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初個展直前に脳梗塞になった話:入院12~14日目(一般病棟7~9日目)

入院12日目 : 凛とした女性

(一般病棟7日目)
朝定刻。いつも通りの朝食とルーティン。便意を催す。車椅子で廊下の奥へ向かう。エレベーター前の待合ソファに女性がいた。凛とした雰囲気。誰だろう。あまり見るのも悪いのでこちらを向かない程度に伺った。

車椅子なので奥のトイレへ。ふとTさんの声が前を通った。あ!そうか、昨日、Tさんから今日の退院という話を聞いたのだ。あの凛とした雰囲気は次男の奥様なんだな。Tさんの話通りのお嫁さんだなと思った。Tさんとは色々お話した。僕はこれから個展をしたいとか、僕のyoutubeチャンネルの宣伝もしておいた。入院生活を患者の視点で何かしらまとめてみたいとも。Tさんは『youtube楽しみにしてるよ』と言ってくれた。その前にnoteになりました。読んでくれるといいなぁ。

飛び級

笑顔PTさん。とにかく支えられて歩く訓練。とにかく感覚を呼び戻す訓練。装具で爪先が摩れる可能性は格段に低くなった。でもロボットみたいだ。てくてくてく。ギコギコギコ。今日も辛かった。足が吊りそうになった。それを告げたら笑顔PTさんが言った。足首のプラスチック装具を外してマッサージをしながら『十骨さんはどうですか?あるのとないのと、感じるままに、忌憚なく言って下さい』と。僕は『飛び級だと思う』と答えた。この右足は自分でそれを信じてるかどうか、この右足が期待通りなら高い能力で化けるし、その通りでなければ潰れる。ただし、今の、現状の僕は、足首プラスチック装具は必須なんだと思うとも答えた。飛び級でどちらに化けるのか。信じてる。

廊下では先程の僕のリハビリに感化された様に車椅子のおばあちゃんが必死に車椅子を操作してる。意思の強さを感じる表情。鬼気迫るといった感じの。それを見てなんとなく頑張りは連鎖するんだなと思った。やる気をもらった。

少し見直した看護士さんの回診 

とある看護士さんの血圧計測。そういえばこの看護士さんはちょっと前に"ナカガミ"さんと言い合いになってた方だ。それで僕は少し苦手な印象だった。でも今思えば"ナカガミ"さんが、一方的にこの看護士さんに切れたんだよな。身体が不自由な事にイライラした"ナカガミ"さんはこの看護士さんに八つ当たりしたんだ。それで看護士さんも売り言葉に反応してただけだったと思う。しかし目から鱗の事があった。さきほど退院して行ったTさんの見送りにこの看護士さんも居た。そこには笑顔で見送る優しそうな人が居た。Tさんもこの看護士さんに名残惜しそうに話をしていた。Tさんがそんな顔をするならきっと悪い人ではない。僕の印象は変わった。だから僕はなんとなく血圧の道具を巻きやすい様に腕を伸ばした。

介護士さんによるシャワー

風呂場に入るなりなんでここに入院したんですか?と質問され脳梗塞でって答えたらそんな若いのにって驚かれた。その介護士さんも保育園に子供を預けている様な世代。そりゃ驚くよねと。介護の風呂も終わり、そろそろ保育園に迎えに行かないといけないと言ってたのになかなか片付かない様子で『何かやってない事ないかなぁ』と言った。先輩らしき女性から『やっとくから心配しないで行きなさい!』と声をかけられありがとうございますと去っていった。

入院13日目:数字リハビリ

(一般病棟8日目)
気合いSTさん。どんな内容だったかメモに残ってないので判らない。でも単純だけども頭を使う内容だった事は判る。【なんとも言葉に出来ず下手したら、、、言葉悪く言えば、、、イライラする】とまで書いてある。そう、脳の疲れはイライラする。さらには言語聴覚士さんがそういう対象となる。また来たの?とか、もういじめないでよとか言われるそうだ。しかし高次脳機能の回復訓練はそういうもの。脳トレはそういうもの。患者の苦手なところ=回復させないといけない所。だから患者はイライラしていじわるされてると感じるそうだ。

