堀田陽平(弁護士 日比谷タックス&ロー弁護士法人)

石川県白山市出身 弁護士 二児の父 2020年9月まで経産省産業人材政策室にて、兼業・…

堀田陽平(弁護士 日比谷タックス&ロー弁護士法人)

石川県白山市出身 弁護士 二児の父 2020年9月まで経産省産業人材政策室にて、兼業・副業、テレワーク等の柔軟な働き方の推進、フリーランス活躍、人材版伊藤レポート策定等のに従事。著書「多様な働き方と人事の法務」(新日本法規出版)、「副業・兼業の実務上の問題点と対応」(商事法務)等

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記事一覧

解雇等の有効要件の不明確さのリスクは誰が負っているのか

今年、配置転換違法の判例が出されており、会社の従業員に対する人事権の限界というテーマの重要性は、今後より一層重要となってくると思われます(実はこの点に関する本を…

ギグワーカーの労働者性とその先にある課題

先日の日経新聞一面に、ギグワーカーの法的保護に関する記事が掲載されていました。 記事によると、「厚生労働省はギグワーカーの待遇を改善する。新たに指針をつくって従…

「配転違法判決」はジョブ型導入の支障にはならないのでは?

今朝の日経新聞で、今年の4月に出された黙示の職種限定合意を認定し、配転を違法とした最高裁が「ジョブ型導入の支障になる」というような記事がありました。 この記事に…

少しずつ重点が変わっている政府の副業推進政策の目的

働き方改革以降の副業推進政策の影響もあってか、学生の4割が副業に前向きであるようです。 徐々に「副業はできるものなのだ」という理解も広まっているといえ、このよう…

日本のステークホルダーモデルの特殊性と人的資本政策との関係の捉え方

今回「#会社は誰のもの」というテーマ募集がありますので、以前書いたことがある内容に少し修正を加えて再掲したいと思います。 「シェアホルダーモデル」と「ステークホ…

同一労働同一賃金と女性活躍の関係性

今朝の日経新聞の記事で掲載されていたとおり、日本のジェンダー・ギャップ指数が、調査対象国の146か国中118位だったようです。過去最低であった昨年の125位より…

副業の労働時間通算は「複雑」というより法律解釈の限界を超えていないか

かねてから副業政策の大きなテーマとなっている労働時間通算ですが、以下のとおり「労働時間の通算が複雑で、大きな負担」という内容の記事が掲載されています。 このテー…

事業場外みなしと裁量労働制の在り方をどう整理するか

先日、以下の記事のとおり事業場外みなし労働時間制の適用に関する最高裁の判断が下されました。 判断の内容としては、原審(第2審の裁判所)に差し戻し、「もう一度審理…

配置転換違法判決から考える個人のキャリア自律

4月26日、以下のとおり、職種限定の労働契約の下での同意なき配置転換は違法であるという判決がなされました。 実は、私はかねてよりこの「職種限定と配置転換等人事権…

エンゲージメントを高める「ストレッチアサインメント」

先日の日経新聞に以下のような記事がありました。 日経新聞社の調査によれば、働きやすさを尊重する「ホワイト企業」でもなく、また、「働きがい」が高い「モーレツ企業」…

フリーランス新法で副業推進はどう変わるか(副業政策とフリーランス政策の関係性)

昨年成立・公布されたフリーランス新法ですが、今年の秋頃の施行が見込まれています。 フリーランスガイドラインからフリーランス新法へと進められてきたフリーランス政策…

副業政策のゴールはどこか

三井物産では、労組が人材戦略を提言し、副業制度につながっており、労働者側からのプレッシャーで副業を解禁するという流れが見られます。 働き方改革以後の副業実施状況…

「副業規制」など存在しない

先日の日経新聞記事に「副業規制」という表現を用いて、希望がありつつも副業を実施できていない人がいるという旨の記事が掲載されていました。 私は、この記事を読んで、…

副業の相互受入れと健康確保の仕組み構築の必要性

日立製作所とソニーグループとが、2024年に社員の副業を相互に受け入れるようです。 私は副業推進を肯定的に捉えていますし、副業推進政策を担当していた身としても、ひと…

いよいよ本格的に動き出すフリーランス政策

アメリカでは、ギグワーカーに企業従業員と同待遇とする旨の規則を発表したようです。 ギグワーカーないしフリーランスに関しては、欧米諸国において立法の議論がされてい…

「収入目的の副業はけしからん!」と言えるのか

昨日の日経新聞に「バラ色ではなかった副業」として、以下の記事が掲載されています。 そこでは、「企業はスキル向上を、働き手は収入増を目的としており、目的にずれがあ…

