星名ろびん

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星名ろびん

戦闘描写大好きマン。現在『Knight and Mist』を執筆中 更新のお知らせはこちらでTwitter:@hoshinarobin/ https://twitter.com/hoshinarobin/status/1333834251481931776?s=21

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  • KnightandMist

    たぶん小説になる予定。今書きためているところです。 あらすじ 浪人し、就活も失敗し、あとがない主人公浅霧遥香。 そんなある日、彼女に異変が襲った。 それは今流行りの異世界転生なのか? それともただ頭がおかしくなったのか? たどり着いた世界は黒歴史。 ちゅうがくにねんせいのときに書いた物語の世界。 そこで遥香が出会ったものとはーー?

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Knight & Mist 序章

序章 ここに一人の女がいる。 アイデンティティという妄想に囚われた女だ。 我々は答えを知っているだろう。 "自分探しはまやかしで、無駄である"と。 彼女は違う答えを持っていた。 "自分はいつも断崖絶壁の淵に立っていて、海風に吹きさらされている。いつ落ちてもおかしくない" 彼女はいつも思う。 "ただ、それよりも怖いのは" "いつまでその絶壁に立っていようと思えるだろう。気を抜くだけで落下できる。そうしたらわたしは狂気におちて、ただ嗤っていられる" そして女は

    • Knight and Mist第十一章-3 朝食の味がしない

      その後、疲れ切ったハルカはベッドに横になり、ぐーぐーとよく寝た。 翌朝目を覚ますと、陽光が眩しい。 午後の陽気、鳥の声がする。 ちょっと寝過ぎたようだ。 ベッドに倒れ込んでそのまま寝てしまった気がするが、起きた時にはちゃんと布団のなかにおさまっていたから、おそらくセシルが布団をかけてくれたんだろうと思った。 窓を開けたのもたぶんセシルだ。 こういうちょっとしたことが、本当はすごく嬉しいのだと、ぼんやりしながらハルカは考えた。 セシルの言う通り、今のまま安心していられた

      • Knight & Mist第十一章-2 見つめ合うふたり

        「もう遅いから寝ようよ」 沈黙に耐えかねて言い出したのはハルカのほうだった。 飲み会から帰ったあと、深夜の遅い時間。 キアラとセシルがいろいろと話し合った末、流れでセシルはハルカが好きだと打ち明ける。ハッキリ言ったわけではないが、そういう感じのことを言って、寝たふりを決め込んでいたハルカを起こし、返答を求めたのだった。 曖昧なままでいたいハルカは逃げ腰だ。 だが、どうもそうも言ってはいられないらしい。 いったん寝て仕切り直そうと言うハルカにセシルは首を横に振った。 セシル

        • Knight & Mist第十一章-1 夜中の訪問者

          ハルカは目が覚めた。 昨晩のことを思い出して赤面する。 昨日の夜、あのあと。 さまざまな楽しいことがあったあと、一行と別れセシルと二人で帰ってきた。 しばらく何か話していたような気がするが、そこは記憶が曖昧だ。 気づいたのは、夜中に戸を叩く音だった。 ハルカはいつの間にか長椅子で居眠りしていたらしく、ハッとして目を覚ました。 寝ている間にセシルが羽織ものをかぶせていてくれたらしい。安心するにおいがする。 セシルが戸のところでボソボソ話して、夜中の客人を部屋に通した。

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        Knight & Mist 序章

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        記事

          Knight and Mist-interlude-オーセンティックサイド

          書斎のような部屋に独り坐し、深峰戒は深くため息をついた。 「なんなんだこのクズな世界は!」 力任せに棚を殴り、上に置いてあるものを薙ぎ払う。物が落ちてガシャンガシャン、と音が鳴った。 「私は私の役割を果たしているはずだ! なぜあんな小僧ごときに笑われなければならない……!」 ドサッと椅子に座る戒ことオーセンティック。 その前にすうっと何者かが姿を現した。 「《冥王《ヘルマスター》》」 出てきたのは下半身が蛇の女だった。 「お前は混乱しているね。もう何が何だか分

