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展覧会レポ:京都の瑞雲庵でエコとアートが融合「遍在、不死、メタモルフォーゼ」

【約2,000文字、写真16枚】
 「偏在、不死、メタモルフォーゼ」は注目のアートイベントだ。日仏6名のアーティストがエコロジーをテーマに、どんな世界をみせてくれるのか。不死? メタモルフォーゼ??? 

■information
「遍在、不死、メタモルフォーゼ」大久保美紀キュレーション
会期:2024.4.27 - 5.26
会場:瑞雲庵
住所:京都府京都市北区上賀茂南大路町62-1
開館時間:10:00〜18:00 
開館日:金・土・日曜のみ開館(月〜木曜休館)
料金:無料
所要時間:約30分
混み具合:ガラガラ
写真撮影:全て可能
webサイト:https://www.n-foundation.or.jp/

会場の入口「おじゃましまーす」

作品を踏みつける!?

 騒がしい京都市内を自転車で20分もこぐと、空気が変わる。会場は京都市の北部、上賀茂にある瑞雲庵(ずいうんあん)だ。民家と蔵で構成されたイベントスペースらしい。

古市牧子《Le dieu et la bête》(2023)コットン生地にインク染色 450× 1000cm

 いきなり、このお出迎え!
 この作品、踏んづけてOKらしい。ホントにいいんですか、と会場の方に直接確認したから大丈夫。
「おじゃまします(フミフミ フミフミ♪)」
 模様が滲み、数歩で全く違う表情をしてくる。即興演奏のような作品を足で楽しむ。作者の古市氏は「思い通りにならなさ」との対話を追究してきた²という。

石橋友也《金魚解放運動》(2012-2017,2024改作)HDVideo,(5:33)

 金魚を飼うと世話が大変だし、ビデオだとエコだよってことかな。ふーん、と解説をよむ。全然ちがうっ!

「~本作は、金魚を逆方向に品種改良し直すことによって、祖先のフナのかちちへ戻す試みであり、5年以上の歳月を費やして~」²

 金魚はそもそも野生のフナだから、戻す…もどす? 開放する??
 金魚は、愛玩を目的に1700年もの間、品種改良され、デザインされた生命だそうだ。現代の自然環境の中では生きられないんだとか。

床の間をみて和める??

 ふー、とんでもないものを見せてもらったから、ちょっと休憩だ。立派な床の間ですなあ。
 お軸は仏像ですか? ん? なんか、フィギュアみたい? 後ろの絵、色が薄くない?

入江早耶《摩利支天ダスト》(2024)掛軸•消しゴムのカス•樹脂 掛軸 850×440×41mm

 摩利支天なんだー、へー。摩利支天ダスト?
 「消しゴムのカスによる精巧な彫刻作品~」²
 消しカスで作ったの??!!
 「消しゴムでイメージを消して、でた消しカスを練り上げて彫像する~」
 ああー、だから後ろの絵が薄いのかぁ…って、何やってんっすかあぁぁぁ???

入江早耶《木土偶地蔵ダスト》(2023-2024)紙袋•紙箱•消しゴムのカス•樹脂粘土•木粉粘土

 こっちも消しカス入りかいっ!
 ん? 解説を読むと、消しカスだけでなく、デパートの紙袋やお菓子の紙箱なども素材にしているらしい。
 「消費行動がまさに精神活動としての側面を担っている」として、祈りの原始的な造形として土偶などのイメージに立ち戻ったらしい²。

屋根裏部屋

 次の展示室へとつづく階段をのぼり、暗幕の隙間から入ってみると…

クワクボリョウタ《LOST#20》(2024)日用品•鉄道模型•LED 7780×3859mm

 なんっすか? 鉄道模型? ピタゴラスイッチ的な?? 

 おおぉ、鉄塔だー。屋根裏から車窓を楽しませてもらうとは!

 なんだか懐かしいなあ。こういうタンク、見たことあった気がする。ガス屋さんかな。
 えっと、運行中、わたし独り占めですけど、いいのかな? 贅沢だなー。

 最後まで、一人で作品を体験させて頂く。この感覚は、この瞬間だけのものだろう。光と記憶に包まれていく。

蔵で育つもの

 奥の蔵にも展示があった。

フロリアン・ガデン《Visionslyriques》(2021-) 水彩紙に墨•アクリル絵具•ガッシュ 158×228mm

 よく見ると、この世界、どこか奇妙だ。

 受け入れてしまうと、なんだか愉快な心地がする。他者と共存するとは、どういうことなんだろう。

 母屋に戻る途中、庭のつくばいも作品に見えてくる。

作品は終わらない

 母屋の廊下から、掘りごたつがみえた。植物の鉢植えが並んでいる。
 なんて美しいんだろう。生きている姿に、記憶の力をみせてくれる²。

ジャン=ルイ・ボワシエ《Crassulaubiquiste》(1985-)クラッスラ・オバタの12の鉢植え

 地球環境に配慮するとは、何をすることだろう。経済思想家・斎藤幸平氏は「SDGsは『大衆のアヘン』である!」と提言していた。企業が「SDGs」を宣伝文句とした結果、ゴミの量は増えたという。もっと根本的な何かを共有する必要があるのだろうか。
   メタモルフォーゼが可能にするのは「共感」だという。地球のあらゆる生はメタモルフォーゼでつながれる。だから偏在であり、不死なのだ、と。²

「わたしたち(あらゆる生きもの)は 同じ一つの生であり続けている」²

(エマヌエーレ・コッチャ)



 帰り際、どこにでも生えそう草に、なんだか感動しちゃって、撮らせてもらった。



ソース;
¹:フライヤー「遍在、不死、メタモルフォーゼ」キュレータ大久保美紀、瑞雲庵
²:アーティストステートメント「キュレーターと作家による展覧会と作品についての言葉」遍在、不死、メタモルフォーゼ 2024.4.27 - 5.26 瑞雲庵


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