ヘヴィ・メタルシーンを辿る旅 ver.2 / 様式美の要素:即興演奏とプログレッシブロックの影響 / メタル史:NWOBHM / ドリームシアター、メガデス&アイアンメイデン
ヘヴィメタル2回目です。
まずはこの曲から今回はスタート!
聖飢魔Ⅱ-Battler ~地獄の皇太子(デビュー直後、闇の彼方に行方をくらましていたダミアン浜田陛下が民衆の前に初めて降臨した記念すべきライブです。)
これはなんとも、素晴らしいメタルです。聖飢魔Ⅱは、キワモノとみられがちですが、それは完全に見た目と、デーモン小暮閣下のキャラだけです。音楽的には、とてもまっとうな様式美あふれる正統派メタルなのです。
ヘヴィメタルの構成要素その2:即興演奏とプログレッシブロックの影響からくる長尺の楽曲と、テクニカル嗜好
メタルの重要な様式美の構成要素のうち、今回は以下についてご紹介します
・即興演奏の美学(インプロヴィゼーション)
ロックの深化の歴史の中で、60年代後半から70年代(71年くらい?)までの数年間で、繰り広げられていたのが即興演奏の世界。
これは、エリッククラプトンの在籍していたクリームというバンドが有名です。数分の曲がライブでは何十分にもなっていたという。
これはよく考えるとジャズと同じですよね。楽譜のない、、というか楽譜に忠実では無い音楽といいますか。楽譜に忠実なジャズは、つまらない(つまり、スイングしない)ことが多いかもしれません。メロディをなぞりつつ、崩して崩して、アバンギャルドに崩壊しかけているかのように見せて、またメロディに戻ってくる。。
個人的なオールタイムベストに入る、キース・ジャレットの「ケルンコンサート」。これも実は即興だったことがわかっています。
この即興を追い求めていった結果が、フリージャズの勃興ともつながりまして、まさに自由奔放。金管楽器が叫び、うなり、時折、演奏する人間も吠える。
ただ、このフリージャズも即興演奏も、ある程度のルールのもとに、なされていたようではありますね。(といっても、初心者には騒音にしか聞こえないと思います)。。
つまり、即興とは、何物にも縛られない、、、天上天下唯我独尊とは言いすぎかもしれませんが、まさに自由を求めた60年代~70年代のムーブメントの音楽的な現れといえるでしょうか。
ただ、誰でもできるものではなく、高度な音楽的素養やリーダーシップが求められることは間違いなく。(計算されているがゆえに)。そうでないと本当にただの騒音になってしまいます。
ロックの世界で、この即興(インプロヴィゼーション)をしていた有名なバンドは(超有名ですが)、
エリック・クラプトンのいたクリーム
ジミー・ペイジらのレッド・ツェッペリン
そしてリッチー・ブラックモアが主導権を握った直後のディープ・パープル
クリームの音源を貼っておきます。((↓の動画は、その即興部分を抜粋したもののようです。))
アルバムで聞く場合、ライブアルバムとなりますが、(まあ、実際の即興を全て納めた公式アルバムはあまりないのですけどね。。時間が長すぎて収まらない。。)、、、公式のライブアルバムでも、多少、、ありますねこの手の長尺の音。
ただこれは聞きこもうとしないほうがベターです。ある程度慣れていないと、たぶん疲れますので、。。まずはCDやレコードをかけ流して、聞き流して聞いていただいて、耳を止める瞬間がもしあれば、その曲を深掘りしてみると良いと思います。
さて、こういう流れが70年代ハードロックからのちのヘヴィメタルへの原型となるわけですが、ここに同じ70年代に隆盛を誇ったジャンルが登場してきます。それがプログレッシブロック
・プログレ由来の長尺、かつテクニカルな楽曲の美学
これについては、以前↓にまとめています。
楽曲を聞いていただくとわかりやすいですが、親しみやすいメロディ、超絶技巧による演奏、長尺の構成、そして、、、英国ならではの哀愁に満ちていました。
(英国以外のプログレもありますが、それは哀愁度は低いです。。構成としての様式美はありますが。)
この哀愁の要素が素晴らしく。
たとえば、このジェネシス(フィル・コリンズがドラム担当時代。)もそうですね
Genesis - Selling England by the Pound
なんと、ジョジョのエンディングになっていたYESのこの曲を聴くと、ベースラインとかが超絶であることがわかると思います。
YES - Roundabout
そして、カナダの伝説・ラッシュ。
Rush -2112
2つの要素を取り入れたヘヴィメタル
即興とプログレ風味という、この2つの要素をうまく取り入れていったのがヘヴィメタルだといえると思います。
