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急性腰痛

急に腰痛が始まり、発症してから1ケ月以内の腰痛を「急性腰痛」といいます。

急性腰痛の中には、急激に発症した強い腰痛を「ぎっくり腰」といいます。

つまり、急性腰痛には痛みの強さの程度(重症度)があります。

発症してから1~3ヶ月までの腰痛を「亜急性腰痛」といいます。

ぎっくり腰、亜急性腰痛は、医学的には急性腰痛といわれることが多いため、これらを急性腰痛としています。

一般的に急性腰痛は、腰痛の経過は良くなりますが、痛みを放置して残してしまったり、対処がおろそかになると慢性化する可能性があります。

そういった意味から、急性腰痛についての知識や対処法を知っておく必要があります。

腰痛が慢性化しないためにも、是非参考にして頂ければと思います。

今回は、急性腰痛について解説させて頂きます。


1.急性腰痛が起こる要因


急性腰痛の主な原因は、長時間での中腰、長時間での同じ体勢、不良姿勢、急激な運動やトレーニング、運動不足、体幹の柔軟性の低下、体幹の筋力低下などが考えられます。

基本的には、腰まわりに負荷がかかることが急性腰痛の原因になりますが、知らず知らずの腰まわりの負荷の蓄積により、突然起こることもあります。


2.急性腰痛の病態


急性腰痛が起こる病態の多くは、筋・筋膜、椎間関節、椎間板、仙腸関節が原因です。

これらは、いわゆる非特異的腰痛といわれています。


筋・筋膜性腰痛


急性腰痛は腰まわりの筋・筋膜で起こりますが、とくに起こりやすい筋・筋膜は以下になります。

① 脊柱起立筋

② 腸腰筋

③ 腰方形筋

④ 多裂筋

⑤ 胸腰筋膜・広背筋・大殿筋

⑥ 殿筋群

⑦ 腹筋群


これらの筋・筋膜が損傷したり、血行不良により酸欠になると癒着が起こり、腰痛が発症すると考えられています。

一般的には、筋・筋膜が伸ばされると腰痛が生じます。


椎間関節性腰痛


腰椎の左右1つずつある椎間関節の関節包に腰痛が起こります。

とくに背骨の一番下にある第4腰椎、第5腰椎に多く起こります。

一般的には、腰を反ったり、側屈する動作で腰痛が生じます。


椎間板性腰痛


椎間板が過度に圧迫されたり、捻られたりすると、外側の線維輪が傷ついて腰痛が起こると考えられています。

線維輪の外側のみに神経や血管があるため、痛みを起こすといわれています。

一般的には、腰を前屈した時に腰痛が生じます。



仙腸関節性腰痛


仙腸関節は、仙骨と腸骨との関節で関節包に腰痛が起こります。

一般的には、腰のどの動作でも腰痛が再現し、とくに座ってから立ち上がる、寝ていて起き上がった時の動作で腰痛が生じることが多いです。



実際は、これらの病態が1つだけの原因ではなく、いくつか絡み合って急性腰痛が起こることが多いです。


3.ぎっくり腰


冒頭でも書きましたが、急性腰痛には痛みの程度(重症度)があります。

その中でぎっくり腰は、一般的に急性腰痛の中で痛みの程度が強い状態で、「腰がぬけた」と表現することがあります。

私の経験上では、突然急激に起こることもあれば、腰に徐々に違和感があって突然起こることもあります。

体を起こせななく立てないケース、体は起こせるが腰が伸びなく前かがみで歩いているケース、体の前かがみができなく伸びたままの歩いているケースなど様々あります。

ほとんどが腰まわりの筋・筋膜の原因のことが多いです。

当院の傾向では、春先の4~5月や秋の10~11月にぎっくり腰の来院頻度が多く、季節の変わり目で寒暖差がある時期に多いです。

これはおそらく、自律神経のバランスが崩れやすい時期に多く起こることが考えられます。

ぎっくり腰は、一般的に1週間以内の改善率は約50%、1ヶ月以内の改善率は約90%の確率で良くなっていくといわれています。


① 70歳以上のぎっくり腰には注意


70歳以上の高齢の方がぎっくり腰で来院されたら、注意が必要となります。

なぜなら、椎体の圧迫骨折(背骨の圧迫骨折)を疑うからです。

典型的な椎体の圧迫骨折は、お尻を強く打って発症するのですが、一般的に骨粗鬆症ぎみの高齢の方の場合、骨が弱くなっていることがあるため、ぎっくり腰を発症するような動作で椎体の圧迫骨折が起こることがあります。

骨粗鬆症自体は自覚症状がないため、実際は椎体の圧迫骨折があって、はじめて骨粗鬆症と病院で言われる高齢の方がほとんどです。

また骨粗鬆症がひどいと、気づいたら背骨が丸くなって椎体の圧迫骨折を起こしている高齢の方もいて、これを「いつの間にか骨折」といいます。

ぎっくり腰での椎体の圧迫骨折では、負傷して約1週間ぐらいはレントゲン検査で異常を示さないことが多く、MRI検査が必要になることが多いです。

しかしながら、一般の整形外科クリニックではレントゲン検査しかないところが多く、椎体の圧迫骨折を見逃されてしまうことがあります。

実際、当院での高齢の患者様(74歳.女性)の症例ですが、整形外科に通院して最初はレントゲンに異常がなく、腰の激痛が4週間変わらないということで当院を来院しました。

