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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      36 なつかしく謡ふ酒屋の春造り  もつと降れかし二月の雪         一茶 名ウ挙句、歌仙の挙句、降れ降れ雪よと謡っていました。 …

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5か月前
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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      35  寝て草臥し花の古里 なつかしく謡ふ酒屋の春造り        樗堂 名ウ五句、樗堂こと、廉屋専助は酒蔵の店主でした。      …

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      34 したゝかな豆の数見るとし暮て  寝て草臥し花の古里           一茶 名ウ四句、花の定座をひとつ引き上げて。      〇 …

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      33  言ふほどのことをかしかりけり したゝかな豆の数見るとし暮て        一茶 名ウ三句、飽かず倦まず、小さいことからコツコツと…

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      32 高みより丸太を転す人だかり  言ふほどのことをかしかりけり       樗堂 名ウ三句、人のはなし、聞いてみましょうね。     …

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      31  だぶりだぶりと汐のみち来る 高みより丸太を転す人だかり        樗堂 名ウ一句、これより名残り裏入りです。      〇 …

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      30 窓のかた鼻の先迄日のさして  だぶりだぶりと汐のみち来る       一茶 名オ十二句、音響によって流体を刻み、荒潮を体感させる名…

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      29  むつむつ腹は立しまうたり 窓のかた鼻の先迄日のさして        一茶 名オ十一句、光の彫刻が野太い男の顔を刻む。      …

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      28 羽織着てしばし見送るむら尾花  むつむつ腹は立しまうたり        樗堂 初オ十句、過ぎ行くことに、なぜか腹立たしい、と。  …

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5か月前
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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      27  醍醐は今に蚊の多き月 羽織着てしばし見送るむら尾花       樗堂 名オ九句、羽織は正装、どこのどなたを見送ったものか。    …

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      26 雜汁に下部の膳の秋の風  醍醐は今に蚊の多き月        一茶 名オ八句、月の座を引き上げて、なんだかブンブンうるさいね、と。 …

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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      25  階子の陰にもの思ひ居る 雜汁に下部の膳の秋の風          一茶 名オ七句、倹しい昼餉、ことさら秋風が身に沁むのです。  …

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      24 きねぎぬの只どひやうしに明過て  階子の陰にもの思ひ居る         樗堂 名オ六句、駄目だよ、考えてるって、ふりしてみたとこ…

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      23  扇開ケばあらればらつく きねぎぬの只どひやうしに明過て     樗堂 名オ五句、あらら、もうどうしようもないねぇ。      〇 …

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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      22 こそこそと奉行の鑓に隠れたり  扇開ケばあらればらつく         一茶 名オ四句、あわてちゃあいけないって、わかってた筈なん…

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5か月前

謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      21  道さまたげの薪上る舟 こそこそと奉行の鎗に隠れたり        一茶 名オ三句、権威にたてつく人もいればおもねく人もいる。  …

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5か月前
謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

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     36

なつかしく謡ふ酒屋の春造り
 もつと降れかし二月の雪         一茶

名ウ挙句、歌仙の挙句、降れ降れ雪よと謡っていました。

     〇

もつと もつと、もつと。

降れかし ふれ・かし 「かし」は願望、句の切れ。

二月の きさらぎ・の

雪 ゆき

     〇

なつかしく うたふさかやの はるつくり

 もつとふれかし/ きさらぎのゆき

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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

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     35

 寝て草臥し花の古里
なつかしく謡ふ酒屋の春造り        樗堂

名ウ五句、樗堂こと、廉屋専助は酒蔵の店主でした。

     〇

なつかしく 懐かしく

謡ふ うたふ

酒屋の さかや・の

春造り はる・つくり

     〇

 ねて くたぶれし/ はなのふるさと

なつかしく うたふさかやの はるつくり

酒は寒い時期に仕込んでいました。伊予の杜

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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

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    日常平語
     34

したゝかな豆の数見るとし暮て
 寝て草臥し花の古里           一茶

名ウ四句、花の定座をひとつ引き上げて。

     〇

寝て ねて

草臥し くたぶれし、切れ。

花の はな・の

古里 ふるさと 「花の古里」で一語。

     〇

したゝかな まめのかずみる としのくれ

 ねて くたぶれし/ はなのふるさと

「豆の数みる」と根を詰めた

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     33

 言ふほどのことをかしかりけり
したゝかな豆の数見るとし暮て        一茶

名ウ三句、飽かず倦まず、小さいことからコツコツと。

     〇

したゝかな 強かな(とて、けっしてケチではありませんよ)

豆の まめ・の 豆粒、米粒、芥子の粒、細かいものの喩え。

数見る かず・みる、数を数える⇒歳を数える⇒文物の成り行きを見定める

とし暮れて 年くれ

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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

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    日常平語
     32

高みより丸太を転す人だかり
 言ふほどのことをかしかりけり       樗堂

名ウ三句、人のはなし、聞いてみましょうね。

     〇

言ふほどの いふ・ほど・の

こと 事、(云うだけのこと⇒あり)

をかしかりけり をかしかり・けり、「茶翁聯句集」は、形容詞「をかし」の連用形に、助動詞「けり。「樗堂俳諧集」は「おろかなりけり」。

     〇

たか

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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

