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圧雪:ゲレンデを美しいシマシマに。少量の雪でも長くスキーを楽しむ秘策(CASE: 27/100)


▲「圧雪」とサステナビリティ

梅雨真っ盛り、蒸し暑い日が続き、そろそろスキー・スノーボードのシーズンも終わりに近づきつつありますね。

…6月にスキー?と思った方が多いかもしれません。
実は山形県の月山スキー場はあまりにも積雪量が多いため、ハイシーズンの真冬はクローズし、4月になってやっとオープン、例年7月下旬までスキーシーズンの営業をしているのです。冬の6メートル以上の積雪が、その重みによって空気が抜け、固められることにより、永く融けない雪の斜面ができあがります。

とはいえ冬に営業ができない月山ほどの積雪量は例外。
そこで大多数のスキー場では、コース整備の方が夜な夜な人工的に「圧雪」をすることで、ゲレンデの雪を固め、少ない雪でも長い期間楽しめるようにしてくれています。
圧雪作業は普段夜間に行われます。昼間に多くのスキーヤー・スノーボーダーが滑って荒れたバーンを圧雪すると、気温が下がる夜中に水分が冷え固まり、翌朝には美しくグルーミング(手入れ)されたゲレンデになります。朝一番のシマシマ模様のバーンは、何よりも気持ちがいいものです。
圧雪のやり方は、夜の気温やゲレンデの積雪状況によって様々工夫する必要があり、各ゲレンデのこだわりが表れます。圧雪が美しいゲレンデとしては、岩手県の安比高原や長野県志賀高原の焼額山などが有名です。ちなみに、圧雪のことを「ピステン」という方もいますが、ピステンはドイツ ケースボーラー社の 「ピステンブーリー(PistenBully)」という圧雪車の製品名です。

閑話休題。スキー場には、圧雪の他にも、スキーシーズンを長くするための様々な工夫があります。
シーズン初めには何と言っても「降雪機」です。これも意外にエコな仕組みで、夏・秋の間に貯水池に貯めておいた水を使います。気温が下がる夜間、空気中に霧吹き状に水を撒いて自然に凍らせ、その氷の粒をゲレンデ上に溜めていくというシステムです。ある程度たまった人工雪は圧雪して、根雪化させます。
ゴールデンウイークまで営業を行うような、雪の多いスキー場では、「雪出し」という作業も行われます。雪が多く残っているうちに、ゲレンデ脇や林の中の雪を掻き出して積み上げておき、ゲレンデ内の雪が少なくなってきたら、積み上げておいた雪を取り崩してゲレンデ内に出していくというやり方です。

圧雪、人工降雪機、雪出し…。
スキー場の方の様々な工夫や努力のお陰で、温暖化に伴い総じて積雪量が減少している中でも、ありがたいことに、私たちはスキーシーズンを長く楽しむことができています。
気候変動や地政学リスクなど、これまで普通にやってきたことがやれなくなる、やりづらくなることは、これからも増えるかもしれません。
根本的な解決をみんなで目指すとともに、知恵を絞れば、与えられた状況の中でも十二分に楽しむことができると思います。
一緒に、工夫しましょう。

▲参照資料


▲キュレーション企画について

イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.lab シニア・ディレクター 杉江周平

▲i.labについて

i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。

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