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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語
     36

なつかしく謡ふ酒屋の春造り
 もつと降れかし二月の雪         一茶

名ウ挙句、歌仙の挙句、降れ降れ雪よと謡っていました。

     〇

もつと もつと、もつと。

降れかし ふれ・かし 「かし」は願望、句の切れ。

二月の きさらぎ・の

雪 ゆき

     〇

なつかしく うたふさかやの はるつくり

 もつとふれかし/ きさらぎのゆき

雪は淡雪だったのでしょうか、降れよ降れ降れ、もつと降れと謡って歌仙を〆ていたのです。

     〇

能「雪」

 シテ あら面白の 雪の中やな あら面白の 雪の中やな 暁梁王の苑に入れば 雪群山に満てり 夜廋公が楼に登れば 月千里に明らかなりも 真如の月出でて 妄執の雪消えなん法の 慧日の光を頼むなり
 僧 不思議やなこれなる雪の中よりも 女性一人現はれ給ふは いかなる人ににてましますぞ
 シテ 誰とはいかで白雪の ただおのづから現れたり
 僧 我とは知らぬ白雪とは さてはおことは雪の精か
 シテ いやさればこそ我が姿 知らぬ迷いを晴らし給へ
 僧 さては不思議や雪の女に 言葉を交はすも唯これ法の 功力を疑い給はずして とくとく成道なり給へ
 シテ あら ありがたの御事や 妙なる一乗妙典を 疑ふ心はあらかねの
 謡 土に落ち身は消えて 古事のみを思ひ草 仏の縁を結べかし

金剛流「雪」抄

      〇

烟しての巻   名ウ一句~挙句

   雜 高みより丸太を転す人だかり      堂
   雑  言ふほどのことをかしかりけり    ゝ
   冬 したゝかな豆の数見るとし暮て     茶
 花 春  寝て草臥し花の古里         ゝ
   春 なつかしく謡ふ酒屋の春造り      堂
   春  もつと降れかし二月の雪       ゝ

     丙辰年杪会

寛政八年十二月の年末に張行された、樗堂一茶両吟「烟して」の歌仙、これにてめでたく満尾いたしました。

長らくおつきあいありがとうございました。 いずれまた、どこかでお会いいたしましょう。

23.12.2023.Masafumi.

能「雪」

 明けなば恥かし 暇申して 帰る山路の梢にかかるや 雪の花 帰る山路の梢にかかるや 雪の花は また消え 消えとぞ なりにける 

了。(いずれそのうち、一茶の松山逗留を終える日も、このあたりかと)

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