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振り幅の広い短編集

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1ページ完結の短編をまとめました。
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#ショートストーリー

【短編】ぼくはチチチ星人じゃない

【短編】ぼくはチチチ星人じゃない

「おまえ、チチチ星人なんだろ。だからそんなに耳がとんがってるんだ」

さくら組のゆうせいくんがいった。ぼくは口をぎゅっとさせて「ちがうよ」といったけど、ゆうせいくんは聞いてくれない。

「チチチ星人はにんげんをおそって食べちゃうんだ。だからきゅうたと仲良くしたら、食べられちゃうんだぞ」

ゆうせいくんが大きなこえでみんなにいった。

チチチ星人は、よるにだけしゅつげんするナゾの異星人だ。おひさまの

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【短編】パンダにも理由がある。

【短編】パンダにも理由がある。

パンダとしての人生を全うすべく、わたしは日夜研究に励んでいる。

自分がパンダだと気がつくまでに、随分と時間がかかってしまった。わたしは人間の手によって取り上げられ、人間に囲まれて育ったせいで長いこと自分を人間だと信じ込んでいた。

今にして思えば、人間たちとわたしとでは大きな隔たりがあることにも、恥ずかしながら気付かずにいた。人間は二足歩行なのに歩くわたしの足は四本で、肌がスベスベなのも足の裏く

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「恩師」はいつも後からやってくる(後編)

「恩師」はいつも後からやってくる(後編)

前編はこちらから。

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ごめん、前置きが長くなったね。

三年生になった春、私は学年が一つ上がったくらいで何も変わらないって思ってたんだけど、一つだけ変わったの。それまで部活の顧問だった先生が産休に入って、別の先生に変わった。前の先生はみんなから「ひろこちゃん」なんて呼ばれてるようなゆるーい人で、部活も対して熱心にやってなかった。まだ若いから押し付けられて

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「恩師」はいつも後からやってくる(前編)

「恩師」はいつも後からやってくる(前編)

自分で言うのもなんだけどさ、昔は分かりやすく優等生だったんだ。

勉強は割とできたし、先生に反抗とかしなかったし、スカートも怒られないくらいの長さにしてたし。部活でもそこそこ活躍してたしね。

あの頃の私は流されるままにいい子ちゃんしてて、今で言う「悟り世代」の先駆けみたいな感じだったわけ。大人の言うことには下手に逆らわない、常識はそれなりにってね。まぁ何事も無難にやる器用さもあったから。

友達

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