解雇等の有効要件の不明確さのリスクは誰が負っているのか

解雇等の有効要件の不明確さのリスクは誰が負っているのか

今年、配置転換違法の判例が出されており、会社の従業員に対する人事権の限界というテーマの重要性は、今後より一層重要となってくると思われます(実はこの点に関する本を出しているので、少し古くなっていますが、お読みいただけると嬉しいです。)。

労働契約法の経緯と現状さて、こうした配置転換、出向、解雇等の有効性を定めているのは、労働契約法です。

ただ、労働契約法は、会社と従業員間で問題になる人事上の問題

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ギグワーカーの労働者性とその先にある課題

ギグワーカーの労働者性とその先にある課題

先日の日経新聞一面に、ギグワーカーの法的保護に関する記事が掲載されていました。

記事によると、「厚生労働省はギグワーカーの待遇を改善する。新たに指針をつくって従業員と同じように最低賃金を適用し、有給休暇の取得ができるギグワーカーを認める。」とあり、新たな指針を出すようです。

また、「厚労省が最低賃金の適用や有給休暇を付与される労働基準法上の労働者の要件を見直すのは、法律の想定と現実にズレが生じ

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「配転違法判決」はジョブ型導入の支障にはならないのでは?

「配転違法判決」はジョブ型導入の支障にはならないのでは?

今朝の日経新聞で、今年の4月に出された黙示の職種限定合意を認定し、配転を違法とした最高裁が「ジョブ型導入の支障になる」というような記事がありました。

この記事に真っ向対立になるのですが、個人的には、大きく2つの観点から「そうかな?」と思うところがありましたので、今回はこの点について書いていきます。

ちなみに、この判決については、7月8日発刊の日経ビジネスさんに、私のインタビュー記事を掲載いただ

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少しずつ重点が変わっている政府の副業推進政策の目的

少しずつ重点が変わっている政府の副業推進政策の目的

働き方改革以降の副業推進政策の影響もあってか、学生の4割が副業に前向きであるようです。

徐々に「副業はできるものなのだ」という理解も広まっているといえ、このような傾向はこれまで副業・兼業を推進してきた政府の狙いどおりといってよいでしょう。

ところで、副業・兼業の推進は、働き方改革実行計画以降、継続して進められてきた政策ですが、実は少しずつ、その狙いの重点は変わってきているように思われます。

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日本のステークホルダーモデルの特殊性と人的資本政策との関係の捉え方

日本のステークホルダーモデルの特殊性と人的資本政策との関係の捉え方

今回「#会社は誰のもの」というテーマ募集がありますので、以前書いたことがある内容に少し修正を加えて再掲したいと思います。

「シェアホルダーモデル」と「ステークホルダーモデル」「会社はだれのものか」ということを考える時、考え方は大きく2パターンあります。

まず一つ目は「会社は株主のものである」という「シェアホルダーモデル」を前提とする考え方です。
他方で、「会社は従業員や取引先、債権者、地域住民

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同一労働同一賃金と女性活躍の関係性

同一労働同一賃金と女性活躍の関係性

今朝の日経新聞の記事で掲載されていたとおり、日本のジェンダー・ギャップ指数が、調査対象国の146か国中118位だったようです。過去最低であった昨年の125位よりは上昇しているものの、依然として低い位置にいると言わざるを得ないでしょう。

この記事でも書かれているように、賃金格差の是正は大きな課題であり、そのためにも同一労働同一賃金は重要です(ただ、後で述べますが、この記事でコメントされている方のコ

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副業の労働時間通算は「複雑」というより法律解釈の限界を超えていないか

副業の労働時間通算は「複雑」というより法律解釈の限界を超えていないか

かねてから副業政策の大きなテーマとなっている労働時間通算ですが、以下のとおり「労働時間の通算が複雑で、大きな負担」という内容の記事が掲載されています。

このテーマについては、これまでの複数回、noteで書いていますが、個人的には「複雑だから問題」というのもそうですが、そもそも法律解釈の限界を超えている考えています。
※副業については他にも色々書いているので読んでいただけると嬉しいです。

厚労省

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事業場外みなしと裁量労働制の在り方をどう整理するか

事業場外みなしと裁量労働制の在り方をどう整理するか

先日、以下の記事のとおり事業場外みなし労働時間制の適用に関する最高裁の判断が下されました。

判断の内容としては、原審(第2審の裁判所)に差し戻し、「もう一度審理しなおせ」としたもので、最高裁自体が事業場外みなし労働時間の適用の有効・無効を判断したわけではないものの、「労働時間を算定し難い」か否かは個別の事情をしっかりと認定して判断すべきことが示された重要な判断といえます。