たとえば、メタルバンドでこの取り入れ方のセンスが抜群な歴史的傑作は、アイアンメイデンのこの曲。
アイアンメイデンのリーダー、ベーシストのスティーブ・ハリス氏は、プログレ、主にジェネシスからの影響を受けているようですね。このヘヴィメタルというジャンルで、プログレの要素を取りいれて、楽曲を構成したのは、おそらくアイアンメイデンが原型と思います。
Iron Maiden - Hallowed Be Thy Name
あとは、この原型に、各グループなりの即興性やテクニックが加味されていて、ヘヴィメタルの様式美の構成要素の一つを形作っていくことになりました。
このドリームシアターは、ラッシュ直結の、いわばプログレッシブメタルと呼ばれるジャンルの最高峰ですね。テクニックも、楽曲も、ボーカルもすごい。中間部のベースソロもたまらないですね。
Dream Theater - Metropolis Pt.1
そして、アメリカに飛び火したメタルの波の影響で、沸き起こったスラッシュメタル界隈も、この複雑な構成で、テクニカルの路線を踏襲。
Megadeth - Holy Wars ... The Punishment Due
テクニカルな路線では、この速弾きギタリストも北欧から出現。この方はリッチー・ブラックモアに憧れており、同じように西洋音階をベースにキーボードをふんだんにつかった、ネオクラシカルというジャンルを生み出しました。
Yngwie Malmsteen- Far Beyond the Sun
さて、今回の最後にはこの曲を。。
この即興・プログレッシブ、テクニカルで複雑・長尺の構成、、、やはりこのバンドもやっておりました。今は廃盤なのでしょうか、30分の大作。
全く長さを感じないですね、、
X JAPANは、以前まとめているように、今回ご紹介したイングヴェイ・マルムスティーンのネオクラシカルの影響が徐々に濃くなっていってますね。
X Japan - Art of Life
ヘヴィメタル・ハードロックの歴史vol.2〜NWOBHM
1970年代後半からそれまでのある意味、テクニカルで、哲学的な思考を持っていたロックに対して、もっと単純に怒りをぶつけたい!というパンクが出現します。
徹底的に単純に騒ぐこの波が古き良きロックバンドをNew Waveの名の下に駆逐してしまいます。
エアロスミスもキッスも、ジューダスプリーストも底辺にいましたし、マイケルシェンカーはUFOを離脱、オジーもブラックサバスから離れることになりました。
60年代の喪失から、70年代は音楽的に大きな成熟を生み出すわけですが、
その一方で、70年代の喪失も生まれており、その喪失したものを愛する人々が英国のアンダーグランドに巣くっていくわけです。
ジャズのセッションのような、プログレッシブロックの複雑な音楽構成とテクニカルな演奏、、アメリカンブルーズの英国流解釈によるハードロックの要素を取り入れた、若者たちが、これらを否定してムーブメントになっていったパンクやニューウェーブをしり目に、ひっそりと英国のアンダーグラウンドな地下社会で産声を上げ、成熟していっていたのでした。
アンダーグラウンドの音楽が成熟し、温度感を増していくと、大きなムーブメントが起きる準備が整います。
かつて、パンクがそうだったように、ニルヴァーナのグランジがそうだったように、、、、
そんな時代、地上、、、つまりメジャーでは活躍が叶わなかった、当時の20代、ティーンエイジャーは、彼等が数年前にききこみ、愛していた音楽をアンダーグラウンドシーンで奏でていました。
このエネルギーは地下に次第に充満していって、その熱量が解き放たれるのを、今か今かと待ち望んでいたわけです。
そこに、この熱量を解き放つ人物(DJのニール・ケイ)が登場。彼が主催するディスコにて、地下に巣食っていた面々が紹介され、これをきっかけとして、膨大な熱量が地上に解き放たれることになりました。
このムーブメントを当時の言葉であるNew Waveに対抗して、古き良き英国ロックの復権という意味合いをここめて、New Wave Of British Heavy Metalと名付けました。(NWOBHM)
このブーム自体は、ブームの定めゆえ、1年ないしは2年で消え去っていきました。
しかし、①まさに古きよき英国ロックの復権、70年代のバンドたちが再度メインストリームに躍り出るきっかけとなりましたし、
②この波が米国に襲いかかり、米国でのハードロックの隆盛へと繋がっていきます(モトリークルー、ボンジョヴィ、ヴァン・ヘイレン、そしてこの流れの果てにガンズアンドローゼスが登場)
