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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語      36 なつかしく謡ふ酒屋の春造り  もつと降れかし二月の雪         一茶 名ウ挙句、歌仙の挙句、降れ降れ雪よと謡っていました。      〇 もつと もつと、もつと。 降れかし ふれ・かし 「かし」は願望、句の切れ。 二月の きさらぎ・の 雪 ゆき      〇 なつかしく うたふさかやの はるつくり  もつとふれかし/ きさらぎのゆき 雪は淡雪だったのでしょうか、降れよ降れ降れ、もつと降れと謡って歌仙を〆ていたのです

    • 謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

          日常平語      35  寝て草臥し花の古里 なつかしく謡ふ酒屋の春造り        樗堂 名ウ五句、樗堂こと、廉屋専助は酒蔵の店主でした。      〇 なつかしく 懐かしく 謡ふ うたふ 酒屋の さかや・の 春造り はる・つくり      〇  ねて くたぶれし/ はなのふるさと なつかしく うたふさかやの はるつくり 酒は寒い時期に仕込んでいました。伊予の杜氏は、伊方や越智郡の島々の人々が知られていたようですが、さて、松山の廉屋はどこの

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            日常平語      34 したゝかな豆の数見るとし暮て  寝て草臥し花の古里           一茶 名ウ四句、花の定座をひとつ引き上げて。      〇 寝て ねて 草臥し くたぶれし、切れ。 花の はな・の 古里 ふるさと 「花の古里」で一語。      〇 したゝかな まめのかずみる としのくれ  ねて くたぶれし/ はなのふるさと 「豆の数みる」と根を詰めた様子の前句に、すかさず「寝て草臥し」とやや放蕩の振る舞いの句を添え、さらに追い打

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              日常平語      33  言ふほどのことをかしかりけり したゝかな豆の数見るとし暮て        一茶 名ウ三句、飽かず倦まず、小さいことからコツコツと。      〇 したゝかな 強かな(とて、けっしてケチではありませんよ) 豆の まめ・の 豆粒、米粒、芥子の粒、細かいものの喩え。 数見る かず・みる、数を数える⇒歳を数える⇒文物の成り行きを見定める とし暮れて 年くれて いよいよ年の瀬となりました(暮れはお店の決算期)      〇   いふ

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          謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

              日常平語      32 高みより丸太を転す人だかり  言ふほどのことをかしかりけり       樗堂 名ウ三句、人のはなし、聞いてみましょうね。      〇 言ふほどの いふ・ほど・の こと 事、(云うだけのこと⇒あり) をかしかりけり をかしかり・けり、「茶翁聯句集」は、形容詞「をかし」の連用形に、助動詞「けり。「樗堂俳諧集」は「おろかなりけり」。      〇 たかみより まるたをこかす ひとだかり  いふほどのこと をかしかりけり よくよ

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              日常平語      31  だぶりだぶりと汐のみち来る 高みより丸太を転す人だかり        樗堂 名ウ一句、これより名残り裏入りです。      〇 高みより たかみ・より、小高いところから 丸太を まるた・を、(見るからに大木です) 転す こかす 人だかり ひとだかり、大勢の見物衆もいて。      〇  だふりだぶり と しおのみちくる たかみより まるたをこかす ひとだかり 寄せ来る波の高鳴りに呼応して、小高い丘の上からこかす丸太とく

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              日常平語      30 窓のかた鼻の先迄日のさして  だぶりだぶりと汐のみち来る       一茶 名オ十二句、音響によって流体を刻み、荒潮を体感させる名残り表の〆句。      〇 だぶりだぶりと 縦書きなら「だぶりく」と。「だぶり」は「茶翁聨句集」、「樗堂俳諧集」は「ざぶり」。 汐の しお・の 干満差が激しい潮流域 みち来る 満ち・くる 満ちて来る、上げ潮(歌仙〆句の祝言として)      〇 まどのかた はなのさきまで ひのさして  だぶりだ

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              日常平語      29  むつむつ腹は立しまうたり 窓のかた鼻の先迄日のさして        一茶 名オ十一句、光の彫刻が野太い男の顔を刻む。      〇 窓の まど・の かた 方、窓際に 鼻の はな・の 先迄 さきまで 日の ひ・の さして 差して (むつかしいいことばは何ひとつありません)      〇   むつむつ はらはたちしまうたり まどのかた はなのさきまで ひのさして 気分のようなものには一切ふれず、付け句は、ただ陽に照らさ

