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箱男
2024年6月8日 21:41
試験勉強の取りかかりはなかなか踏ん切りがつかない。ふだんから勉強が習慣化していないと、その一歩は恐ろしく重い。高校時代の私にとって、机とは勉強するところでなく、教科書をおいておく台だった。そんな私の試験前夜はつぎのようなものだった。21:00から勉強しようと夕食の前から決めていた。世にいう一夜漬けだ。20:54に観ていたテレビが終わると、よろよろと机の前についた。机の上を片づけたところ
2024年4月13日 20:57
中上健次に『十九歳の地図』という小説がある。主人公は19歳の予備校生だが、とっくに大学進学をあきらめており、ほとんど予備校にも通っていない。主人公は新聞少年でもあり、新聞を走って配って生計を立てている。配達員の寮で暮らしており、日中そとの光の入らない週刊誌や食べかすの散らかった部屋で、寝汗と精液で湿気たふとんで眠っている。少年は物理のノートに配達地区の地図を描いて、贅沢な家で温かいふとん
2024年3月16日 21:09
高校生のときの話。体育の授業が終わって教室の席につくと、私はふり返り、「ええのう、お前は1番上で。俺なんか小学校のときから1番下の土台で」ななめうしろに座る友人に膝をさすりながら言った。体育祭のピラミッドの練習をしたばかりだった。小柄な友人は「バカ、1番上に立って手ひろげるのも怖いんで」と言い返す。「フォークダンスのステップ覚えた? あたし、ぜんぜん覚えられん」友人のとなりの席の堀