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アニミストのひとりごと

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昔の日本人が普通に持っていた自然信仰のものの見方で、現代の諸々を見て思うことをつらつら書いてみます。
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記事一覧

母のこと

母のこと

 母が死んだ時のことを今でもよく思い出します。うつ病のどん底にあった私を心身ともに支えてくれた人でしたが、50才くらいの時に乳がんを発症していました。摘出手術がうまくいって、しばらくは普通の生活を送っていたのですが、10年ほど経ってから転移が見つかって、数年の闘病の後に亡くなりました。

 母が亡くなった当時、私は不動産会社勤務で終電ギリギリまで働くような生活をしていました。勤め始めて半年経たない

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はじまりのハワイ2

はじまりのハワイ2

ハワイ島から日本へ帰る途中、私はひとつの寄り道をしました。“死と再生”のハワイ島リトリートのおかげで、すっかり忘れてしまっていたけれど、もともとの私のハワイ旅の意図は「フラで表現されているハワイの自然を実際に見たい」だったのですから。せっかくならば本場のフラも見てみたいということで、滞在を数日延ばしてオアフ島へ移動し、プリンスロットフラフェスティバルというフラのイベントを見てから帰国することにして

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はじまりのハワイ1

はじまりのハワイ1

2017年7月、ハワイ島。それは私にとって大きな転機となる旅でした。
お話は、ハワイ旅の少し前に遡ります。その頃の私は、ベンチャー支援会社で官公庁からの受託事業のプロジェクト管理のお仕事をさせてもらっていました。うつ病から立ち直って社会へ復帰し、自分の仕事の能力に懐疑的なままいくつかの職場を経験した後、ご縁あって友人に紹介してもらい入社した会社でした。
当時は起業家を育てようという機運が高まってい

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うつ病とアニミズム2

うつ病とアニミズム2

アニミズムはうつ病の癒しになりえるのか?そこに、もうひとつ観点を加えてみるならば、存在を感じる、という言葉になるでしょうか。まずは、私自身の経験から、お伝えしてみましょう。

私のうつ病の種となったものは、おそらく他者の存在を感じることへの疲れだったろうと思います。他人の目に自分がどう映っているのか。ちゃんと役に立つ人材だと思ってもらえているだろうか。いつかお前など不要だと言われてしまったらどうし

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うつ病とアニミズム

うつ病とアニミズム

私が最初にうつを発症したのは、社会人になって5年目くらいのことでした。目標を達成できないダメ営業だった私は、部署異動によって事務職となり、「今度こそ周りの人の役に立たなくては、自分の居場所が無くなってしまう!」という強迫観念のもと、過剰な頑張り方をして心身のバランスを崩したのが原因だったのかなと思います。はじめは体調不良で会社を休みがちになり、身体が重たくて出社することもできなくなった頃に、休職し

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熊野木挽き歌

熊野木挽き歌

木挽き、という職業がかつてありました。
この国の建物のほとんどが木で造られていた頃、建築現場のあちこちで丸太を鋸で挽いて、板や角材に仕上げていた人たち、それが木挽きさんです。
今ではもう無い職業のようですが、熊野には、その木挽きさんの在りし日の姿をうかがい知ることのできる「木挽き歌」が伝わっています。
その歌詞から、木挽きさんの暮らしの一端を覗いてみましょう。

「流れ谷」:現在の三重県熊野市飛鳥

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みちびき―科学的アニミストの素性―

みちびき―科学的アニミストの素性―

私、たなかなおこは、科学的アニミストだ。
しかし、長らく自分自身でもそのことを知らなかった。
2017年、晩秋のアメリカ西海岸の旅で気づくまでは……

その頃の私は、夏に会社を辞めたばかり。次の人生のヒントを探して、あちらこちらへと旅をしていた。
西海岸へ来たのは、「なんとなく」と「なりゆき」の結果だった。
友人その1に誘われた「ビジョンクエスト」というアメリカ先住民の成人のイニシエーション。

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喪われた命が遺したものを想う

喪われた命が遺したものを想う

台風が過ぎていくまで、おうちで仕事にしよう。
そう思って、YouTubeで作業用BGMを探そうと思ったのに。
なぜだかこの曲が目に入ってしまって、指がうっかり再生ボタンをカチッと押してしまった。

