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Knight and Mist第六章-1イスカゼーレ
「どこだぁ!? ここは!?」
イーディスが邪魔な枝を切り払いながら森を進んでいく。
霧が晴れたら、気づけば見知らぬ森に立っていた。針葉樹林に囲まれ、地面にはまだ雪が残っていた。
エルフの森は暖かかった。だいぶ遠くにとばされてしまったらしい。
「これは次元転移で済んだってこと? それとも並行世界とかにきちゃったのかなあ?」
「ったく、そんなことわかんねーよ! ウンチクヤローもいねーしな!」
「ウンチクヤローってセシルのこと?」
「ほかに誰がいるかよ」
はあーっとため息をついて、イーディスは剣を地面に突き立て、地面に座り込んだ。
「やめだやめ、いったん休み! 無事なのは俺様とハルカだな。ウンチクヤローと聖女様は行方不明、と……」
「霧の中で見たのって心象風景だって言ってたよね。わたしのみた風景、電話ボックスとか、この世界にないものだよね?」
「デンワボックス? まあさ、魔族の言うことはあまり間に受けないほうがいいぞ。それよりここがどこか、だ」
「うーん、ちゃんと同じ世界線なのかなあ?」
「それはそう願うしかねえな……いや、合ってるぜ、ハルカ。ここは同じ世界線だ」
不敵に笑み、イーディスが剣を構えた。
「出てきやがった。スループレイナの狗、イスカゼーレだ」
ハルカがキョロキョロしていると、周囲から五人ほど、面を被った不気味な人たちが現れた。
イスカゼーレ、スループレイナの諜報機関。
セシルの所属しているところであり、同時に彼によるとハルカの正体がバレるとまずいらしい、そんな相手。
「おおかた時空の歪みを察知したとかそういうやつか。揃いも揃って陰気な奴らだねえ、まったく。あーやだやだ」
軽口を叩くイーディスのこめかみに汗がひとすじ。
イスカゼーレは何も言わずにじりじりと近寄ってくるだけだ。
と、その瞬間。
イスカゼーレが何か仕掛けようと口を開きーー
ーー同時にイーディスがひらりと一回転する。
ごうっという音とともに炎が舞い散り、衝撃波で半径数メートルの樹木がのきなみ倒れる。
「どうよ、俺の《メテオラ》の味は」
しかし、イスカゼーレの人間は誰一人倒れていない。
シールドをはっているような人が口を開いた。
「たかが西の小国で鳴らしているだけの野蛮な人間が我々に楯突こうなど笑止千万」
「挑発したいんだろうが、あいにくだな。それこそ戦争を知らねー生っちょろいボンクラたちと俺様を比べんなって話だぜ。ほら、いくらでもかかってこいよ!」
その声を合図に、イスカゼーレの人間が一斉に飛びかかり、そして戦闘がはじまった。
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