジョンレノン、イチロー、メッシを「金のために、音楽、野球、サッカーをしている」と非難する人はいない。
これは、彼らが、自分の得意なことや好きなことに精魂を傾け、常人の到達できない高みに達したことを誰もが認めているからだ。
金銭は、成功(評判)のオマケにすぎない。

リーナスをはじめ、リナックスのプロジェクトで評価されたエンジニアたちも、その評判によって、リナックス以外の仕事で高い金銭を得ている。

それについて、非難するエンジニアはいない。

リーナスや評価されたエンジニアが、ゲームのルールを変えずに、高額の金銭を受け取るのなら、それが、創始者や評価されたエンジニアの成功である。

貨幣経済と評価経済

<貨幣の役割>
・価値を測ることができる。
・交換できる。
・貯めることができる。

そんな貨幣の役割を、どういう風に評価が担っているのか?

・価値を測ることができる。
→エンジニアが、バグを発見したのか、バグを修正したのか、新機能を開発したのかによって、評価が下され、その評価は当然、難易度に比例する。

・交換できる。
→エンジニアはリナックスのプロジェクトで得られた評価を、リナックス以外の仕事で金銭に換えることが容易にできる。

・貯めることができる。
→評価は時間とともに忘れられ失われていく。
貨幣経済とリナックスのプロジェクトでの評価経済の違いは、貯蓄である。
貨幣経済では、お金は減らないが、この評価経済では、評価が減る。
評価経済は、例えば、お金が腐っていくという考え方の経済世界である。

貨幣経済では、貯金しているお金の数値は減らないが、インフレによって、お金の価値は、減っていく。

価値と未来

貨幣と信用と宗教

評価経済、信用経済の話を聞いたことはあっても、こういう風に体系立てて、聞いたことはなかった。

20年前と、今
10年前と、今

どれほどの変化が、この時代に起きているのかは、言うまでもない。
しかし、有史以来、普遍の価値であった貨幣の時代が崩れ去るときが、いよいよ近づいてきているということであろうか?

世界の歴史は貨幣とともにあった。
貨幣の力で、国が栄え、そして、衰退し、滅びてきた。

歴史の荒波に翻弄されながらも、その荒波を越えて、時代を紡いできた、唯一の世界は、宗教である。

日本にいると宗教のことなど気にしないで、生きているが、世界に出ると実感する、世界は宗教で、できている。
宗教のことを知らないのは、世界中で、日本人くらいである。

そんな貨幣以外の価値観が、世界中にあるのだから、信用の価値が高まっていくのは、理解できる。
そして、貨幣と一部相反する宗教が共存したように、信用も貨幣と共存してく道を辿るであろう。

複雑系の世界では、未来は見えないが。

湯浅の未来

ズドンと来た。

例えば、ボクサーのパンチをはじめて喰らったときのような感覚。
ボクサーと戦ったことないから、わからないけど。

『金銭や仕事とは関係なく、好きなことを純粋に楽しむことこそが人生の意味』
『現代にもっとも尊敬されるのは、"好きなこと"をやって高い評判を獲得し、莫大な富を手にする選ばれし民だ。』

今の自分のフワフワした現状を、きちんと、言語化されたからだ。

『金銭や仕事とは関係なく、とめどなく溢れてくる知的欲求、世界をもっと知りたいという欲求に突き動かされるままに、本を読み、文章を書き、楽しんでいる。』
そして、
『このレールの上を走りながら、"湯浅淳一"をブランディングしていき、その先に、待っている何かで、莫大な富を得たい。』

本を読み、文章を書くのは、思考するためである。
たくさんの知識を付けて、世界を公式化したい。
世界にフレームを当てはめたい。
知識のおかげで、少しづつ、世界の仕組みがわかってきた。
人間の脳、脳の不合理さ、人間の歴史、宗教の歴史。
世界はまだ、ほとんど、白黒であるが、少しづつ色づきはじめてきた。
色づいた世界は、どういう風に見えるのか?
知識という絵具で、世界を塗って、論理的な原理というフレームをつけた作品を、美術品に仕上げたい。

<参考:意訳>
スーパーの試食販売は、無料で試食できるのはなぜか?
人は、何かをしてもらったら、お返しをしなければならないという心理が働く。(返報性の原理)
無料で食べたのだから、お返しに試食したものを買わなければならないと考える。
そして、その考えを実行に移す人が一定数いる。
無料試食を提供しても、金銭的メリットがあるのだ。
返報性の原理をはじめとする、たくさんの原理・公式を横展開して、ビジネスにしたい。


#湯浅探偵団
#日記
#エッセイ
#コラム
#ブログ
#人生
#生き方
#ライフスタイル
#毎日更新
#毎日note
#日常
#毎日投稿
#読書感想文
#推薦図書
#橘玲著
#残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法


この記事が参加している募集

#推薦図書

42,575件

#読書感想文

189,568件

あなたの琴線に触れる文字を綴りたい。