③米国ではもう一つの流れとしてこのメタルのツインリードの響きをより攻撃的に取り入れたスラッシュメタルという形式が出現。メタリカ、メガデスはこのブリティッシュメタルの影響を色濃く受けています。
↑メガデスのデイブ・ムステインのいた頃の映像。。伝説すぎて泣けてきますね。
と、ハードロック・ヘヴィメタルに大きな影響を与えたこのムーブメントを支えたバンドたちを紹介します。
プレイングマンティス- Children of the Earth
アイアンメイデンにならぶツインリードの音色が哀愁を帯びています。
Angel Witch
↑のメタリカの動画にて、デイブ・ムステインが、好きなバンドは?との問いに答えているのが、このバンドの名前。
Tank
White Spirit →後にアイアンメイデンに加入するギタリスト、ヤニック・ガーズが在籍してました。
そして、このムーブメントの2大巨頭がアイアンメイデンとデフレパード。
Iron Maiden - Prowler
アイアンメイデンは、プログレ直結の複雑でドラマチックな楽曲に、ストレートなパンキッシュな要素を加味したハードロックを兼ね備えたヘヴィメタルバンドとして登場。攻撃性と抒情性が同居した彼らの音楽性は、甘いヒット曲のニューウェーブや、中身のないパンクに失望していた、いくばくかの若者の心を瞬く間にとらえていきます。
Def Leppard - Ride into the Sun
そして、この項の最後に、メタリカに影響をあたえたこのバンドを紹介いたします。
ダイアモンドヘッド- Am I Evil?
この大きな歴史の節にあたる時期に勃興したムーブメントはその後の影響も鑑みると、永遠にメタル史に残っていくムーブメントだと言えると思います。
1980年代もう一つのメタルの復興
この英国アンダーグラウンドから沸き起こってきた瞬間的なエネルギーの放出によって、古き良きメタルたちもさらに高みに昇っていくことになりました。
以下に挙げる名曲たちは、なんとこの1980年、1981年に産み落とされています。NWOBHMは、こういった副産物ももたらしています。
そして、この楽曲やアルバムは彼等を代表するものでもありました。
まず、鋼鉄の男レミー擁するモーターヘッドは、彼らの歴史上最高傑作となる至宝の名曲を生み出します。
Motorhead- Ace of Spades (1980年)
いや、単純にかっこいい。
御大リッチー・ブラックモアのレインボーは新たなボーカリスト、ジョー・リン・ターナーを加入させポップな方に軸足を移し、この曲を世に送り出します。
Rainbow- Spotlight Kid (1981年)
さらに、UFOが70年代末にその推進力を失って不時着したのを境に地上に降りでたギタリスト、マイケル・シェンカーはソロプロジェクトを始動。
このファーストは永遠の名盤。
MSG(マイケルシェンカーグループ)– Armed and Ready(1980年)
そして、このメタルのアイコンを作り上げたバンドも、なまっちょろい音楽を打ち破れと言わんばかりに、1980年に復活を遂げます。
Judas Priest - Breaking the Law(1980年)
ブルージーなブリティッシュブルーズのホワイトスネイクスも彼等史上に残る楽曲を発表。
この曲はブリティッシュブルーズを代表する曲ですね。
Whitesnake- Fool For Your Loving(1980年)
最後に、、、伝説のヘヴィ級メタルバンド、ブラックサバスを意にそぐわぬ形で脱退したオジー・オズボーンは酒浸りの日々を過ごしていたわけですが、ある日、友人の紹介でとあるギタリストと出会います。
オジーが後年インタビューで語っていますが、まるで天使がそこにいたかのよう、、だったそうです。
このギタリストとの出会いがオジー復活のきっかけとなります。この出会いの結果産み落とされたアルバムが発表されたのも1980年。
このギタリストが伝説のランディ・ローズです。
Ozzy Osbourne- Crazy Train (1980年)
今回のラスト曲。プログレッシブなメタルの最高峰、Iron Maiden–Rime of the Ancient Mariner
次回は、天高く舞い上がる様なメタル特有のギターの響きについて書こうと思います。次回もよろしくお願いいたします。
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