その時、私は椎体の圧迫骨折を疑ったため、もう一度最初の整形外科を受診してくださいとその患者様に伝え、その結果、レントゲン検査で椎体の圧迫骨折が認められました。

近年は高齢化社会のため、今後はこういった椎体の圧迫骨折の方が増えてくることが予想されます。

高齢者のぎっくり腰には十分に気をつけてください。


② ぎっくり腰がヘルニア❓


ぎっくり腰で発症した時に、実は腰椎椎間板ヘルニアということがあります!

腰椎椎間板ヘルニアの場合、一般的には左右片側に坐骨神経痛の強い痛みがあり、痛みのためにびっこを引いて歩いている(跛行)ことが多くみられます。

整形外科でMRI検査を受けて、症状と画像検査が一致した場合、腰椎椎間板ヘルニアとなります。

ちなみに、レントゲン検査では腰椎椎間板ヘルニアはわかりません!

腰椎椎間板ヘルニアの詳しい内容は、別のnoteで解説させて頂きます。


4.急性腰痛の対処法


急性腰痛での対処法について、科学的根拠に基いて解説させて頂きます。


① 安静よりも活動性の維持が大事❓


非特異的腰痛での急性腰痛には、安静よりも活動性の維持のほうが結果が良いとされています。

つまり、急性腰痛で安静にしているよりも、日常生活で動いている方が良くなるのが早いということです。

これは、痛みおよび機能面に優れていたという医学的根拠があります。

しかしながら、どうしても動いたり、立ったリすると辛いという場合は、できるだけ安静は2日までとしてください。

2日以上の安静は、筋肉や関節が硬くなったり、血行が悪くなったりしてしまい、痛みの悪循環の方向になってしまうためだからです。

私がぎっくり腰を起こした経験では、歩くと痛みが出るくらいの腰痛だったのですが、痛みあっても歩き続けた結果、歩いているうちに痛みが軽減しました。

安静よりも活動性の維持が大事ということは、身をもってわかりました(笑)


② 腰のコルセットは有用❓


腰のコルセットは、体幹部をサポートし、体幹の安定性が増すものです。

だからといって、痛みに効果があるかというとそうではありません!

痛みに効果があるのかはケースバイケースで、コルセットをして痛みが軽減するのであれば装着し、痛みが変わらなければ装着しなくてもよいです。

また、長期間コルセットをすると体幹の筋力が落ちると心配している人もいますが、毎日コルセットを外すことなく常に装着していない限りは、医学的に筋力が落ちることはないとされています。


③ ぎっくり腰を繰り返している人


ぎっくり腰を繰り返している人は、私の中では年に2回以上ぎっくり腰を起こしている人をいいます。

ぎっくり腰自体は施術をすれば良くなるのですが、再びまたぎっくり腰を起こすという・・・

これは、施術だけでは根本的な解決にはなりません!

私の経験上、体幹が不安定となっていると考え、運動をすすめています。
運動といっても、体幹まわりの筋トレが有用のことが多いです。

ジムでマシンを使用すれば、筋トレは効率的にできて良いのですが、ほとんどの人は自宅で自重で行う筋トレをやろうとする人が多いです。

しかし正直、自宅で筋トレをする人はほとんどが3日坊主です。

それだったら、施設に行って筋トレをしたほうがいいと私は考えますが、コロナ禍でもあるので、本人の意思次第ということですね。



以上で急性腰痛について解説させて頂きました。

急性腰痛での施術は様々あり、大体は施術をして良くなることが多いです。

しかし、施術をしてその日で痛みをなくしたい!ということに関しては、病態や個人差がありますので一概にはいえません。

急性腰痛で最も大事なことは、慢性化しないことです。

例えば、痛みを残さずになくなるまで施術をすること、あるいは痛みが残っていたらすぐ施術をすること、痛みを我慢しないことが必要です。

是非、参考にして頂ければと思います。



まとめとポイント

  • 急性腰痛の主な原因は、長時間の中腰、長時間での同じ体勢、不良姿勢、急激な運動やトレーニング、運動不足、体幹の柔軟性低下、体幹の筋力低下

  • 急性腰痛の病態は、筋・筋膜性、椎間関節性、椎間板性、仙腸関節性が多い

  • 一般的なぎっくり腰の改善率は、1週間以内で約50%、1ヶ月以内で約90%といわれている

  • 70歳以上のぎっくり腰は、椎体の圧迫骨折のことがあるので注意

  • 急性腰痛は、安静にしているより日常生活で活動維持しているほうが改善率が高い

  • 急性腰痛での腰のコルセットは、体幹の安定には良いが、痛みに効果があるかは一概にいえない

  • ぎっくり腰を繰り返している人は、体幹の筋トレが効果的なことが多い

  • 急性腰痛で最も重要なことは、慢性化しないこと



参考文献

  • 腰痛診療ガイドライン2019  改訂第2版(南江堂)




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