最近の記事

思考整理

定期的に前髪を切るようになった。疲れを無視して「趣味」をこなしたりした。 生きてるだけでは消費されていくばかりだし、生産しないと、とにかく何かしないと自分が擦り切れて消えてしまいそうで、このごろはずっと動いている。たぶん意味はないし、特別楽しいかと言ったらそうでもない。もう、何が正解かなんにも分からない。何もしないよりかはマシだと誰か言って欲しい。何もしなくたってあなたは消えやしないよと誰か言って欲しい。とにかくもう疲れたくない。 結局はすべてから逃げているだけだから。そのつ

    • 17歳、日記

      私はもう17歳なので星乃珈琲に1人で入れる。 本来2人で囲むためのテーブルの、奥側に1人で座った。仕切られた隣の席には女の子2人(『新歓』というワードが出ているあたり大学生だろう)、そして顔をあげれば男女がメニューを見ている。あ、右隣の席にもおひとり様が来た。 細身で背の高いクールな女が注文を取りに来た。お冷を持ってきてくれた店員は感じのいい太った女性だったのだけれど。どっちも素敵な女性だったけど、私はそのどちらにもならないな、と思った。いちごの乗ったパンケーキを注文した。

      • セ.イ.レ.ー.ン.

        浴槽の人魚は湯冷めをして死んでしまった。昨日見た夢は蘇生して、地球はもう平面なんかじゃない。三日月は滑って転んで、あの人のどの爪ともぜんぜん似ていない。 彼女は月を、いつも地球と相対的に捉えていた。月と、地球と、太陽の相関図がゆっくり、ゆっくり動いて見えるそうだ。僕には空が平面に見える。奥行きに気づいてしまってから少女の世界は34度、左に傾いた。 寝て起きたらひとりだった。ずっとそうだ。僕がその「ひとり」目で、どういう基準でそれは数えられて、どうなればふたりに増えるのか分か

        • 人工的なひかり、告白

          鼻をきつく詰める生々しいあの鉄の匂い、一度流れて出たものが私の中に戻ることは決してありません。それでもあのとき私が感じたもの、それはちいさな償いのつもりでした。自慰行為のようなものにすぎなかったのかもしれません。 私が見たものは赤ではなかった。私のいちばん好きな色の、真反対の色をしていました。もしこの星のどこかしらにあんな色の海があれば、私はきっと絶望よりも大きな何かを抱える。 つまり私は何者かになりたかったのです。私というひとつの存在が、正しい輪郭が誰かの目に留まるような

        思考整理

          天国の藍

          天国、あるいは無に帰ることを強く望むわたしたちは、いったい何に生かされているのだろうと。 明日の私が死を促す。延命治癒を施すのはどの私だろう。あのひとの残像を少しだけ涙に混ぜて、指先の温度だけを信じている。今ではもう、「蛍光灯の光」なんて言葉はあまり見ない。遡ることにばかり視線を使う私は、噛み合わない世界の一瞬一瞬と、いつもすれ違ってる。 いちばん大事な本音はリアルでつぶやかない。否定されるのが怖いから。虚像の私に人間関係を奪われることよりも、「私自身」を否定されるのがこわい

          天国の藍

          夏だけが覚えているあの日の記憶について

          何かを思い出させるような夏の匂いが嫌いだ。夜、ベランダに出ると赤ん坊のなき声が聴こえる。これが、打ち上げ花火の音だとか、蝉の鳴き声でなくてよかった、と少し安堵する。 私は夏を、少女のようだと思う。他の季節の何よりも、私の想う少女がいるのはいつも夏だ。その少女は半袖で、いつも少しだけ寂しい目をしていて、それでも笑う、たくさんたくさん笑う。頭のなかにはどこか遠くの景色があって、この成長途中の女の子は、その魅力でいつか誰かの人生を狂わす、のだと思わせる、きっと本人は無自覚のうちに

          夏だけが覚えているあの日の記憶について

          これは私なりのポジティブ

          価値観のひとつひとつとか些細なモノの考え方とか、そういう具体的な話じゃない、もっと深いところで間違っているんだよ、わたし。 この世界線に生まれてくるべきじゃなかったんだ、並行世界はいくつかあって、わたしはそのうちの、“ここじゃないどこか”に生まれてくるはずだったんだと思う、思ったんじゃなくて感じた。いや、もっと言うと思い出した感覚に近い。 とにかくわたしにとってこの世界は間違っていて、この世界にとって私は間違っている。 噛み合うことがない、たぶんそれが“違和感”の正体。風潮と

          これは私なりのポジティブ

          輪郭は曖昧でいい

          「あのころ」の話をしないでほしい。勘違いだけをしていればいい、生きることの意味なんか、どうでもいいと言えばいい、言ってほしい。 時間を歩むことをやめられないってこと、気づいてしまったからもう終わりだねって思ってる。 地面に足がつく0.1秒手前、こわくて息が止まってしまう、また一歩進む、少し後悔する、とめられない、なさけない、受け入れられない 、また進む。 生命力とも言えてしまうような、本能のつめたさを憎んでは、今日も生きて、一応、自分の首を締めてみたりして、明日着る服を決めて