          Knight and Mist-interlude-オーセンティックサイド

          Knight and Mist十章-9騎士と霧

          「あなたの気持ちは分かりますが、これはそういうので引き受けるものではないですよ」 もう決定していることに異を唱えることは難しいのでは、そんなことを考えながら、ハルカはセシルを見た。 勇者だけが入れると噂のバー《キタフィー亭》にて。 目の前には鴨鍋が煮えていて良い香り。おだしといとこんとネギのハーモニー。 だがおあずけをくらって話題はハルカが魔導の力を得るかどうか。 そう、魔導師になれるのである。しかも正式な。 その代わり、七割の確率で魔導の神に殺されてしまう。

          Knight and Mist十章-9騎士と霧

          Knight and Mist第十章-8鴨鍋と魔導師ライセンス

          そこでカンカンカンカーンとグラスを叩く音がする。それまで思い思いに喋っていたみんなが静まり、グツグツと鍋が煮える音だけが聞こえる。 知る人ぞ知るバー《キタフィー亭》にて。 でかいテーブルにスループレイナの姫とその婚約者、スループレイナの大貴族3人、勇者、レティシアとスコッティ、デシールの女将軍イーディス、そしてセシルとハルカが座っている。 全員がなんだろう、とグラスを鳴らした宮廷楽師イスカゼーレ家の姫、アザナルをみた。 「えっとね」 彼女はグルッとまわりを見回して言

          Knight and Mist第十章-8鴨鍋と魔導師ライセンス

          Knight and Mist第十章-7 《キタフィー亭》

          「さあ、カンパーイ!」 そこは王都下町情緒あふれるとある居酒屋。その名も《キタフィー亭》。店主のキタフィーさんは温厚そうな金髪のお姉さんで、とても感じが良い。店内には武具がかけてあって、客はいなかった。 この居酒屋、なんと勇者だけがこの酒場に入れるのだという。 とういうのもどうやらこの店主さん、キタフィーというのは仮名で本当はベアトリクスという名の勇者だという噂がある、とアザナルがハルカに教えてくれた。 モンドが自分は入れるのか不安がったが、キタフィーは温かく迎えてく

          Knight and Mist第十章-7 《キタフィー亭》

          Knight and Mist第十章-6 ほんとうのこと 異世界(げんじつ)

          「待て、待て、落ち着こう。いくらなんでも話が飛びすぎる。まずは絆のはなしから教えてくれない?」 セシルの眼差しひとつでドキドキしながら、ハルカは言った。 「この絆ってなんなの? セシルはいつから気づいてたの?」 露天風呂にて。美味しいものを堪能しつつ、セシルとハルカは微妙に距離をあけて座っていた。 温泉でのぼせそうなのか、セシルの発言でのぼせそうなのかハルカ自身分からなかった。 「僕はーー俺は、奴隷として売られた頃にハルカの声が聞こえはじめた」 セシルがぽつりぽつ

          Knight and Mist第十章-6 ほんとうのこと 異世界(げんじつ)

          Knight and Mist第十章-5 遠くの笑い声

          「声かけられたからあえて言うけど……露天風呂でイチャコラしくさって! でもあんたもさ、大怪我したんだから見逃してあげてたわけ! 邪魔はしないわよ!」 イスカゼーレの姫、アザナルが言った。どうやら通りがかっただけでセシルに咎められたことを不服に思っているようだ。 考えてみれば、露天風呂でハルカとセシルふたり、聞きたいことがあるからだとはいえ、まわりからしたらイチャついていると思われても仕方ない。実際に否定もしきれない。 (さっきのアレーー) アザナルが通りがからなかった

          Knight and Mist第十章-5 遠くの笑い声

          Knight and Mist第十章-4露天風呂とデザート

          「はい、どうぞ。限定ジェラートとソルベとあとジュース。あとフルーツ盛りだくさんプレートはここに置いておきますから適当につまんでください」 何やら名前から豪華そうなものを次々手渡され、セシルが露天風呂に入ってきた。すでに露天風呂に浸かっていたハルカの横に座り、セシルは伸びをする。 ハルカはその横でジェラートを頬張る。温泉に入りながらのジェラートは格別である。溶けて口の中に残るフルーツの味。まさに至高。 だがーー 「で、そもそも、どういう経緯で露天風呂の魅力に気づいたの?