笑顔PTさん。病棟の廊下は端からナースステーションまでが1辺35m程。そしてナースステーションからまた別方向にもう1本伸びている。通して歩くと約70m。歩くといっても後ろから支えられているし装具を着けながらの訓練。相当辛い。右ふくらはぎの疲労がピーク。何本歩いたか、最後の1本は悲鳴をあげていた。とはいえ無理をさせられている訳ではなく自発的な頑張りです。

バビンスキー反応

頭で考えないで体が反応してしまう。赤ちゃんが本能でする仕草だそう。伸びだとか。しかし成長するにつれてブレーキをかける様になる。それが意図しないタイミングで出るから不快感となる。朝起きた時にもそれが起きてしまう。

車椅子で初の部屋トイレ

明らかに辛い。明らかに苦しい。左手とまだ痺れてる感の残る右手と左足の3点で踏ん張る事はこんなにも辛いのかと。しかもチン元(足元や手元に習う)を見てないと垂れてくる。屋根の雨の様に。雨樋(アマトイ)は理にかなっているんだなと知る。

眼鏡の縁の色

入院関連の書類を書くためにペンを借りようと思いナースコールで呼んだ看護士に『はじめまして、ペン借りれます?』と言うと『え?昨日話しましたよ笑?』と返された。このご時世だし病院だしマスク101%(当然100だしそもそも病院なのでプラス1とする)で目しか見えないから顔が覚えられない。髪型も昨日とは違ったと思う。しかしそもそも記憶力が怪しくなっているので断言出来ない。それに看護士さんは1本にくくってる人が多い。しかも別の看護士さんでは同じ背格好でメガネをかけてるとまた同じ間違いを冒しそうになる。『会いました?』と声をかけてしまい『いいえ』と返される。メガネの縁が黒い事に気付いたら目の前から消えてた。先日冗談をとばして返答されたから話が解る人だなぁと思ってた人は、よくよく見たら縁が赤だった。

とうとう怒鳴る

先日の不穏な空気を起こしていた患者さんがついに怒る。
(↓不穏な空気・退院したい患者)

叫ぶ、怒鳴る。『こんなに長いなんておかしいだろぉ、もう出ないとダメなの、仕事行かないとダメなわけ!』しかしそこはさすが看護士長。手慣れてる。怒らないでとなだめながら内線で担当医師を呼ぶ。とうとう帰れるのかな?と僕も内心期待(?)してたら夕食を談話室で車椅子でおとなしく食べていた。どうやらなだめられたらしい。

気になってたお願いの声

『お願い』と叫び繰り返すのは何故だろう。この時は考えが至らずつい看護士さんに聞いてしまった。そういう症状の患者さんも居る事に考えが至らなかったのだ。でも切実な響きで叫んでる。食堂に居るその方に車椅子で近付き話し掛けた。『表参道、本郷、ここはホテル、一週間ごとによく泊まる、ヒロミ、カズ、カズコ、妹、窓の向こうに知り合いがいる、オレンジページ、なすの美味しい食べ方』目に入るものを叫んでいるのか記憶にあるから叫んでいるのか判らなかった。

入院14日目 : 前十字靭帯損傷

(一般病棟9日目)
笑顔PTさん。装具を着けて支えられながらの歩行訓練。どうやら笑顔PTさんも以前、前十字靭帯損傷でこの病院に入院していたらしい。今は走れるまでに回復したと。とんでもなく頑張ったんだろうな。辛くても辛くても諦めなかったんだろうな。凄まじく前向きなったんだろうな。凄まじく自分を奮い立たせたんだろうな。何層にも努力を重ねてリハビリしたんだろうな。

僕は脳神経や細胞が損傷した。でも100%回復とはならなくても別のシナプスを繋げるんだ。何層にも繰り返す。覚えさせる。"そこ"に意識を向けて。"そこ"に集中して。99.99999..…%に近づける。時間が経つ程回復は難しくなる。"鉄は熱いうちに打て"と笑顔PTさんが例えていた。そうなんだよなぁと思う。歩行訓練の後半。後ろから補助もされてるけど極力一人の力で歩行をさせてもらった。その最後に笑顔PTさんが僕の上半身を持ち上げた。僕に自重を認識させようとしたのだ。『こんなに支えられてたんだ』ボソっと発した。それを笑顔PTさんは聞いていたかもしれない。

脳梗塞で検索

【足が動かない】と検索。
【治るか治らないか】で検索。
結果、治らない。
完治はしない。
でも希望は捨てない。
前向きに。
奇跡を信じて。

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