企業の営業秘密の管理実態(3/9)
前回調査との比較を見てきた3回目は中小企業において漏えいした営業秘密の種類や企業の管理実態などを紹介します。
■ 中小企業における情報管理対策は進展したか?(第2回からの続き)
仮説④ 漏えいした情報の種類は引き続き顧客情報・個人情報が最多である。
結果④ 仮説の通り顧客情報の漏えい事例が最多となった。なおアンケートの回答方法が前回と一部異なっており単純比較はできないが、漏えいした情報全体に占める顧客情報の比率は減少している(図 2.2 14)。
仮説⑤ 営業秘密のレベル別管理を行っている企業は増えていない。
結果⑤ 2016年度調査と比較して営業秘密のレベル別管理を行っている企業は23.1%から24.0%へと若干増加しており、おおむね横ばい傾向にあるといえる(図 2.2 34)。
仮説⑥ 営業秘密管理に関して企業内でルールが適切に運用されているとは限らない。
結果⑥ 「厳密な運用の徹底」「ある程度厳密に運用」以外の選択肢を選んだ回答者が4割程度存在しており、仮説を概ね裏付ける結果が得られた(図 2.2 38)。
なお、同図での経年比較については、本調査で選択肢を増やしたことの影響を受けていることが見込まれるため、単純な比較はできません。
■ 情報管理に関する強化のきっかけはあったか?
仮説① 情報管理強化のきっかけは取引先からの要求が最多。
結果① 企業における情報管理の見直しのきっかけは「経営層の指示」が最多であり、仮説で最多とした「取引先からの要求」は6位、「インシデント未遂」が7位となるなど、仮説と大きく異なる結果となった(図 2.2 98)。
この背景として次のような要因が影響していることが考えられますが、企業インタビュー調査を行った結果では、これを裏付ける情報は得られませんでした。
・経済産業省やIPAで普及促進を図っている『サイバーセキュリティ経営ガイドライン』による啓発効果
・経営層が参加する活動(商工会議所、商工会等)による啓発効果
・営業秘密の不正利用に係る事件報道等に接した経営層によるリスクの認知
次回は不正競争防止法改正の影響について2回に分けて紹介します。この調査の報告書は以下のリンクからご覧になれます。
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