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読みがえり

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読んだ本のレビュー(書評)をまとめています。雑多な書棚ですが、興味があればどうぞ!※注意🚨紹介している本を一度読んでから開くのをオススメします。限りなくネタバレに近いので笑笑
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2024年7月の記事一覧

読書:『「甘え」の構造』土居健郎

読書:『「甘え」の構造』土居健郎

①紹介

精神科医の土井健郎による『「甘え」の構造(増補普及版)』(弘文堂、2007年)を紹介します。「甘え」という言葉は日本語固有のものであり、欧米人はそれに相当する感情は持っていても、訳語は持っていないのだとか。「甘やかし」や「甘ったれ」のように否定的に理解されがちな甘えの本来の意味を探り、日本人の何たるかを問う古典的名著です。

②考察

● 「人間は誰しも独りでは生きられない。本来の意味で

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読書:『二十四の瞳』壷井栄

読書:『二十四の瞳』壷井栄

①紹介

小説家・壷井栄による『二十四の瞳』(角川文庫、2007年)を紹介します。昭和のはじめ、「瀬戸内海べりの一寒村」の学校に赴任してきた新米の女性教師・大石久子と十二人の子どもたちとが織りなす温かい日常、そして彼らが見た戦争。一つまた一つと失われていく瞳に焼きついたその悲惨さを私たちも共有してみませんか。


②考察

● 「大石先生、あかじゃと評判になっとりますよ。気をつけんと」
➢ 「あ

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読書:『国家』(下)プラトン

読書:『国家』(下)プラトン

①紹介

哲学者プラトンによる『国家』(下巻、藤沢令夫訳、岩波文庫、2008年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きですね。政治を行う哲学者に求められる善のイデアとは何か。彼は師ソクラテスの口を借りながら「太陽」「線分」「洞窟」の比喩によってそれを解説します。


②考察

● 「〈善〉の実相(イデア)こそは学ぶべき最大のものである」
➢ このイデアについてプラトンは上記の3つの比喩を用い説明して

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読書:『定訳 菊と刀』(全)R.ベネディクト

読書:『定訳 菊と刀』(全)R.ベネディクト

①紹介

アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトによる『定訳 菊と刀(全)-日本文化の型』(長谷川松治訳、現代教養文庫、1967年)を紹介します。アメリカ人は「罪の文化」、日本人は「恥の文化」に影響されているというのが本書における彼女の説ですが、はたして真相は……

②考察

● 「『すべてのものをあるべき場所に置く』というのが、日本のモットーである」
➢ 「あるべき場所」は前述の「ふさわしい

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読書:『いしぶみ』広島テレビ放送 編

読書:『いしぶみ』広島テレビ放送 編

①紹介

広島テレビ放送による『いしぶみ-広島二中一年生 全滅の記録』(ポプラポケット文庫、2009年)を紹介します。副題に込められているのは、ありのままの事実と戦争の悲惨さ、そして平和を求めることの意味。広島に原爆が落ちた日から今年で79年。何の/誰のための平和なのか原点に立ち戻って考えてみましょう。


②考察

● 「泳ぎのできない友人が、『ぼくらは先に行くよ』といって、万歳をさけんで川下

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読書:『国家』(上)プラトン

読書:『国家』(上)プラトン

①紹介

哲学者プラトンによる『国家』(上巻、藤沢令夫訳、岩波文庫、2008年)を紹介します。前回読んだ『饗宴』に引き続き、彼の亡き師ソクラテスが主人公として登場。「正義」とは何か。師の口を借りてプラトンはそれを為政者に求められる資質とし、哲学を修めた者による政治の実現を説きましたが、それには疑問の余地があります。


②考察

● 「われわれが国家を建設するにあたって目標としているのは、(略)

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読書:『禅と日本文化』鈴木大拙

読書:『禅と日本文化』鈴木大拙

①紹介

仏教学者の鈴木大拙による『禅と日本文化』(北川桃雄訳、岩波新書、1964年)を紹介します。本書は鈴木が海外に仏教を紹介するために英語で著されました。私たちの日々の生活の中に宿っている禅の精神。それが日本文化に及ぼす影響は計り知れません。


②考察

● 「禅の教義は、形態を超越して精神を把握することなのであるが、それは、われわれに自分たちの住む世界は特殊諸形態の世界である事実、精神は

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