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              日常平語      28 羽織着てしばし見送るむら尾花  むつむつ腹は立しまうたり        樗堂 初オ十句、過ぎ行くことに、なぜか腹立たしい、と。      〇 むつむつ 縦書きなら「むつく」と。気分をあらわす擬態語。 腹は はら・は、腹の虫のおさまりが悪いのです。 立しまうたり たち・しまう・たり、立ってしまいまして、な。(年甲斐もなく面目ないことで、、、)      〇 はおりきて しばし みおくる むらをばな   むつむつ と はらはたち

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              日常平語      27  醍醐は今に蚊の多き月 羽織着てしばし見送るむら尾花       樗堂 名オ九句、羽織は正装、どこのどなたを見送ったものか。      〇 羽織着て はおり・きて、身成を糺して しばし 暫し 見送る みおくる むら尾花 群をばな、群生した芒の穂(をばなは人を招くというのに)      〇   だいごは いまに かのおおき つき はおりきて しばし みおくる むらをばな 月に尾花は常套とは云え、「羽織着て」の上五が曲者。「

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              日常平語      26 雜汁に下部の膳の秋の風  醍醐は今に蚊の多き月        一茶 名オ八句、月の座を引き上げて、なんだかブンブンうるさいね、と。      〇 醍醐は だいご・は、一茶全集に「京都東南郊」と。 今に いま・に、今に又、今でも 蚊の か・の、小奇麗ではないが、大阪からの文物が入り、人の交わりはわりに細やか。 多き おおき、なんだかねえ、いつまでも、温かいのかしら 月 つき、月もでてるよ。      〇 まぜじるに しもべの

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              日常平語      25  階子の陰にもの思ひ居る 雜汁に下部の膳の秋の風          一茶 名オ七句、倹しい昼餉、ことさら秋風が身に沁むのです。      〇 雜汁に まぜじる・に、雑は残り物の意、魚のあらでダシをとった野菜の煮汁。 下部の しもべ・の、雑用に使われる者、士であれば雑役を務めた下級役人のこと 膳の ぜん・の 昼餉の食膳 秋の風 あき・の・かぜ 野菜多目の汁にまずいとも云えず、ただコキコキと噛みついていたのでした。      〇

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              日常平語      24 きねぎぬの只どひやうしに明過て  階子の陰にもの思ひ居る         樗堂 名オ六句、駄目だよ、考えてるって、ふりしてみたところで。      〇 階子の はしご・の、上下する階段。 陰に かげ・に、物陰に身を隠すこと。 もの思ひ もの・おもひ、物思いにふけっている様子。 居る いる、その状態でじってしている。(そんなことしていたって埒把は開かないよ)      〇 きぬぎぬの ただ どひやうしに あけすぎて    は

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              日常平語      23  扇開ケばあらればらつく きねぎぬの只どひやうしに明過て     樗堂 名オ五句、あらら、もうどうしようもないねぇ。      〇 きねぎぬの 後朝・の。本来ならば、恋のいいところなんだけど、、 只 ただ、まったくもう。 どひやうしに ど・拍子・に、本来は、太鼓の奏法からきたことば。 明過て あけ・すぎて、とっくにお日様があがってるよ、寝過ごしたなんて言い訳はきかないよ。      〇  あふぎ あければ あられ ばらつく

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              日常平語      22 こそこそと奉行の鑓に隠れたり  扇開ケばあらればらつく         一茶 名オ四句、あわてちゃあいけないって、わかってた筈なんだけどなあ。      〇 扇 あふぎ、涼を求める道具のおさまらず、作法なり儀礼に欠かすことのできなかった日本人の持ち物。 開ケば ひらけ・ば、開いたならば。(開けばあらわに、閉じればふせられる表徴として) あられ 霰、前線に伴って気象が急激に変化したのでしょう。 ばらつく バラバラと、あれあれ、あわ

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              日常平語      21  道さまたげの薪上る舟 こそこそと奉行の鎗に隠れたり        一茶 名オ三句、権威にたてつく人もいればおもねく人もいる。      〇 こそこそと 縦書きなら「こそくと」。 奉行の ぶぎょう・の、然るべき所轄のお役人の 鎗に やり・に、この時代、お役人の取り締まりと云えば、刀・槍・弓・鉄砲など。 隠れたり かくれ・たり、威に逆らい身を隠す人もあれば、虎の威を借りて身を隠す人もあり。      〇  みちさまたげの まき

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