人を大切にする経営 【 NIKKEI・人財育成 】
働くママ気持ち知って 適切な配慮指南(藤岡佳子さん)
有料記事なので、概要を説明してから、私見を書きます。
♦ 記事の概要
■ ポイント
① 働き方改革が進んでいるが、「長時間労働是正と休みの取り方」という制度面の改革が目立つ
② 一方、働くママへのサポートはまだまだ不足気味ではないか?
■ 事例抜粋
育児をしながらフルタイム勤務している女性から「会社を辞めたくなった」という体験も聞いた。理由を聞くと、午後5時の終業の5分前、男性上司に企画書を提出したところ、その上司は「ありがとう」と一言。時計をちらっと見て次の言葉が「もう帰って大丈夫だよ」だったからだ。
どこの職場でもよくある光景かもしれない。でも女性は期待した反応がなかったことにがっかりしたという。男性から見れば何がいけなかったのかはさっぱりわからないだろう。「社会と関わりたい」「頑張った自分を認めてほしい」と思っていたのに、結局は「とにかく家庭を優先しなさい」といわれたと解釈して女性は「私の居場所がない」と思い込んでしまったケースだと指摘する。
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そんな現状において、「働く女性はどう考え、感じているか」を男性管理職らにコーチングし、円滑な職場運営をサポートする取り組みを始めたNOERU代表の藤岡佳子さんを紹介する記事でした。
♦ 働く女性をサポートするには「制度」なのか「風土」なのか
女性スタッフの「会社を辞めたくなった」事例の部分。皆さんはどう読みましたか?
「いや、頑張っているのは分かるけれど、現実、お子さんの送り迎えとかあるだろうから・・。心配してあげた、思いやりでしょ・・」
「働く以上、みんな頑張っているのは当たり前だし、立派に社会貢献できている。そんな言葉1つで悩まれても・・」
そんな感想の人もいると思います。
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私の会社も、特別な勤務制度を用いているスタッフがいます。税理士受験を控えている社員です。現在試験1週間前。絶賛1週間以上の「試験前休暇中」です。
受験勉強を応援する目的の制度で、我々経営者側も、受験する社員が資格を取得し、よりチームとして専門的な力を発揮したいと思っています。
その中で最も注意していること。
それが「過度に受験勉強へ配慮しすぎないこと」です。
私も社会人をしながら、受験勉強をし、今に至ります。当時、嫌だったことが、冒頭の記事にある「もう帰っていいよ」でした。
仕事の時間は、100%仕事に集中しています。受験も人生の一大イベントですが、それは「将来の自分への時間投資」であり、今、目の前にある「現場の仕事」とは別物。
「もう帰っていいよ」と配慮されたことが、
「君が今一番大事なことは勉強だから。仕事はどうにでもなる。別に君がいなくても回るから」
これはポジティブに受け入れたら、「ありがたい」と思えるかもしれません。ただ、受験で割と追い詰められていた私には、ネガティブシンキングに陥り、結果、辛かったです。
だから、私は社員に対し、仕事の時間は手を抜きません。大事な戦力。
「もう帰っていいよ」も言いません。残業しそうな勢いであれば、「受験」の話などで特別扱いせず、一社員として「どうしたの?」「明日でも間に合うから、切りのいいとこまででいこう」と声をかけます。
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「受験」が、「育児」や「介護」となれば、もっと時間的な制約があるでしょう。精神的な負担もあるだろうし、子供の急病など本人がコントロールできない場面も多々あります。そんな時、
「大丈夫!会社のことは気にしないで!子供最優先だよ!」
こういった言葉も、すごく大切だと思います。
でも、やはり日常的には「あなたが必要」という接し方。
そんな臨機応変な態度、「難しいよ」と思うかもしれません。でも、会社の成長も基は何か、といえば、人を大切にし、人を育てることだと思います。
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♦ 人を大切にする経営学講義(推薦図書)
と、いう事で、今回も最後に、記事に関連する推薦図書を紹介します。
人を大切にする経営学講義 , 坂本光司 , PHP研究所(2017年)
日本で一番大切にしたい会社、でお馴染みの坂本先生です。
本書の中から、2点、今回の記事に関連するテーマを紹介します。(本書は「講義」とあるように具体性のある内容が記載されていて、勉強になりますが、今回は概念的な部分のみ紹介します。)
■ 企業とはどのような「業」か?
企業とは「5つの業から成る生命体」
① 環境適応業(時代、環境の変化に適応しながら生きるもの)
② 市場創造業(新たな価値を創造・提案し続けるもの)
③ 幸せ創造・提案業(ヒト・モノ、社会に幸せを創造・提案するもの)
④ 人材育成業(企業の成長は最大資源である「人」、社員の成長の総和)
⑤ 社会貢献業(雇用責任、納税責任、継続責任、利他責任、社会的弱者支援責任など)
企業は、業績だけでなく、また取り巻く人だけでなく、広く社会に貢献すべきものです。その「企業の成長」を支えるものは、経営者のリーダーシップでも、ニッチな産業を見つけ出すことだけでもなく、「人の成長」であると述べています。
■ 人を大切にするとか何か?
人間の幸せは、「人に褒められること」「人に必要とされること」「人に喜ばれること」「人に愛されること」の4つ。つまり、人間の幸せは、働くことをおいて、他で得ることが不可能なのに、である。(66頁)
求められる経営者像として
社員のモチベーションを高めるには、人をとことん大切にする正しい経営を実践することが重要である。もっとはっきり言えば、社員やその家族をはじめとする企業に関係する方々が「自分たちは大切にされている」と実感する経営を実践し続けることである。(82頁)
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当たり前のことかもしれません。
でも、心で分かっていても、そこまで大切にできているか。また、先に述べたように「過剰な配慮」か否かの判断は、日々のコミュニケーションこそ見極めのポイントだと思います。
「一人一人の人生を考慮していたら仕事にならない」という意識ではなく、「一人一人の人生に向き合うことが、結果、社員の成長につながり、自発的な風土を築く」という意識。
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記事は、特に苦しんでいる「働くママ」にスポットをあてていましたが、どんな社員にも起こり得ることだな、と思います。
「現在の戦力」とも「これからの戦力」とも思われていない。実際は違っても、そう感じ取らせてしまう「空気感」
働き方改革の「制度改革」だけでなく、まずは、基本は、そんな心配をさせない「空気づくり(雰囲気づくり)」かな、と記事から感じました。
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