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【小説書評・レビュー】『土の中の子供』/中村文則

死に近づくと、生もまた近くなる。

『土の中の子供』 著:中村文則  (新潮文庫)

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内から溢れでる暴力性や人間の持つ
根本的な欲求や脆弱性を
繊細に表現し、第133回 芥川賞を
受賞した本作 『土の中の子供』

主人公である27歳のタクシードライバーを
ずっと悩ませているのは、過去のトラウマ。

親に捨てられ、養家には日常的に
虐待を受けて育ち、ついには
「暴力」を引き起こさせる素養を
もってしまいます。

バイクの集団に喧嘩をふっかけ
集団リンチにあったり
山に埋められそうになったり……

常に暴力に晒される人生ではあるものの
その暴力の中に自分の生への「核」が
あると思い、ひたすらに内省を
くりかえし己を追求していくお話。

トラウマと向き合い、自分の人生を
振り返りつづける主人公の
その先に待つのは
ハッピーエンドか、それとも……。

とても惹き込まれる作品でした。

また、この本の中には「蜘蛛の声」という
40ページほどの短編も併録されています。

現実逃避して橋の下で身を縮めて
ホームレス生活する主人公。

橋の下で生活していく中で
現実か幻覚かわからないものを
みながらも、内省をつづけ
葛藤する主人公の姿には心打たれる
ものがありました。

ぼく個人としては、併録されている
「蜘蛛の声」は場面がありありと
目に浮かび、しゃべる蜘蛛との
掛け合いは、若干のユーモアも感じ
より中村文則さんの世界観に
引き込まれました。

表題より、併録されているほうに
心が動くこともある。

今の心情を表しているのかもしれませんね。

これだから読書はおもしろいと、あらためて
感じました。

病んでる人は、さらに病む。
おすすめできる本です、ぜひ!

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