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【ショートショート】チワワと見た夢

真夜中にチワワが吠えている。
飼い主は目を覚ましてチワワを見た。

「おい、起きろ。ご主人様、ちょっと」
「ん?何?」
「起きて。今日、晩ごはん出してもらってない。出して」
「あ、ごめん…あれ、お前、人間の言葉話してる?」
「話してない。起きろ。晩ごはんくれ」
「話してるじゃん!」
「話してない!オレの口を見ろ。ワンキャンクゥーンの口しかできない。人間の言葉を話せるわけないだろ」
「確かに。でもクロよ。お前の気持ちが人間の言葉として伝わってくるんだ。なんだこれは」
「知らない。晩ごはんくれ」
「いや気になって晩ごはんを出す気にならないな」
「なんと身勝手な!では教えてやる。お前はまだ半分寝ていて夢を見ているんだ。早く目を覚ませ。オレの晩ごはんを用意してくれ」
「いや、もう起きてるよ。びっくりして目が覚めた。なあ、クロ。もう理由なんてどうでもいい。お前と話せるなんて最高だよ。これからもよろしくな」

チワワはもう話さなかった。ただクゥーンと鳴いた。
飼い主は晩ごはんを用意して出してやり、チワワが食べ終わるのを見届けた。
そしてチワワを抱き寄せて寝た。

(463文字)

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