Knight & Mist 序章
序章
ここに一人の女がいる。
アイデンティティという妄想に囚われた女だ。
我々は答えを知っているだろう。
"自分探しはまやかしで、無駄である"と。
彼女は違う答えを持っていた。
"自分はいつも断崖絶壁の淵に立っていて、海風に吹きさらされている。いつ落ちてもおかしくない"
彼女はいつも思う。
"ただ、それよりも怖いのは"
"いつまでその絶壁に立っていようと思えるだろう。気を抜くだけで落下できる。そうしたらわたしは狂気におちて、ただ嗤っていられる"
そして女は考える。
"わたしを手放せばわたしは狂気に吸い込まれる。わたしとはなんなのだろうか"
女の名前は、ーーーーーといった。
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