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「月が綺麗ですね」と言えるほど、私は月を見てこなかった

「月が明るすぎて、星が見えないのね」 

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「宿の庭からは星がよく見えますよ」

夕暮れ時、そんなお話をお客様に差し上げた。
これは紛れもない事実で、空気の澄みやすい冬の日はもちろん、夏の日でも星がよく見える。

夕方縁側でぼーっとしていると、夜が更けて、あれよあれよと空は暗くなる。その日は雲一つない快晴で、きっと今日も星空が見えると確信したものだった。
しかし、待てど暮らせど、星は出ない。こればかりはなぜか分からなかった。

「月が明るすぎて、星が見えないのね」

とお客様は言う。私は、月明かりで星が見えなくなることを知らなかった。

私が生まれ育ったのは大阪府摂津市。東京の眠らない街に比べれば、確かに夜は暗いといえる。それでも、近くのコンビニは24時間営業していたし、街灯はおおよそ20mごとには整備されていたように思う。
昔、流星群が来ると夜中に近所の公園へ繰り出した。しかし、夜にも関わらず雲の存在が認識できるほど、空は街灯で白んでいる

そんな夜が明るい街で生まれ育った私にとって、月明かりなど常に一定のものだった。無論、星がよく見えないことも当たり前だったし、星をまじまじとみるのはもはやプラネタリウムだったかもしれない。
だからこそ、時折「お、北斗七星」なんていう発見がある毎日の中では、島の生活にどこかまだ慣れ切ってはいない自分を見つけたりもする。

満月は明るい。
いつかの日か、理科の授業で習った事実に驚くばかりだ。

もしかすると、満月の日に星たちは輝くことを休憩しているのだろうか。
これまでの人生で注目することさえなかった煌めく月をみると、少し詩的な気分になってくる。

I love youを「月が綺麗ですね」と訳した夏目漱石が見上げた月は、いま島で見える月にどこか似ているのかもしれない。

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やはり島は本土から離れている分、ほんとに暗いです。
正直、ちょっと怖いくらい。
ただ真っ暗でとても静かだとスーッと落ち着いた気分になれたりもします。

よかったら空を眺めに島にも遊びに来てくださいね。

というわけで本日はこれにて。
ご清読ありがとうございました。

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