【ショートショート】年下の彼氏
「黙って俺について来い」
昨日、ヒロシに言われた。いつの時代の人なのって思った。年下でまだ28歳なのに。
反射的に「嫌よ」と言ってしまった。どうしよう…。
ヒロシのことは大好き。カッコいいし、優しいし。
でも、頼り甲斐はないのよね、まだ。
アケミに「嫌よ」って言われてしまった。
普通にショックだ。俺には人生は任せられないということだろうか。
年下だから?いや、そんなことは関係ないはずだ。
俺は結婚したいと思っているのに。まさか他に好きな人でもいるのか。
もしそうなら俺は…。
翌日、とある会社のオフィスにて。
「課長、ちょっとよろしいでしょうか」
「いいわよ」
ヒロシはアケミを会議室に誘導する。
「昨日のことなんだけど…」
「いま仕事中でしょう。後にして」
「気になって仕事が手につかないんだよ!俺の他に好きな奴がいるのか?」
「なんで?なんでそんなことになってるの?」
「俺についてくるのが嫌なんだろ」
「え、昨日の巨大迷路のこと、気にしてるの?だって、何回も間違うから。私、もうクタクタだったし。私の言った通り進んだ方が早かったでしょう?」
「…それはそうだけど」
「背伸びすることない。私はヒロシのこと、大好きよ。仕事、がんばろ?」
「う、うん!」
はー、マジで振られるかと思ったー。
アケミは憂いなく午後の商談の準備を進めることができた。
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