          Knight and Mist第十章-4露天風呂とデザート

          Knight and Mist第十章-3 お姫様と婚約者

          あらためてミルフィとリキと挨拶をする。おんぶされたままで。 「上からごめんなさい」 ハルカが頭を下げると、ミルフィはニッコリ微笑んだ。 「頭が高いわよ♡」 「…………」 ちょっと可愛く言っているがおおよそアンディと同じ感じだ。 危険を感じ、ハルカは無言でセシルの背の裏に隠れた。そういえばセシルからいい香りがする。たぶん乳香か何かだろう。 それから、セシルの陰から二人を観察する。 ミルフィ王女は大きな瞳に長い黒髪をひとつにたばねている。その髪は真っ直ぐで、光によ

          Knight and Mist第十章-3 お姫様と婚約者

          Knight and Mist第十章-2湯けむりファンタジー風呂

          「わーい! 温泉、温泉!」 王都でも一番大きな広場に面した温泉を前にして、テンションが上がるハルカとキアラ。 それは大理石でできたテーマパークのようで、完全にレジャー施設。たぶん古代ローマ帝国のテルマエみたいなものなのだろう。 王都は水道もちゃんとしてるし、水洗トイレだし、みんな風呂好きで清潔なので現代人のハルカにとってはありがたいことであった。 そしてこの温泉。現代で言うところの水着を着てサンダルを履いて歩き回るようだ。その辺は温泉というよりもプールランドみたいな感

          Knight and Mist第十章-2湯けむりファンタジー風呂

          Knight and Mist第十章-1温泉に行きたい

          「一個だけお願いを聞いてください」 ベッドのなかでセシルがまたワガママを言い始めた。 そこは都の広場近くにある気持ちの良い部屋だった。とある貴族の持ち物で、市中に出るときに使う洋館である。 今は持ち主は領地におり不在で、使わせてもらっている状態である。 清潔な布団に清潔なベッド。窓からの風景は美しく、王都の街並みが一望でき、良い薫りの風が吹き込んでくる。どこからか鐘の音がする。 あのあと。レティシアの力で姿を隠し塔を脱出。客間はモンドの登場でさらに荒れていたらしい。

          Knight and Mist第十章-1温泉に行きたい

          Knight and Mist第九章-9拷問部屋で

          拷問部屋は鼻や目にツンとくるような異臭と汚臭がして、吐き気を催した。 鉄錆のおぞましい器具の数々、吊し上げるための滑車のついた装置、小さな檻、鉄の棘がついたなんだかよく分からないもの、トラバサミのようなもの……それらが血をかぶって存在していた。 そんななか、ロープで天井からぶら下げられ、気絶しているらしいセシルを発見した。 背中は皮膚が裂けていた。何がおこなわれたのか、ハルカにはさっぱり分からなかった。 「ここは俺様に任せな」 それで言葉をなくしているハルカに代わり

          Knight and Mist第九章-9拷問部屋で

          Knight and Mist第九章-8 囚われの螺旋

          衛兵から服を拝借し、代わりにキラキラマントを着せて。 「よし、準備はいいぞ。上だ」 衛兵姿のスコッティとともに階段方面へ大股で歩き出す。 何やらアンディが大声で騒いでいるのが聞こえる。周囲がなだめ慌てているようだ。 「アンドレア嬢、なかなかの役者じゃないか。この役は彼女にしかできないな」 スコッティが苦笑まじりに言う。ハルカも同意する。 「アンディが助けてくれてよかった。あとはイスカゼーレから入手した塔の地図が正確であることを祈るばかりね」 「大丈夫、構造は頭に

          Knight and Mist第九章-8 囚われの螺旋