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KnightandMist

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たぶん小説になる予定。今書きためているところです。 あらすじ 浪人し、就活も失敗し、あとがない主人公浅霧遥香。 そんなある日、彼女に異変が襲った。 それは今流行りの異世界転生…
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#オリジナル小説

Knight & Mist第十一章-2 見つめ合うふたり

Knight & Mist第十一章-2 見つめ合うふたり

「もう遅いから寝ようよ」
沈黙に耐えかねて言い出したのはハルカのほうだった。

飲み会から帰ったあと、深夜の遅い時間。
キアラとセシルがいろいろと話し合った末、流れでセシルはハルカが好きだと打ち明ける。ハッキリ言ったわけではないが、そういう感じのことを言って、寝たふりを決め込んでいたハルカを起こし、返答を求めたのだった。
曖昧なままでいたいハルカは逃げ腰だ。
だが、どうもそうも言ってはいられないら

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Knight and  Mist-interlude-オーセンティックサイド

Knight and Mist-interlude-オーセンティックサイド

書斎のような部屋に独り坐し、深峰戒は深くため息をついた。

「なんなんだこのクズな世界は!」

力任せに棚を殴り、上に置いてあるものを薙ぎ払う。物が落ちてガシャンガシャン、と音が鳴った。

「私は私の役割を果たしているはずだ! なぜあんな小僧ごときに笑われなければならない……!」

ドサッと椅子に座る戒ことオーセンティック。

その前にすうっと何者かが姿を現した。

「《冥王《ヘルマスター》》」

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Knight and  Mist十章-9騎士と霧

Knight and Mist十章-9騎士と霧

「あなたの気持ちは分かりますが、これはそういうので引き受けるものではないですよ」

もう決定していることに異を唱えることは難しいのでは、そんなことを考えながら、ハルカはセシルを見た。

勇者だけが入れると噂のバー《キタフィー亭》にて。

目の前には鴨鍋が煮えていて良い香り。おだしといとこんとネギのハーモニー。

だがおあずけをくらって話題はハルカが魔導の力を得るかどうか。

そう、魔導師になれるの

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Knight and  Mist第十章-8鴨鍋と魔導師ライセンス

Knight and Mist第十章-8鴨鍋と魔導師ライセンス

そこでカンカンカンカーンとグラスを叩く音がする。それまで思い思いに喋っていたみんなが静まり、グツグツと鍋が煮える音だけが聞こえる。

知る人ぞ知るバー《キタフィー亭》にて。

でかいテーブルにスループレイナの姫とその婚約者、スループレイナの大貴族3人、勇者、レティシアとスコッティ、デシールの女将軍イーディス、そしてセシルとハルカが座っている。

全員がなんだろう、とグラスを鳴らした宮廷楽師イスカゼ

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Knight and  Mist第十章-7 《キタフィー亭》

Knight and Mist第十章-7 《キタフィー亭》

「さあ、カンパーイ!」

そこは王都下町情緒あふれるとある居酒屋。その名も《キタフィー亭》。店主のキタフィーさんは温厚そうな金髪のお姉さんで、とても感じが良い。店内には武具がかけてあって、客はいなかった。

この居酒屋、なんと勇者だけがこの酒場に入れるのだという。

とういうのもどうやらこの店主さん、キタフィーというのは仮名で本当はベアトリクスという名の勇者だという噂がある、とアザナルがハルカに教

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Knight and  Mist第九章-9拷問部屋で

Knight and Mist第九章-9拷問部屋で

拷問部屋は鼻や目にツンとくるような異臭と汚臭がして、吐き気を催した。

鉄錆のおぞましい器具の数々、吊し上げるための滑車のついた装置、小さな檻、鉄の棘がついたなんだかよく分からないもの、トラバサミのようなもの……それらが血をかぶって存在していた。

そんななか、ロープで天井からぶら下げられ、気絶しているらしいセシルを発見した。

背中は皮膚が裂けていた。何がおこなわれたのか、ハルカにはさっぱり分か

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Knight and  Mist第九章-8 囚われの螺旋

Knight and Mist第九章-8 囚われの螺旋

衛兵から服を拝借し、代わりにキラキラマントを着せて。

「よし、準備はいいぞ。上だ」

衛兵姿のスコッティとともに階段方面へ大股で歩き出す。

何やらアンディが大声で騒いでいるのが聞こえる。周囲がなだめ慌てているようだ。

「アンドレア嬢、なかなかの役者じゃないか。この役は彼女にしかできないな」

スコッティが苦笑まじりに言う。ハルカも同意する。

「アンディが助けてくれてよかった。あとはイスカゼ

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Knight and  Mist第九章-7人生はやりたくないことでできている

