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【ショートショート】年下の彼氏
「黙って俺について来い」
昨日、ヒロシに言われた。いつの時代の人なのって思った。年下でまだ28歳なのに。
反射的に「嫌よ」と言ってしまった。どうしよう…。
ヒロシのことは大好き。カッコいいし、優しいし。
でも、頼り甲斐はないのよね、まだ。
アケミに「嫌よ」って言われてしまった。
普通にショックだ。俺には人生は任せられないということだろうか。
年下だから?いや、そんなことは関係ないはずだ。
俺は結
【ショートショート】たくさん食べたい
食べることが大好きな女の子、みーちゃん。食事の時にお父さんのおかずが大盛りなのを見て、「お父さんばっかりずるい」といつも怒っていた。
「みーちゃんはこんなに食べられないでしょう?」とお父さんが言うと、「分かんないもん。食べれるかもしれないもん」とふくれるので、お母さんが「じゃあ、みーちゃん食べ終わってまだ食べれそうなら、お母さんのあげるから、ね」と言ってなだめていた。
結局、お母さんのおかずまで食
【ショートショート】手
「先生」
駅の改札を出たところで、若く美しい女性に呼び止められた。
「迫田先生ですよね、美術部の顧問をされていた」
「いや、あの、どちら様ですか?」
「堀田です!堀田いずみ。覚えていらっしゃらないですよね、私地味だったし。先生は少しお痩せになりました?」
「いや、そんなことないと思うけど」
「痩せましたよー、ちょっとダンディーな感じになりましたもん。私、今だから言いますけど先生に憧れてたんです」
【ショートショート】結婚したかった男
浮いた話のひとつもなく、実家に帰るたびに「結婚しないのか」と両親に聞かれる男。顔はトムクルーズに少し似てハンサムだが、女性と付き合ってもなぜか長続きしない。
「そもそも結婚したからって幸せになれるとは限らないだろう」
これは「結婚しないのか」に対する彼の逃げ口上だが、そんなことを言う人間は結婚する気がないに決まっている。
だが、会社で管理職に昇進したい彼は「早く結婚しなければ」と思い詰めていた。