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    日常平語
     31

 だぶりだぶりと汐のみち来る
高みより丸太を転す人だかり        樗堂

名ウ一句、これより名残り裏入りです。

     〇

高みより たかみ・より、小高いところから

丸太を まるた・を、(見るからに大木です)

転す こかす

人だかり ひとだかり、大勢の見物衆もいて。

     〇

 だふりだぶり と しおのみちくる

たかみより まるたをこ

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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

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     30

窓のかた鼻の先迄日のさして
 だぶりだぶりと汐のみち来る       一茶

名オ十二句、音響によって流体を刻み、荒潮を体感させる名残り表の〆句。

     〇

だぶりだぶりと 縦書きなら「だぶりく」と。「だぶり」は「茶翁聨句集」、「樗堂俳諧集」は「ざぶり」。

汐の しお・の 干満差が激しい潮流域

みち来る 満ち・くる 満ちて来る、上げ潮(歌仙〆句の祝言

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     29

 むつむつ腹は立しまうたり
窓のかた鼻の先迄日のさして        一茶

名オ十一句、光の彫刻が野太い男の顔を刻む。

     〇

窓の まど・の

かた 方、窓際に

鼻の はな・の

先迄 さきまで

日の ひ・の

さして 差して (むつかしいいことばは何ひとつありません)

     〇

  むつむつ はらはたちしまうたり

まどのかた はなの

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    日常平語
     28

羽織着てしばし見送るむら尾花
 むつむつ腹は立しまうたり        樗堂

初オ十句、過ぎ行くことに、なぜか腹立たしい、と。

     〇

むつむつ 縦書きなら「むつく」と。気分をあらわす擬態語。

腹は はら・は、腹の虫のおさまりが悪いのです。

立しまうたり たち・しまう・たり、立ってしまいまして、な。(年甲斐もなく面目ないことで、、、)

    

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     27

 醍醐は今に蚊の多き月
羽織着てしばし見送るむら尾花       樗堂

名オ九句、羽織は正装、どこのどなたを見送ったものか。

     〇

羽織着て はおり・きて、身成を糺して

しばし 暫し

見送る みおくる

むら尾花 群をばな、群生した芒の穂(をばなは人を招くというのに)

     〇

  だいごは いまに かのおおき つき

はおりきて しば

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     26

雜汁に下部の膳の秋の風
 醍醐は今に蚊の多き月        一茶

名オ八句、月の座を引き上げて、なんだかブンブンうるさいね、と。

     〇

醍醐は だいご・は、一茶全集に「京都東南郊」と。

今に いま・に、今に又、今でも

蚊の か・の、小奇麗ではないが、大阪からの文物が入り、人の交わりはわりに細やか。

多き おおき、なんだかねえ、いつまでも、温

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     25

 階子の陰にもの思ひ居る
雜汁に下部の膳の秋の風          一茶

名オ七句、倹しい昼餉、ことさら秋風が身に沁むのです。

     〇

雜汁に まぜじる・に、雑は残り物の意、魚のあらでダシをとった野菜の煮汁。

下部の しもべ・の、雑用に使われる者、士であれば雑役を務めた下級役人のこと

膳の ぜん・の 昼餉の食膳

秋の風 あき・の・かぜ 野菜多目

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     24

きねぎぬの只どひやうしに明過て
 階子の陰にもの思ひ居る         樗堂

名オ六句、駄目だよ、考えてるって、ふりしてみたところで。

     〇

階子の はしご・の、上下する階段。

陰に かげ・に、物陰に身を隠すこと。

もの思ひ もの・おもひ、物思いにふけっている様子。

居る いる、その状態でじってしている。(そんなことしていたって埒把は開かな

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     23

 扇開ケばあらればらつく
きねぎぬの只どひやうしに明過て     樗堂

名オ五句、あらら、もうどうしようもないねぇ。

     〇

きねぎぬの 後朝・の。本来ならば、恋のいいところなんだけど、、

只 ただ、まったくもう。

どひやうしに ど・拍子・に、本来は、太鼓の奏法からきたことば。

明過て あけ・すぎて、とっくにお日様があがってるよ、寝過ごしたな

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     22

こそこそと奉行の鑓に隠れたり
 扇開ケばあらればらつく         一茶

名オ四句、あわてちゃあいけないって、わかってた筈なんだけどなあ。

     〇

扇 あふぎ、涼を求める道具のおさまらず、作法なり儀礼に欠かすことのできなかった日本人の持ち物。

開ケば ひらけ・ば、開いたならば。(開けばあらわに、閉じればふせられる表徴として)

あられ 霰、前線

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     21

 道さまたげの薪上る舟
こそこそと奉行の鎗に隠れたり        一茶

名オ三句、権威にたてつく人もいればおもねく人もいる。

     〇

こそこそと 縦書きなら「こそくと」。

奉行の ぶぎょう・の、然るべき所轄のお役人の

鎗に やり・に、この時代、お役人の取り締まりと云えば、刀・槍・弓・鉄砲など。

隠れたり かくれ・たり、威に逆らい身を隠す人もあ

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