          輪郭は曖昧でいい

          小説「人魚の涙」

          男には2本の足があって、彼女にはそれがない。たったそれだけだった。足の代わりに、彼女には海より深い青色の美しい鰭があって、男は、それが月の光をきらきらと反射する姿が好きだった。 人魚は必ず夜にあらわれる。月のない夜であってもいつものように彼女が岩陰で星を見ていることを、男はわかっていた。彼女の周りは、空気が光るから。そういう訳で男は、それが夢か、または自分の幻想かなにかだと思い込んでいて、人魚に近づくことはしなかった。 しかしある夜、その夜だけは、人魚が、どうしても現実にいる

          小説「人魚の涙」

          冬の海

          春が来る前に海を見に行きたいと思っている。 海を肉眼で見たのは、小さいころ家族で海水浴へ行ったときと、部活の合宿で少し。どちらも真夏のことだった。 冬でなくてはいけない。夏はおろか、春でも、秋でもいけない。私はいま、冬の海をみたい。 きっと冬の海はあまり人が居なくて、閑散とした空気が冷たい風となって私を「寒っ」と言わせるのだと思う。静かで、さびしくて、とてもとても親しみの持てる場所なのだと思う。 適当なおしゃれをして、ケータイと、できるだけのお小遣いを持って。最寄りの駅で

          冬の海

          雑記「焦燥と涙」

          いつもは私の心をずんと重くする不安や悲しみが、今日はやけに煩く、急かすように怒鳴ってくる。 不快感に無理やり蓋をして、 私は私でそれを見ないふりしている。 なにかに掻き立てられるように勢いだけで生きているというような日が、ときどき、不定期的にやってくる。 苦しくて、怖い。 最後に泣いたのはいつだっただろうか。 中学の頃、風呂場で毎日泣いていた。 誰にも見られぬように、知られぬように、 いっぱいいっぱいの感情を胸につかえさせながら 声を殺して泣いていた。 その間ずっと脳みその

          雑記「焦燥と涙」

          思考実験してみた

          こんにちは、イツキです。 題名どおり今日は思考実験に対する僕の考えを書いていこうかなと思います。 (もちろんこれは1個人の、しかも人間歴16年の未熟者の考えなので暖かい目でお願いします) テセウスの船 テセウスの船の古くなったパーツをひとつづつ取り替えていく。最初は1枚の床板。そして帆、舵……いつしか全てのパーツが新しいものに変わっていた。それでもこの船は、本物のテセウスの船と言えるのか? ▶︎言えない。 要素がひとつも残っていないなら物体としては全くの別物である。「こ

          思考実験してみた

          短編小説「冬ごもり」

          「思い出せない。どうしても、思い出せないんだ。」 そう言って彼は突然泣き出した。 冬の寒さが骨を突く朝。だらだらと汗を流し半ばパニックを起こした様子で僕に縋る。 「思い出せないって、何がさ。」 「夏だ。夏を思い出せない。」 うなじを焼く太陽のあつさも、じりじり煩い蝉の声も、冷たい水に触れる心地良さも、寂しかった夏夜の匂いも。言葉には出来るのに、彼の感覚はそれを思い出すことが出来ないらしい。 僕らの国の冬は何処よりも酷な寒さであった。 その為、冬を目一杯感じ季節を味わうのは、

          短編小説「冬ごもり」

          「還元」

          噛んだ欠伸の小さな吐息が 春を動かすそよ風ならば 深く冷たく澄んだ瞳が 宇宙の端の惑星ならば その瞳から零れた涙が 地へ落ちて草木を伸ばし また地に戻り流れながれ やがて海に出て地球を包むのならば 君はきっと神様でもなく 天使でもなくもっと粗末な 地上に佇む 僕の愛する人だ 僕の世界をつくるのも 富をもたらすのも緑を枯らすのも ぐちゃぐちゃにひねり潰してしまうのも 君にしかできない御業で その様は美しく 穢れている

          「還元」

          泡沫、夜明けの絶望

          東の空が少し白み、静かに絶望する。 さめきった身体で自分を俯瞰すると、どうしようもない焦燥感が僕の脳みそを殴っているのがみえた。 何もかもが不確かだ。 あの淡い地平も、絶望の居場所も、僕の輪郭も。 その全部がまるで誰かの夢であるように、ただぼやけながら互いを憎み合っている。 夢を見ていたような気がした。 もっとも、一睡もせずに夜を明かしたのだから、夢をみるはずなど無いのだが。 すでにその記憶が溶けた夢からさめるように、 大切ななにかを失った気がして、泣きながら空(くう)を抱

          泡沫、夜明けの絶望

          「執着」

          彼女は愚かな人間だ。愚かで、そして美しい。 お人好しで自分勝手。 単純でしたたか。 自信家で小心者。 とくに何も考えていなさそうな、でもその頭のなかは考え事が飽和している、そんな彼女に執着した。 いったい彼女の何処が愚かだと言うのか。 それは彼女の全てであり存在そのものだ。 その瞳に映る全て、その頭のなかに住む全て。 人の憎悪を受け入れ、 人の愛を他者へ流し、 自分自身を憎んでいながら、 自分自身を愛していた。 見るもの全てに感動し、 見るもの全てに失望し、 全てを見

          「執着」