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けがれた者達の歌 春雷

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春の季節に書いた 春の詩と物語の在り処
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#花弁

花の顔(はなのかんばせ)

花の顔(はなのかんばせ)

互いの持つ
花の花弁を混ぜ混んだら

強い花の
薫りが優るのか

苦い毒が
際立つのか

残花

残花

花の残香に

誘われる様に
指先で触れる

花の淡い色に
見入ってしまうんだ

春風が
残り少ない
花弁を攫って行き

僕の周りに

花弁が舞う

薄闇に

薄闇に

薄闇に

鮮やかに
浮かび上がる桜

穏やかな
夜風に乗って花弁が
川に落ちて
流れて行くんだ

一つ

また 一つ と
流れては
見えなくなる

灯りの届かない
枝先の桜は
夜闇に隠れ眠ったのか

静かな
桜の木々の寝息が
聞こえる
気がするんだ

花の扉

花の扉

花の扉は

僕の周りに

花弁が舞い落ちて

静かに積もるんだ

僕を包む

甘い花香が

僕を眠らせるんだ

灰黒の花(かいこくのはな)

灰黒の花(かいこくのはな)

私の言葉が
歌が聞こえるか?

お前達の足元の
影の中に
私が蒔いた
黒い花が見えないか?

其の花は何れ
影を埋め尽くす程に
咲いて魅せる

風に舞う様に
灰黒の花弁が散る時

お前達の影も散り…

消え逝くのだ

恋文の日

恋文の日

手紙にはいつも

花弁を一枚入れる様に

僕の気持ちの欠片を同封するんだ

君に今どれだけ届いているか

僕には分からないけれど

花弁が数えきれない程に沢山あるって

君に思わせたいんだ

花弁に足跡

花弁に足跡

潮風が薫る

桜の名所で

舞い落ちた花弁が

通りを染め

花弁を避ける事が出来ずにいて

通りに足跡が

付いてしまうのだ

願い花月香

願い花月香

夜空が淡い色に染まり

月の輪郭も

薄雲に隠れている

風が草原を撫でる様に

通り過ぎてく

春風に乗って薫るのは

草花の匂い

眼の前に有る桜が

風に揺らされ

月光に照らされた花弁が

僕の目の前で舞い落ちて来るんだ

秘かな思いを

花弁に願い

届けば良いのにと…

春の嵐

春の嵐

空を見上げ寒さの中
舞い落ちる花弁も無く
花も薫らない

それが
これからの日常になるのかな… と

手元に有った花弁を
太陽に透かして見ようと
上を見上げたら

視界を覆う程の
花弁が降って来たのだ

同時に吹き荒れる風が
花弁を舞い上げる

此の身の内に

春の嵐が吹き荒れている

気配

気配

水の中を漂う流れの様に

風に纏われる様に

花弁が舞い落ちる様に

君の気配が心にあるのだ

花と炎

花と炎

着火点が低い訳では無い
花薫る風でなければ
火は炎には成らずにいて

花薫る風に
常に赤い炎を揺らしてしまう

身の内に有る炎は
花薫る風に
魅せられている

我が身を突き抜ける様な
強い花薫る風が吹けば

黒い炎や青い炎となって

散る花弁さえも残さず

花を焼き尽してみせるのだ

風に舞う花弁

風に舞う花弁

強い風に飛ばされ
海に舞い落ち
魚達にさえも春が届く

潮に流れ行く
春の花の花弁

山桜と闇の者 夜

山桜と闇の者 夜

夜が近づくと
山桜の花弁が
風に乗り
闇の者の元に
山桜の花弁が優しく舞う

山桜の誘いだ

言葉が交わせる訳ではない

ただ、山桜に背を預け
山桜の香りに
浸るだけだ

風と山桜

風と山桜

道沿いに有る
淡いピンク色の花と
赤い葉の山桜

少しの風が吹いて
数枚の花弁を散らし始める