ああ……イントロを聞くだけで切ない。
素直に伸びる声と、ストレートで、それでいて直截的でない歌詞。
いろんなことが思い出されてきて、なんだか泣いたり笑ったりしたくなった。

私がこの曲をちゃんと聞いたの

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新型コロナがインスパイアした愛すべき作品たち

新型コロナがインスパイアした愛すべき作品たち

新型コロナウイルス(以後、コロナちゃんと呼称)は、情報の嵐としても、巷を席巻していますね。
その脅威とか不安とか正確な情報の拡散などは、他の人にお任せするとして、私は私の領域で発信したいことがあります。
それは、コロナちゃんが我々人類をつついてもたらしてくれた創造性です。
コロナちゃんの影響力は、いかんせん、人の手の及ばない程に大きくなりつつあると思っています。(その中でも、人として最善を尽くすの

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熊野比丘尼の奄美紀行 しまっちゅ編  ~不羈の民の住む島へ~(後編)

熊野比丘尼の奄美紀行 しまっちゅ編  ~不羈の民の住む島へ~(後編)

(前編はこちら)

5マイルでのお手伝い期間を終えてから数日は、奄美大島でいろいろと見てから帰ろうと思っていました。
WWOOF期間も残り1週間かという頃、おとうのお兄さん、生駒さんが大島から来ていたので、大島でどこへ行き何を見るかを相談してみたところ、思いがけずこう言ってくれました。
「じゃあ、うちに泊まれば?一緒にハイキングでもしよう」
あまりの親切にびっくりしながらも、お言葉に甘えて、奄美大

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熊野比丘尼の奄美紀行 しまっちゅ編  ~不羈の民の住む島へ~(前編)

熊野比丘尼の奄美紀行 しまっちゅ編  ~不羈の民の住む島へ~(前編)

年明けから1か月、奄美の加計呂麻島へ行ってきました。
「奄美には何があるの?」
「アマミノクロウサギが見たいの?」
など、親や知人から明後日な方向の質問ももらったけれど、なぜ行くのか、自分でもよくわからなかったのです。

2年前に初めて旅行で来た時の、実家以上にリラックスしてしまったあの不思議な空気、奄美大島の中をバスでずーっと南へおりてきて、さらに船で加計呂麻島へ渡ってきた時の、自分の中の時間感

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インスタ道に垣間見る、日本のしたたかな強さ

インスタ道に垣間見る、日本のしたたかな強さ

私は、どちらかというと流行に疎い。
大学の頃に携帯電話を持ったのは友だちの中で1番遅かったし、Instagramもアカウントは持っているけれど、あまり使いこなせてはいない。
撮影テクやいろんなアプリを駆使してインスタ映え写真をアップするような素敵女子たちとは、一生わかりあえないんじゃないかなと思っていた。

そんな私でも、妹からこんな話を聞いた時には驚愕した。
「インスタ女子たちのポイントは、写真

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熊野比丘尼の熊野紀行-熊野の入り口編-

熊野比丘尼の熊野紀行-熊野の入り口編-

本命の熊野紀行、第1弾!(何弾まであるんだろう? 笑)
このシリーズを始めるにあたって、「熊野は捉えどころのない聖地だ」と書きましたが、わかりにくさのひとつとして「熊野エリアの入り口は複数ある」ということも、挙げられるかもしれません。
そこで、熊野紀行は、まず、入り口編からスタートしたいと思います。

熊野初心者の三択多くの方にとって、熊野旅の始まりは海の近くになります。
紀伊半島では、空港も鉄道

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熊野比丘尼の中国紀行-武漢の思い出編-

熊野比丘尼の中国紀行-武漢の思い出編-

友人がFacebookでシェアしていた武漢の映像作品を見ました。

これを見ていると、いろんな思いが湧き起こってきます。
人の気配が異様に少なくて、街並みが美しいな、とか。
こんな大変な時なのに、そんなこと思って不謹慎で申し訳ないな、とか。
車の大渋滞のイメージしか無かった武漢が、こんなになっちゃうなんて痛ましいな、とか。
こういう作品を創れる若い人たちがいるって、頼もしいな、ちょっと羨ましいかな

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