記事一覧
謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
33
言ふほどのことをかしかりけり
したゝかな豆の数見るとし暮て 一茶
名ウ三句、飽かず倦まず、小さいことからコツコツと。
〇
したゝかな 強かな(とて、けっしてケチではありませんよ)
豆の まめ・の 豆粒、米粒、芥子の粒、細かいものの喩え。
数見る かず・みる、数を数える⇒歳を数える⇒文物の成り行きを見定める
とし暮れて 年くれ
謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
29
むつむつ腹は立しまうたり
窓のかた鼻の先迄日のさして 一茶
名オ十一句、光の彫刻が野太い男の顔を刻む。
〇
窓の まど・の
かた 方、窓際に
鼻の はな・の
先迄 さきまで
日の ひ・の
さして 差して (むつかしいいことばは何ひとつありません)
〇
むつむつ はらはたちしまうたり
まどのかた はなの
謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
28
羽織着てしばし見送るむら尾花
むつむつ腹は立しまうたり 樗堂
初オ十句、過ぎ行くことに、なぜか腹立たしい、と。
〇
むつむつ 縦書きなら「むつく」と。気分をあらわす擬態語。
腹は はら・は、腹の虫のおさまりが悪いのです。
立しまうたり たち・しまう・たり、立ってしまいまして、な。(年甲斐もなく面目ないことで、、、)
謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
27
醍醐は今に蚊の多き月
羽織着てしばし見送るむら尾花 樗堂
名オ九句、羽織は正装、どこのどなたを見送ったものか。
〇
羽織着て はおり・きて、身成を糺して
しばし 暫し
見送る みおくる
むら尾花 群をばな、群生した芒の穂(をばなは人を招くというのに)
〇
だいごは いまに かのおおき つき
はおりきて しば
謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
25
階子の陰にもの思ひ居る
雜汁に下部の膳の秋の風 一茶
名オ七句、倹しい昼餉、ことさら秋風が身に沁むのです。
〇
雜汁に まぜじる・に、雑は残り物の意、魚のあらでダシをとった野菜の煮汁。
下部の しもべ・の、雑用に使われる者、士であれば雑役を務めた下級役人のこと
膳の ぜん・の 昼餉の食膳
秋の風 あき・の・かぜ 野菜多目
謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
24
きねぎぬの只どひやうしに明過て
階子の陰にもの思ひ居る 樗堂
名オ六句、駄目だよ、考えてるって、ふりしてみたところで。
〇
階子の はしご・の、上下する階段。
陰に かげ・に、物陰に身を隠すこと。
もの思ひ もの・おもひ、物思いにふけっている様子。
居る いる、その状態でじってしている。(そんなことしていたって埒把は開かな
謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
23
扇開ケばあらればらつく
きねぎぬの只どひやうしに明過て 樗堂
名オ五句、あらら、もうどうしようもないねぇ。
〇
きねぎぬの 後朝・の。本来ならば、恋のいいところなんだけど、、
只 ただ、まったくもう。
どひやうしに ど・拍子・に、本来は、太鼓の奏法からきたことば。
明過て あけ・すぎて、とっくにお日様があがってるよ、寝過ごしたな
謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻
日常平語
22
こそこそと奉行の鑓に隠れたり
扇開ケばあらればらつく 一茶
名オ四句、あわてちゃあいけないって、わかってた筈なんだけどなあ。
〇
扇 あふぎ、涼を求める道具のおさまらず、作法なり儀礼に欠かすことのできなかった日本人の持ち物。
開ケば ひらけ・ば、開いたならば。(開けばあらわに、閉じればふせられる表徴として)
あられ 霰、前線