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チラシの裏に漢字を書き散らしていた二歳児は、長じて京大言語学に進みました 言葉に関する漫文
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語源遊び⑦:知らぬが仏

語源遊び⑦:知らぬが仏

知らぬが仏、という諺がある。
英語で類似のものを探せば、ignorance is bliss(無知は至福なり)となる。

しかし逆に、幸せだと阿呆になると言われたらどうだろうか。

英語のsillyという言葉の語源を知ったときは衝撃的だった。

簡単に言えば「幸せ」という意味の言葉が色々と転じて「愚か」という意味になったわけだが、もう一つ驚くべきことがある。

オランダ語では今でも「心地よい」とい

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語源あそび⑥:え!?シュークリーム食べた!?

語源あそび⑥:え!?シュークリーム食べた!?

突然だがシュークリームというお菓子をご存じだろうか。ってみんな知ってると思うんだけど、福沢諭吉が読者をサルと思えと言ったと言う伝説に基づいて一応問うてみた。どうでもいいけど結局京大に来てしまったのでお布施的何かになってしまった慶應と早稲田の入学金各20万円は有効活用してもらえたんだろうか。払ってくれたてておやに感謝。

さて2文目からいきなり激しく脱線したけれども、シュークリームとは英語ではcre

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語源遊び⑤:ペテロの意志、石の如し

語源遊び⑤:ペテロの意志、石の如し

欧米の人は日本人には名前の意味を聞いてくる割に、彼らの名前の意味を聞くと、「特に意味はない」とか、「単に聖人の名前だよ」という返事が返ってくることが多い。

確かに、日本人、中国人、朝鮮人、ベトナム人(彼らの中には自分たちの名前が感じで表記できることを知らない者もいるが)など漢字圏の人々の姓名と比べると、ひと目で意味がわかる性質のものではないかもしれない。しかし語源を考えれば必ず何らかの意味がある

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語源あそび④:トールキンTolkienとお洒落なカレー屋oxymoron

語源あそび④:トールキンTolkienとお洒落なカレー屋oxymoron

映画、指輪物語が好きだ。始めて見たのはまだ幼い頃だったと思うが、長じて大学に入ってからも4, 5回は見た。その幻想的な世界観、完璧な衣装に身を包んだすばらしい俳優たちの名演、言語に至るまで(トールキンにとっては主題か)隅々に張り巡らされたこだわり。よくできた工芸品を愛でるように、私は何度もこの物語を味わってきた。

さて、今回のお話は、そんな指輪物語の原作者、John Ronald Reuel T

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群がれ、けものたち

群がれ、けものたち

動物の群はかわいい、効率がよい、おっちょこちょいである、もふもふしてる…色々なイメージが動物ごとにあるだろうが、英語では動物が集まったとき、その群に種族ごとに異なる名前を与える習慣がある。日本語でもそういう表現はあった気がするが、日常的には使わないだろう(というか英語圏でも知っていると一目置かれる部類の語彙のようで、Orange is the new blackでも"a mischief of r

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語源あそび3:"nice concert"は「神経質な論争」?

語源あそび3:"nice concert"は「神経質な論争」?

言葉は生きている。昔からある言葉の中には、今の意味からは想像もつかないような成り立ちを持つものがある。
"nice"は典型例で、英語の辞書を開いたことのある人ならば知っている人も多いかと思うが、これはもともと「無知」という意味の言葉であった。ラテン語の"nescius"がそれで、"-scius"の部分は「知、科学」を意味する"science"と語根が同じで「知る」という意味である。それに否定の接頭

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語源あそび②:gooseとmooseとgeeseとmooses

語源あそび②:gooseとmooseとgeeseとmooses

【題目】
ガチョウという意味のgooseの複数形はgeeseだが、
ヘラジカという意味のmooseの複数形はmoosesである。

【解題】
これは、gooseの"oo"がfootやtoothと同じく古いゲルマン語に由来するのに対し、mooseはネイティブアメリカンの言語からの借用語なので見かけ上同じ"oo"でもこちらは"ee"に変化する根拠に欠けるのである。

小ネタでした。

▽次の記事

語原あそび①:businessとかわいい

語原あそび①:businessとかわいい

就職してからビジネスについて考えることが多い。ここにその成果を公開したいと思う。(※言葉の話しかしないので注意)

ビジネス、とカタカナで言えばそれは商売のことであって、これを元の英語で表記するならbusinessということになる。

ところが同じ発音でbusynessという単語もあり、こちらはbusyを名詞化したものである。

通常-yという形で終わる形容詞は、-nessという接尾辞を伴って名詞

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広辞苑に載ってない日本語②:サスケ

広辞苑に載ってない日本語②:サスケ

鎌倉駅から由比ヶ浜の方へ南下する道を歩いていて、佐助川という川を渡った。

佐助、というのは日本人の名前から来ていると思われるが、それぞれの漢字の意味を考えてみると名前としては少しく妙に思われる。

佐、という字は、「補佐」「大佐」「開国佐幕」などに見られるように、たすけるという意味の文字である。

助、もまた言うまでもなく、助けるといい意味である。

つまり、佐助というのはどこまでも人を助けてば

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広辞苑に載ってない日本語①:どこぞの達磨の縁の下

広辞苑に載ってない日本語①:どこぞの達磨の縁の下

当然ながら広辞苑はすべての言葉を網羅しているわけではない。
言葉は無尽にして常に新しく生成され続けている。

歴史の途上に置き去りにされた言葉たちも現代の辞書には掲載されていない。しかしそういった言葉の中には何ともいえない滋味深い情緒をたたえたものがある。

今日紹介したいのは、「どこぞの達磨の縁の下」という表現。

どこ行くの、と聞かれて、なんとなく答えたくない時がある。そんなときに使える言葉。

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