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プールで出会った父娘

パリ17日目。娘は今日は自分が行きたいところに行く!と言い張るので、15区ボーグルネルにある公営プール「ケラープール」に行く。以前行った「ブロメプール」よりも若干規模は大きく、子供専用の浅いプールがある。しかし夏休みの為子供プールは芋洗状態。

ケラープール

他の子供達の合間を縫って、しばし娘の泳ぐ練習に付き合う。娘と同じくらいの歳の女の子が近くで遊んでいた。フレンドリーな感じの女の子で、よく目があったので、フランス語で話しかけてみる。7歳半で16区の公立小学校に通い、週一回水泳教室に通っていると知った。連れの男性は高齢だったので、「おじいさんと来てるの?」と聞いたら«c'est mon papa (私のパパよ)»と言われてしまった。しまった、見かけで勝手に想像するべきでなかった。お父さんは74歳らしい。

ルイーズというその女の子は主にフランス語しか話さないが、娘と打ち解け、水の中で仲良く遊ぶようになった。ルイーズと色々話してみるが、子供のフランス語には慣れていないせいか、殆ど聞き取れない。生のフランス語にもっと慣れる必要があるな、と改めて思う。

一度プールの外に出て娘を見守っていたお父さんが、再びプール内に入ってきて、私に英語で話しかけてくれた。お父さんは既に退職し、夏休みの間子供の面倒を見ているらしい。夏は北欧や南仏を旅行していたが、最近パリに戻ってきたとか。

私を気遣って知り合いの日本人の話とか、小澤征爾氏やカワバタ、ミシマの話をしてくれた。出た!フランスの知識人層の多くが知っている、カワバタ、ミシマ。ブノワという名のそのお父さんは二人の著書も読んでいて、『金閣寺』や切腹の話をしてくる。ニューヨークでは初めて知り合った人と日本文学の会話をすることは殆どない。よほど日本通の人ではないと、カワバタ、ミシマを知らない。やはりフランスでは日本文化はより広く浸透しているな、と改めて実感する。

1時間ほどいるつもりが、結局2時間以上プールにいた。午後6時を回ったので、プールを出る。「明日一緒にエッフェル塔行こうか」、とブノワは誘ってくれたが、ルイーズちゃんが乗り気じゃなかったので、その話も流れる。更衣室でシャワーを浴びに別々の場所に行った。

プールを出て外で少し待っていたが、先に帰ったのか彼らはもういなかった。連絡先を聞いとけばよかった、と悔やむ。

Boulanger (パン屋)という名の電気機器、料理器具店で遊ぶ娘

その後ポストでハガキ用の切手を買い、辺りを散策する。娘がお腹が空いて通りのピザ屋に入りたい、と言い出す。「Five Pizza」という英語の名前のチェーン店らしく、「パリに来てまでピザか、しかもチェーン店だし」と躊躇するが娘は譲らない。仕方なく一番小さなピザをオーダーする。一番小さなと言っても31cmのパイで、ニューヨークのように2ドルで1スライスなど買えないようだ。

ボーグルネル地区のFive Pizza

出てきたのは熱々の、おそらく窯で焼かれたピザ。生地もふわふわで美味しい。冷凍のピザをそのまま温めて出した、という感じではなくちゃんと手作りしている。ファーストフードの店でもこのクオリティか、と感動する。パリのマックも店の装飾から提供する食べ物まで本場アメリカと比べて格段に良かった。マカロンとエスプレッソマシーンも置いてあるのだから。
さすが世界に名高い食文化を持つフランス。ファーストフードでも手を抜かない。あと、店の見た目で勝手に味を想像したのも良くなかったな、と反省する。何事も見た目だけで判断するのは宜しくない。

熱々のふわふわでした


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