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謡ふ酒屋樗堂一茶/烟しての巻

    日常平語
     28

羽織着てしばし見送るむら尾花
 むつむつ腹は立しまうたり        樗堂

初オ十句、過ぎ行くことに、なぜか腹立たしい、と。

     〇

むつむつ 縦書きなら「むつく」と。気分をあらわす擬態語。

腹は はら・は、腹の虫のおさまりが悪いのです。

立しまうたり たち・しまう・たり、立ってしまいまして、な。(年甲斐もなく面目ないことで、、、)

     〇

はおりきて しばし みおくる むらをばな

  むつむつ と はらはたちしもうたり

事を成し、人をおくり、それもこれも、感謝すべき充実した日々の筈なのですが、それでいて、なぜか腹の底の方で渦巻いている<苛立ち>、あるいは<怒り>のようなものがあったとでも云うのでしょうか。

     〇

どことなく、不機嫌、まるで近代の気分を先取りしているかのように。

句に

どの石垣も不機嫌に雪解風      龍太
春愁と不機嫌とゐる二人かな    ゆう子
目はきげん口は不機嫌冬ごもり   万太郎

15.12.2023.Masafumi

余外ながら、浅草噺を、、、、

〇 渥美清/早坂暁

北条の早坂暁さん。東大医学部に入学の筈が、なぜか医者にはならず、なんだかんだといろいろあった末に、逃げ込んだ先が浅草だったというのです。

浅草で知り合った二人は、人に云えないことも語り合っていたようで、広島の原爆で妹さんを亡くしたことを、早坂さんは渥美さんに告げていました。

これは、渥美清没後、発見された遺書のような手帳の書き込みです。

伊豆の式根島、
ロケ先菊水旅館は7年前に
行ったところへ
仕事じゃなくて、ゆっくりしたいな
家族とぎょうさんにも……
声かけて一緒に行こう。
正子健康が一番だぞ
健太郎 幸恵も頑張れ、

文中、「ぎょうさん」とあるのは、早坂暁の「暁」のことでした。

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