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日本のアニメは変 その1 愛国者学園物語 第201話 


 

ファニーの原稿は、

出版社に持ち込まれて間もない頃から、大きな話題になり、マスコミのネットワークは、その本の出現が不穏な出来事になると予想し、情報を交換しあった。そして、フランスのあるメディアが発売前にそれを入手し、ホライズンにも提供してくれた。

 そこで、ホライズンのパリ支局は総力を挙げて本の内容をまとめ、ジェフを頂点とするホライズンのトップたちに届けたというわけだ。それは、やがて美鈴にも知らされた。美鈴はファニーと仕事をしているからであり、彼女の様子を知る人間と上層部が判断したからだ。美鈴は、その本に、ルイーズ事件の仕事は三橋美鈴と組んで行った、としか書かれていないことを知り、安堵(あんど)した。もし、それに自分のことが詳しく書かれていたら、日本人至上主義者たちの抗議が殺到するかもしれないからだった。



 

 やがて、その本「私は日本に騙された(だまされた)」はフランスで発売された。本の広告には、「私を騙した国 日本の真実!」「日本のアニメはポルノと同じ」「日本は男尊女卑の国」

などと、人々を煽り立てるような言葉が使われていたことから、あっという間にその情報は世界を駆け巡った。


 数ヶ月後に、その日本語版を出版した

「まさか出版」

には、日本人至上主義者からの抗議の電話やメールが殺到した。右翼は街宣車の車列をその会社の前に送り込み、愛国者学園合唱部の子供たちが歌う愛国的な歌を大音量で流した。それら怒りの声はすぐに会社の機能をマヒさせるほど大きくなったが、社員たちは、会社の目玉商品である「週刊まさか」の編集を続け、この騒動を記事にすべく奮闘した。


 

 ファニーの本は、日本に深く関わっていたフランス人女性が見聞し体験した、日本社会の実態とその批判であった。

主に3つの章に分かれており、日本アニメ批判、日本社会への疑問、それに日本人至上主義の批判であった。彼女がアニメに注目したのは、彼女自身が日本のアニメ「AKIRA」を見て、日本に関心を抱いたこと。それに、それらを利用して日本語を学んだことが理由であると書いていた。だが、本当はアニメ好きで沢山見たから、アニメを批判の材料にしたのだった。


 以下は、その具体的な例である。


例えば、

「ストライクウィッチーズ」とそのシリーズだ。

このアニメは、女性の身体の一部分を異様に強調し

、「性的なもの」

として扱っているとしか思えない。そして、登場人物の描写からは、変質的で執拗なエネルギーを感じる。

 このアニメは、登場人物たちが架空の機械を足に装着して空を飛び、敵を倒すという内容だ。飛行する彼女たちの背後から、前方を見るカメラ構図がよく見られる。しかし、それも、彼女たちの足の付け根のあたり、はっきり言えば、股間のあたりに視聴者の視線が行くように、撮影しているとしか思えない。

 エンディングの動画では、主人公の顔を写し、その次は、スクール水着を着た彼女の股間をアップにしている。私には、このような構図の意図を理解出来ない。ティーンエージャーである主人公の、へそから下の部分をそのように写すということに、どんな意義があるのだろうか。


 このアニメは、登場人物を下から見上げるように撮影することが多い。女性たちのヒザか太ももを起点に、女性の下半身、へそのあたり、そして胸から顔へとカメラを移動させる(チルトする)。これはまるで、彼女たちの下半身と胸ばかりを強調しているようだ。

しかも、これはポルノではなく、一般向けのアニメなのだ。


 このアニメの登場人物たちは、みな若い女性で、主人公の宮藤は、設定によると14歳だ。だが、このアニメでは、彼女の入浴場面が描かれており、全裸で湯につかる様子に、その乳首も描かれていた。

 未成年の女性の裸を描写する映像作品は、それ自体が児童ポルノではないのか、とファニーは指摘した。


 「ストライクウィッチーズ」は未成年女性の股間に注目したアニメだ。そのような作品が平然と制作されて、公開されている日本。物語に多くの性的な要素が含まれているにもかかわらず、この作品は成人向け(未成年者視聴不可)ではない。このような、ひわいでポルノまがいの作品が、子供でも自由に視聴可能な社会。それが日本だとファニーは批判し、

「私は日本人の精神を疑う」

と書いた。


 ファニーは続けて、日本のアニメにおける、少女の全裸場面について書いた。

彼女は「ドラえもん」において、小学生であるしずかちゃんが風呂に入る場面が何度も描写されることを「変態的、かつ執拗な(しつような)こだわり」であると書き、作者を非難した。


 なぜなら、「ドラえもん」は数多くの日本人に読まれた国民文学と言っても良い存在だからだ。

 しかも、

日本のアニメの多くの作品には、未成年者を含む若い女性がシャワーを浴びて、その全裸姿をさらす場面が数多くあり、

そのようなヌードをエサに、視聴者の好奇心をあおっているとしか思えない、と指摘した。これらの場面は全部が若い女性であり、中高年の女性の全裸が描写されることはないようだ、とファニーは付け加えている。

 
 ファニーの疑問は

「宇宙戦艦ヤマト」シリーズ


にも及んだ。『ヤマト』の女性のコスチュームは、女性の体の曲線を強調するようなデザインだが、

これは、女性には性的な役割しか与えないという、日本社会の男女差別を目に見える形にしたものだと断言出来る。


もし、そのコスチュームがそうでない・差別的意図がないなら、男性もその体つきを強調した制服を着ているはずだ、とファニーは指摘した。ファニーは「ヤマト」が人気アニメであることを示し、このような女性=性的な存在であることを強調する考えは異常であり、女性を侮辱するものだ、と非難した。


「これらを平然と制作、販売している日本社会はまともなのだろうか。

(中略)私と共同作業者たちは、今回の仕事、つまり日本の文化批判を書く仕事ほど、嫌な仕事をしたことはなかった。ある仏人女性は、女性を侮辱するような日本アニメを見て、心に傷を負ったと告白したので、われわれは彼女に精神科を受診するよう勧め、彼女はそうした」

ファニーの怒りの告発は続く。




続く
これは小説です。題材にしたアニメは全て実在するものです。

「エンディングの動画では、主人公の顔を写し、その次は、スクール水着を着た彼女の股間をアップにしている。」
というのは、これです。


次回 第202話 ファニーの、日本アニメに対する批判は容赦なく続きます。日本人が当然のものとして受け止める、有名な作品の設定も、彼女から見れば、理解し難いものになるのです。
「日本のアニメは変 その2」
お楽しみに!

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