どういう場合に事業場

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配置転換違法判決から考える個人のキャリア自律

4月26日、以下のとおり、職種限定の労働契約の下での同意なき配置転換は違法であるという判決がなされました。

実は、私はかねてよりこの「職種限定と配置転換等人事権の行使」というところに着目しており、4年ほど前に出した拙著でも扱っている論点です。

そこで、最高裁判決を機に、再度この論点をおさらいしつつ、「個人のキャリア自律」という観点から感想を述べたいと思います。

今回の最高裁判決の概要まず初め

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エンゲージメントを高める「ストレッチアサインメント」

エンゲージメントを高める「ストレッチアサインメント」

先日の日経新聞に以下のような記事がありました。

日経新聞社の調査によれば、働きやすさを尊重する「ホワイト企業」でもなく、また、「働きがい」が高い「モーレツ企業」でもなく、「働きやすさ」と「働きがい」の両方を掛け合わせた「プラチナ企業」の方が、売上高の増加率、PBRが高いという結果が出ているようです。

適度なアサインがエンゲージメントに影響する昨今では、「ホワイトすぎる企業」も敬遠されるというこ

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フリーランス新法で副業推進はどう変わるか(副業政策とフリーランス政策の関係性)

昨年成立・公布されたフリーランス新法ですが、今年の秋頃の施行が見込まれています。

フリーランスガイドラインからフリーランス新法へと進められてきたフリーランス政策ですが、フリーランス政策は副業推進政策とも関係しています。

今回は、フリーランス政策と副業推進政策との関係について書いていきます。

「副業・兼業」には大きく3パターン「副業・兼業の推進」といったところで、大きくみると、「副業・兼業」に

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副業政策のゴールはどこか

副業政策のゴールはどこか

三井物産では、労組が人材戦略を提言し、副業制度につながっており、労働者側からのプレッシャーで副業を解禁するという流れが見られます。

働き方改革以後の副業実施状況働き方改革以降、政府をあげて進めてきた副業推進政策ですが、「副業をやっている人」と「副業希望者」とでは、後者の方が多い状況であり、「やりたいけどできない」という状況になっています。
さらに、働き方改革で、この差は縮まるかと思うと、そうでは

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「副業規制」など存在しない

「副業規制」など存在しない

先日の日経新聞記事に「副業規制」という表現を用いて、希望がありつつも副業を実施できていない人がいるという旨の記事が掲載されていました。

私は、この記事を読んで、内容には違和感はないものの「副業規制」という言葉には、ピクっと反応していまいました。

これまでも私の記事をお読みいただいた方からすれば、繰り返しのような内容になりますが、この記事を受けて、再度「副業規制」とは何なのか、そもそも「規制」は

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副業の相互受入れと健康確保の仕組み構築の必要性

副業の相互受入れと健康確保の仕組み構築の必要性

日立製作所とソニーグループとが、2024年に社員の副業を相互に受け入れるようです。

私は副業推進を肯定的に捉えていますし、副業推進政策を担当していた身としても、ひとまずこうした仕組みの上であれ、副業に肯定的なプラクティスが増えていき、副業に関する実証データが出てくることは重要であろうと思われます。

こうした複数の企業が集まって、その枠内での副業を許容するという仕組みは、これまでも多くみられてき

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いよいよ本格的に動き出すフリーランス政策

いよいよ本格的に動き出すフリーランス政策

アメリカでは、ギグワーカーに企業従業員と同待遇とする旨の規則を発表したようです。

ギグワーカーないしフリーランスに関しては、欧米諸国において立法の議論がされているところであり、世界的にもホットな話題といえるでしょう。

もちろん、日本においても働き方改革以降(厳密には少し前から)フリーランスに関する政策の議論がされてきましたが、フリーランスを競争法の枠組みで保護すべきか、労働者として保護すべきか

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「収入目的の副業はけしからん!」と言えるのか

「収入目的の副業はけしからん!」と言えるのか

昨日の日経新聞に「バラ色ではなかった副業」として、以下の記事が掲載されています。

そこでは、「企業はスキル向上を、働き手は収入増を目的としており、目的にずれがある」旨指摘されています。
この指摘は今になされたものではなく、働き方改革の流れもあり世の中で「副業解禁!」などと言われた時から指摘されているものです。

この点については、私として色々思うところがあり、今回はこの点について書いていきます。

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