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ひとり旅行記

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世界約30ヶ国。ひとり旅の記録です。
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#イエローナイフ

【最終話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

【最終話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

「これがオーロラ?」

空に浮かぶ、グレーの靄のようなものがオーロラということに気がついたときは、なんとも言えない気持ちになった。ずっと憧れていた人が、実は自分の思ったような人ではなくて、みたいな。

けれど、太陽活動が活発な時に起こる『オーロラ爆発』であれば、期待しているようなモノが見られると知り、そのチャンスを窺っていたが、ついにその日が来た。

個人ツアーに申し込み、やり取りをする。夜の天気

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【第3話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

イエローナイフに着いてから一晩が明けた。目覚めた場所は、ホームレスの方々向けのシェルターだった。オーロラを求めて降り立ったこの街は、予想外の形で自分を迎えてくれた。

無事にAirbnbで予約した宿に着き、宿主のマルセラさんに出迎えてもらった。昨日の夜の出来事を話すと、「本当に大変だったね…」と慰めてくれた。それと同時に、ホームレスのシェルターで寝た旅人は初めてじゃないかな、と笑っていた。

マル

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【第1話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

「死ぬまでに一度は見たい景色」

主に北極圏で見られるこの自然現象、オーロラは多くの人々を虜にして離さない。かくいう自分もその中のひとりだった。

小さい頃から天体観測が好きだった。両親に買ってもらった天体図鑑のページを捲っては、空のどこかにあるキラキラした景色に胸を躍らせていた。

いわゆる都市郊外のベッドタウンで育った僕は、「満点の星空」とは縁がなく、小学3年生のときに買ってもらった天体望遠鏡

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【第2話】極光を求めて(カナダ・イエローナイフ)

「ホームレス用のシェルターがあるから、そこへ連れてくよ」

想像すらしていなかったその提案に驚きはしたものの、「No」と言えるはずもなく、極寒の地に放り出されるよりはマシだと、その提案を受け入れた。

車内には、深夜1時に似つかないブラックミュージックが流れていた。その音楽にゆらゆらと揺れる運転手は、ミラー越しに僕のことをチラッと見て尋ねてきた。

「どこから来たんだい?中国人かい?」

「違うよ

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