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【連載】東京アビシニアン

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これは、わたしの自伝。 小洒落た、鼻持ちならない、胡散臭めのミステリーが書きたい! お洋服が好き、東京はまだまだ探検中。
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#ミステリー

【連載】東京アビシニアン(1)Roppongi

【連載】東京アビシニアン(1)Roppongi

 ナンパって人生で数多くこなしてきた訳でもなく成功率はフィフティ・フィフティ。ゲーム感覚で挑んでるからほぼ運試しだけど、今日はとりわけツイていた。九月のちょっと気怠い昼下がり。チョコレートブラウンの髪をポニーテールにまとめた彼女の胸元にはクリスタルのネックレスが揺らめき、少し襟を抜いて着たVネックのブラウスと大胆なカッティングのレーススカートが六本木そのものっていう可憐な出で立ちだ。
「お姉さん、

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【連載】東京アビシニアン(2)Jiyugaoka

【連載】東京アビシニアン(2)Jiyugaoka

 海外ブランドの路面店はないけれど、値の張るアンティーク家具やジュエリーを売る店の並ぶこの界隈には、数か月前から怪盗が出没すると噂だった。報道番組はその話題で持ちきりだ。言ってしまえばただの強盗だけど、ガラスは無傷、警報も反応せず、それでいて一級品ばかりをくすねとって、重厚な封蝋をほどこした犯行声明に「頂戴いたします」なんて走り書きをわざわざ遺していく。そんな浪漫をそそる手口から、雑誌やニュースは

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【連載】東京アビシニアン(3)Jiyugaoka

【連載】東京アビシニアン(3)Jiyugaoka

 「奴は変装して現場近くに潜り込み、誰にも怪しまれずに下見をする。決行するのは、きまって月のない晩だ」
はばかりのない週刊誌が聞き集めからつくったモンタージュを載せていた。ほっそりした顎と、少しこけた頬、意志のある大きな瞳は無関心で挑発的だった。呼び名は「怪盗アビシニアン」と相場が決まったようだ。しなやかな四肢と生姜色の毛並みを持った猫の品種だ。
 盗られるものは貴金属が多い。金時計の鎖、オパール

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【連載】東京アビシニアン(4) Jiyugaoka

【連載】東京アビシニアン(4) Jiyugaoka

 目的の商店に向かう前に、周音は気ままな店舗街をぶらぶら歩いた。広い間口の平屋建てが多い。アパート通りから駅の近くまで緩やかに移行する道のりには洋品店やドーナッツショップ、北欧家具の展示場なんかが並んでいた。一点もの、じゃなくて一店もののこだわりは外装やのぞきこむインテリアからも感じ取れて、自然と鼻歌が漏れた。お散歩ついでに眺めるのも楽しそう。ガラス張りのディスプレイも、人肌を寄せつけない人工的な

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【連載】東京アビシニアン(5)Kunitachi

【連載】東京アビシニアン(5)Kunitachi

 バスを待つ子供たちが石段のへりに腰かけ、手遊びをしながら歌っている。女の子二人、男の一人の傍らには赤、茶色、黄緑のランドセルが脱ぎ捨ててられていた。きっと午前授業の下校途中。
「はりもとあやの」「あんど」
「もちだこうすけ」
「えー、なんで俺!」
 指の先、間の水搔き。それからまた指の先、間の水搔き。節をつけて名前の文字数をなぞる、昔ながらの恋占いだ。
「アイ、ラブ、ジェー、ケー。アイ、ラブ……

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【連載】東京アビシニアン(10)Jiyugaoka

【連載】東京アビシニアン(10)Jiyugaoka

 怪盗アビシニアンが今週も現れた。ここ三か月で、十件目になる犯行のターゲットとなったのは東銀座の老舗時計店だった。ある朝、店主が出勤してみると、鍵付きのガラスケースに展示してあった年代物の高級時計が忽然と消えている。封蝋つきの置き書きには、優雅な書体でゆとりある声明が綴られていた。
 新聞や雑誌、ネットの記事がこの大胆不敵の犯行を見過ごさないわけがなかった。十件の犯行現場を東京の地図上にプロットし

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