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営業秘密管理実態調査2020

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2020年3月に公開した「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」の結果を紹介しています。
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企業の営業秘密の管理実態(9/9)

企業の営業秘密の管理実態(9/9)

連載の最終回は秘密情報の区分管理のさらなる普及に向けた現状と課題について説明します。

(1)国内企業における営業秘密の区分管理に関する現状と課題

今回の調査では、他の情報と共通で運用している企業が全体の約4割、大規模企業でも約3割が依然、営業秘密の区分管理をしていない、ことが明らかになりました(図2.2 35)。

今回調査の回答率は13.6%ですが、情報管理への関心が高い企業の回答が多かった

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企業の営業秘密の管理実態(8/9)

企業の営業秘密の管理実態(8/9)

前回に続き、テレワーク等に対応した営業秘密に関する規定や手続きの整備に必要な「被害発生防止」「法的救済」の2点について考慮すべき点を冒頭に紹介し、その後、「営業秘密該当性を満たすための秘密管理措置の考え方」について説明します。

3)業務上の過失や誤操作への対応
 企業において漏えいが生じると損害が大きい営業秘密を電子メールやFAX等で送信する場合、誤送付防止の観点から宛先が正しいかどうかを複数名

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企業の営業秘密の管理実態(7/9)

企業の営業秘密の管理実態(7/9)

これまでの連載をふまえ、今後企業が取り組むべき適切な営業秘密管理の考え方について、複数の切り口で解説します。

(1)ニューノーマル下で営業秘密を適切に管理・活用するために考慮すべきこと

①「見切り発車」状態からの脱却
テレワーク等を用いた新たな働き方は、老々介護の増大など社会の変化や大規模災害におけるサプライチェーンの障害への対処などのため、今後常態化していくことが有識者インタビューで指摘され

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企業の営業秘密の管理実態(6/9)

企業の営業秘密の管理実態(6/9)

今回は、企業の実務者が営業秘密管理について具体的にどのような問題意識を持っているのか等、課題と現状について調査結果から紹介します。

(1) 企業の営業秘密情報の管理に対する現状認識
① 脅威を感じ、対策が必要と考えていること
 最多だったのは自社における「体制の不備や担当者のスキル不足」で41.3%(図 2.2 32)でした。

更に、情報管理に関する成熟度※別に比較分析しました(図 2.2 1

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企業の営業秘密の管理実態(5/9)

企業の営業秘密の管理実態(5/9)

今回は、昨年の新型コロナウイルスの蔓延及びそれに伴う、2020年4月の1回目の緊急事態宣言等が企業における営業秘密管理にどのような影響を及ぼしたか、その結果を見ていきたいと思います。

(1)ウィズコロナ、ポストコロナで課題や対策は変化しているか?

仮説① 国内企業のうち2~3割程度がコロナ禍で情報管理のルール見直しを実施した。

結果① 回答企業の2割がコロナ禍をきっかけとしてテレワーク等にお

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企業の営業秘密の管理実態(4/9)

企業の営業秘密の管理実態(4/9)

今回は2018年の改正不正競争防止法施行の影響について仮説検証の結果などを紹介します。

■ 不正競争防止法改正の効果はあったのか?

仮説① 一部の企業が「限定提供データ※」として保護を前提とする契約ひな形等を整備した(※他者との共有を前提に一定の条件下で利用可能なデータのこと)。
結果① 少数ながら「限定提供データ」に対応した規程を整備する企業が現れていた。限定提供データに対応した管理を行って

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企業の営業秘密の管理実態(3/9)

企業の営業秘密の管理実態(3/9)

前回調査との比較を見てきた3回目は中小企業において漏えいした営業秘密の種類や企業の管理実態などを紹介します。

■ 中小企業における情報管理対策は進展したか?(第2回からの続き)
仮説④ 漏えいした情報の種類は引き続き顧客情報・個人情報が最多である。

結果④ 仮説の通り顧客情報の漏えい事例が最多となった。なおアンケートの回答方法が前回と一部異なっており単純比較はできないが、漏えいした情報全体に占

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企業の営業秘密の管理実態(2/9)

企業の営業秘密の管理実態(2/9)

前回調査と2020年調査を比較しその結果を解説している第2回は、中小企業における営業秘密漏えいの発生状況や漏洩ルートについてです。2020年調査で最多の漏洩ルートは何だったでしょうか?是非本文をご覧ください。

■ 中小企業における情報管理対策は進展したか?
仮説① 情報漏えいの生じた企業の比率は2016年度調査と比べてやや増加。

結果① 情報漏えいインシデントが発生した(可能性を含む)と回答し

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企業の営業秘密の管理実態(1/9)

企業の営業秘密の管理実態(1/9)

先週、積水化学の元社員がSNSを通じて知り合った相手に勤務先の機密情報を漏えいした事件の初公判についての報道がありました。IPAでは企業の営業秘密管理に関する調査を4年ぶりに実施し、2021年3月に公開しました。この連載ではその報告書の内容を紹介します。<1>では事前に立てた仮説に照らし、前回(2016年)調査と比較し、変化を考察します。(※営業秘密:秘密管理性、有用性、非公知性の用件を全て満たし

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