Knight and Mist第九章-7人生はやりたくないことでできている

「魔導ではない魔術は初めて見たわ。オーセンティックとかいう無礼者、跡形もなくってよ」

アンディが関心したように床の焦げを踏みにじりながら言った。イーディスとレティシアは苦笑い。

「今後はあなたたちのような攻撃にも動じない結界を作らなくてはね。三階分登っての奇襲とは、また無茶な作戦だわ。お里が知れるとはこのこと」

「まあ、うまくいったんならいいじゃねーか」

適当に答えるイーディス。一方レティ

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Knight and  Mist第九章-6オーセンティックは企むのがお好き

Knight and Mist第九章-6オーセンティックは企むのがお好き

「申し遅れました、私、異端審問院・特別顧問のオーセンティックと申す者。以後お見知りおきを」

オーセンティック、日本人名は深峰戒。どういうわけか魔族の権能を得てオーセンティックと名乗っている。

対するアンディは、扇で顔を隠してしまった。そっぽを向きガン無視体制だ。

「姫君、これはどういうーー」

少し戸惑うオーセンティック。

「私が答えましょう」

言って前に出たのは、キラキラマント一団の隊

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Knight and  Mist第九章-5ミッションスタート

Knight and Mist第九章-5ミッションスタート

「それで、どういうことですの!!」

来るなりアンディは応接間のテーブルにバン! と両手を叩きつけた。

異端審問院の代表として現れたのはおかっぱ頭の男であった。

「どういうこととはどういうことでしょう。我ら侍従一族が王家を、ひいてはイスカゼーレ、そして国を守るためにしていることですが」

おかっぱ頭の男は特に感情のこもらない言葉で答えた。

「だから、たかが召使い風情がなんでそんな偉そうなのか

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Knight and  Mist第九章-4みっしょんいんぽっしぶる?

Knight and Mist第九章-4みっしょんいんぽっしぶる?

「あらためて見上げるとデカい建物ね……」

「建物っていうか、塔だな……」

ハルカとスコッティが見上げて口々に言った。

「このどこにいるんだろう?」

「塔の地図はイスカゼーレから入手した。あとは上手くいくかだな……」

そして見るキラキラマントの一団。

ちなみにスコッティもキラキラマントを羽織っている。ハルカはアンディから借りたガチの貴族のお姫様ルック。

「いいか、我々はモンド様の遣いで

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Knight and  Mist第九章-3 作戦会議

Knight and Mist第九章-3 作戦会議

「そういうわけで。王家の立場としては、セシルが元テネブラエの一員で、情報と引き換えに無罪放免にしたーーこの取引のことを異端審問院に知られたくないの。たまにきなくさいところに潜入捜査もしてもらってるから」

アザナルが慎重に言った。

「逆に言うと、異端審問院から見ればきなくさいはなしだらけの男ってなわけだ。あのクソ野郎は」

イーディスがふーん、と足を組みソファにもたれかかり腕を頭の後ろで組んだ。

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Knight and  Mist第八章-12 魔の都

Knight and Mist第八章-12 魔の都

「モンドのダンナぁ! 大変だ!」

モンド・デ=ラ=モンロー、スループレイナ大貴族のお屋敷の客間にて。

再会を喜びつつひととおり話が終わったころだ。

突如息を切らしながら、クール・シトラスがやって来た。

「すまねえダンナ、とにかく大変なんだーー」

言い切らないうちに、キラキラマントのイケメン、クール・シトラスが扉ずたいに崩れ落ち、その裏からずずい、と現れた人影がある。

「あーら、イスカゼ

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Knight and  Mist第八章-9 王都に吹く風

Knight and Mist第八章-9 王都に吹く風

「そこまでだ!」

マンホールのようなところから顔を覗かせた途端、複数の槍がつきつけられた。

イーディスとハルカは肩をすくめて手をあげる。

「だから言ったじゃねーかトンチンカン! せめて城から出るくらいは距離を取ってから地下水道から上がろうって! バカ! マヌケ!」

「どこから地上に出たって一緒でしょ! 門の外に出ちゃったらまた入れなくて困るだけだし! なら一番手前でいいのよ!」

「厳重に

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