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#小説
Knight and Mist第七章-3イスカゼーレの闇
ハルカが気づいた時には、手術台のようなものの上にのせられていた。
何本ものコードが地を這うようにして散乱している。
ふと、魔霧の中で見た光景がよぎる。
心臓に杭を突き立てていた女ーー
今台にのせられて、手首と足首をベルトで固定されているのはハルカだ。
薄暗く、部屋の真ん中に放たれた光球が唯一の光源だった。
周囲は清掃が行き届いているようだが、物騒なものがたくさん置いてあった。
手動の
Knight and Mist六章-7 旅と野宿
「とにかく、スループレイナの王都に来てもらうから!」
アザナルの言葉で目が覚め、ハルカは周囲を見渡した。
イーディスも異論はないらしく、ハルカとイーディスはアザナルとキアラについて王都に赴くこととなった。
その晩は山小屋で休み、翌朝出発。
三日ほどの道のりということだ。
翌日起きると、霜がおりたようでハルカはブルっと震えた。
外は銀世界で、相変わらず足元は最悪だった。昨日溶けた雪が凍っ
Knight and Mist六章-5悪夢は続くよどこまでも?
「ま、待ってくれー!!」
ヒイヒイ言いながらハルカは前方50メートルほどのところを歩くイーディスとキアラに声をかける。アザナルに至ってはもっと遠くにいる。
場所はどこともしれぬ森の中。大剣を背負い、いかにも騎士な格好をしている少女イーディス、勇者であるが格好が変な男キアラ、そしてスループレイナ王家の懐刀イスカゼーレ家のお姫様アザナル。
そのアザナルがもっとも山道に慣れているようであった。
Knight and Mist第六章-4絶対的に変わらないもの
「おーい!!」
ぜえぜえと息を荒くして走ってきたのはなんとも奇妙な格好をした男である。
見た瞬間、イーディスの顔がひきつる。ハルカの顔もひきつる。
その男は中肉中背で長い茶髪。服装はヘッドバンドについたアンテナのような葉っぱ、裾がバサバサになっていてあちこちに葉っぱが縫い付けられている変なデザインのマント、腰には剣といったいでたち。
緑色の目をした人の良さそうな顔をした男で、歳の頃はアザナ
Knight and Mist第六章-1イスカゼーレ
「どこだぁ!? ここは!?」
イーディスが邪魔な枝を切り払いながら森を進んでいく。
霧が晴れたら、気づけば見知らぬ森に立っていた。針葉樹林に囲まれ、地面にはまだ雪が残っていた。
エルフの森は暖かかった。だいぶ遠くにとばされてしまったらしい。
「これは次元転移で済んだってこと? それとも並行世界とかにきちゃったのかなあ?」
「ったく、そんなことわかんねーよ! ウンチクヤローもいねーしな!」
Knight and Mist第五章-1 ビギナーズガイド
目が覚めたのは、西洋風ヨーロッパ の風景とはまるで違うところだった。
ガサゴソと起き上がると、そこはだだっ広い殺風景な部屋。
そして一人きりだった。
(いったい何が……)
痛みも何もなく、なんだか体が曖昧な感覚。
(たしか、地面を割って突き上げる拳を最後に見てーー普通に考えたら、あれに馬車をやられて、馬車から放り出されたと考えるのが自然かな)
ということは、ここは死後の世界なのか。
Knight and Mist第三章-7 大いなるもの
グレートマザーにグリフォンの羽根をあずけ。
不安な気持ちのまま一夜明けて。
ハルカたちは素晴らしい朝食を振る舞われたあと、エルフたちに囲まれて、例の大樹のある広場に集まっていた。
緊張感ただよう空気。
とげとげしい視線と、ハラハラ見守る視線がエルフたちのあいだで行き交う。
特にヒッポグリフを盗もうとしたスループレイナの貴族が出てきたときは、一層とげとげしいものとなった。
だが敵視されて
Knight and Mist第4章-6 ふたたび湖畔にて
ーー虫の声。
ふう、と息をつく。
「いったいなんなのーー」
ひとり湖畔に立ち、ポツポツ灯る不思議な灯りを眺める。
熱気から解放され、気持ちの良い風が渡っていく。
「ずいぶんと気に入られたようですね」
背後から草を踏み分ける音とともに近づいてくる声があった。
ハルカはパッと振り返った。
「セシル! 探したんだからね!」
「寂しかったですか?」
ニコッとするセシルに、
「ひとあし
Knight and Mist第三章-5 長老のはた迷惑な観光案内
「そして賢者イグノークがこの大広間を訪ね、ここを『大きな図書館とする』と言ったのだ。彼にはその限りなく美しき図書館の姿が見えていた……まだ見ぬ図書館の完全な姿がな。彼は歴史家でもあった。彼はエルフで1番の彫刻家を選び出し、そしてーー」
「あ! の!」
やっとのことでハルカは長老の止まらない話に割り込んだ。
あれから小一時間ほど。
ハルカは宴に参加するでもなく、エルフの館ツアーに強制参加させ
Knight and Mist三章-4噂のあの人
ーーーー音楽とざわめきが聞こえ、ハルカは目を覚ました。
虫の声と風の音に混ざって人々の笑い声が聞こえて来る。
ずいぶんと寝てしまったらしい。お腹は空いていたが、すぐに宴に出る気にならず、ハルカは湖のほとりの方へと歩いていった。
よい風が吹いていた。
ハルカはその静寂と風を楽しんだ。
「宴にも出ずに湖や森を眺めているとは、そこに世界の神髄をみるからかな? それとも人と距離を置けるからかな?
Knight and Mist三章-3 宴の前のひととき
「では、みなさん移動しましょう」
ブラムは何か用事を言いつけられ、こちらを睨みながら去っていった。
そしてハルカたちはラメール先導のもと、館の中庭を横切り、客間へと案内された。
ラメールの絹の裾が床を擦るさやさやという音が響く。それに伴い樹木が風に揺れて音を立てた。
不思議な感覚だった。
そこは戦いを目的とした砦や城とは違う。
華美というほどではないが、ハルカが今まで見たこともないほど