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旅と建築探訪記

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#海外旅行

【建築】翼を広げるミルウォーキー美術館(サンティアゴ・カラトラバ)

【建築】翼を広げるミルウォーキー美術館(サンティアゴ・カラトラバ)

最初に書いておくが、このタイトルは比喩ではない。
ホントに翼を広げるのだ。

2024年5月、シカゴから北へ150kmにあるミルウォーキーまでやってきた。
五大湖の一つ、ミシガン湖の西岸に広がるこの都市は、人口約57万人のウィスコンシン州最大の街である。

この街でどうしても見たい建築家の建物があった。
その建築家とはスペイン出身のサンティアゴ・カラトラバ。
建築家であり、構造家であり、芸術家でも

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【建築】空を見ながら故人を偲ぶセレモニーホールCrematorium Polderbos(OFFICE KGDVS)

【建築】空を見ながら故人を偲ぶセレモニーホールCrematorium Polderbos(OFFICE KGDVS)

ブリュッセルから北東へ120km、海辺の町オーステンデ。その郊外の干拓地の一画、かつてのレンガ工場の敷地にセレモニーホールがある。

そう、今回の建築探訪はセレモニーホール、つまり葬儀場だ。
以前も書いたが、近年は日本でも海外でも"建築家"がセレモニーホールを設計することは珍しくない。そして建築ファンは罰当たりにもそういった建築も訪れる。もちろん私もその一人。

しかし通常セレモニーホールは突然訪

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【建築】分かっていたのに感動してしまったユニティ教会(フランク・ロイド・ライト)

【建築】分かっていたのに感動してしまったユニティ教会(フランク・ロイド・ライト)

2014年3月、シカゴ郊外のオークパークを訪れた。フランク・ロイド・ライトの自邸スタジオや彼が設計した住宅が数多くある街だ。それら彼の建築を見て回っていた時、近くに代表作の一つであるユニティ教会があることを知った。
早速教会を訪れたが、残念ながらその日、教会のドアは閉ざされていた。

仕方ない。事前に調べていなかった自分が悪いのだ。私は素直にその場を離れた。「いつかまた必ず訪れるぞ!」と誓いながら

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【建築】早朝からテンションMAXな建築探訪はクリーブランド・アーケード

【建築】早朝からテンションMAXな建築探訪はクリーブランド・アーケード

その日、オハイオ州クリーブランドに着いたのは早朝6:30。

朝食も食べず(というかどのお店もまだオープンしておらず)、真っ直ぐ向かった先はダウンタウンにあるショッピングセンター。その名もThe Arcade。

生憎の雨模様で外観は映えない。しかしこの建築の見所は内部だ。

中に入ると圧巻の空間が出迎えてくれる!
朝7:00からテンションMAXである。

クリーブランドのこのアーケードは1890

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【建築】重なり合うガラスが独自の空間をつくるトレド美術館ガラス・パビリオン(SANAA)

【建築】重なり合うガラスが独自の空間をつくるトレド美術館ガラス・パビリオン(SANAA)

妹島和世さんと西沢立衛さんによる建築家ユニット SANAA。このnoteでも何度か記事を書いているように、私のお気に入りの建築家である。今回、久しぶりに海外のSANAA建築を訪れるチャンスがやってきた。しかもアメリカ合衆国のトレドという微妙に不便な場所にある。これは行くしかない!

オハイオ州第4の街トレドは1970年代までは全米屈指の工業都市として栄えていた。またThe Glass Cityとい

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【建築】拝啓、フランク・ゲーリー様

【建築】拝啓、フランク・ゲーリー様

拝啓、フランク・O・ゲーリー様

私が初めてあなたの建築に出会ってからもう15年が経ちました。
そうです。それは建築専門外の私が"建築"というものに興味を持つきっかけだったのです。

初めて見たゲーリーさんの建築はウォルト・ディズニー・コンサートホール。そのありえないウネウネの造形に衝撃を受けました。それ以来、他の誰にも真似できないその独特の造形に魅せられ、私はゲーリーさんの建築を巡礼してきました

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【建築】インドにも国立西洋美術館があった?(ル・コルビュジエ)

【建築】インドにも国立西洋美術館があった?(ル・コルビュジエ)

ル・コルビュジエ設計の建築として名高い日本が誇る国立西洋美術館。この国立西洋美術館とほぼ同じ建物がインドにもあるらしい。コルビュジエはインドでも仕事をしているので不思議ではない。
その美術館とはチャンディーガル政府博物館・美術館(Government Museum and Art Gallery, Chandigarh)。

今回はその"ほぼ同じ"という2つの美術館を比較しながら見てみよう。

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【建築】街中なのに森の中のような台北市立図書館北投分館(九典聯合建築師事務所)

【建築】街中なのに森の中のような台北市立図書館北投分館(九典聯合建築師事務所)

台湾台北市の北投区。台北という大都市にありながら温泉の湧く街としても知られている。

北投区へは台北中心部から地下鉄MRTに乗ること20分、北投駅で降りる。駅前は郊外らしい庶民的な街並みだ。日本にもありそうな風景に見える。

駅から行き交う車に注意しながら15分程歩いていくと、

集合住宅や商業施設に囲まれた北投公園に突き当たる。公園はこの奥にある日本統治時代に開発された温泉街まで続いており、ホテ

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【建築】"スペース"が謎を呼ぶアルス司祭教会(アルド・ファン・アイク)

【建築】"スペース"が謎を呼ぶアルス司祭教会(アルド・ファン・アイク)

心揺さぶられる建築って何だろう?
これまでの建築探訪を振り返ると、自分にとっては教会などの宗教施設に印象的な建物が多かったように思う。今風のスタイリッシュな建築も大好きだが、心落ち着く宗教施設らしい空間が自分の好みに合っているのかもしれない。

今回もそんな建築の紹介である。

人口55万人のオランダ第三の都市デン・ハーグ。

中心部にはキラキラの現代建築が集まるが、その郊外に小さな教会がある。

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【建築】インドの巨匠建築家 バルクリシュナ・ドーシを知っているか?

【建築】インドの巨匠建築家 バルクリシュナ・ドーシを知っているか?

「知らん」
ほとんどの人はそう答えるだろう。私も「名前は聞いたことあるかな?」という程度だった。つい最近までは…。

2023年、インドを訪れた。その目的は友人に会うためとかタージ・マハルなどの観光地を巡るためとか色々あったが、メインはやはり建築探訪である。インドの建築といえばル・コルビュジエ。コルビュジエはスイス/フランスの建築家だが、インドにも多くの建築があり、チャンディーガルでは新しい都市計

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【建築】"作品を展示すること"に追求したブレゲンツ美術館(ピーター・ズントー)

【建築】"作品を展示すること"に追求したブレゲンツ美術館(ピーター・ズントー)

"作品を展示すること"
そんなの美術館なら当たり前じゃんって思うよね、普通は。

オーストリア・フォアアールベルク州の街ブレゲンツ。ボーデン湖畔にある街だが、ウィーンやザルツブルクからは遠く、観光としては少々マイナーだ。

もし人々がこの街を訪れるとしたら、主な目的は二つのいずれかだろう。
ブレゲンツ音楽祭か? あるいはブレゲンツ美術館か? もちろん私は後者だ。

1997年オープンのブレゲンツ美

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【建築】コレは雲か、魚か、帆船か? フォンダシオン ルイ・ヴィトン(フランク・ゲーリー)

【建築】コレは雲か、魚か、帆船か? フォンダシオン ルイ・ヴィトン(フランク・ゲーリー)

パリ郊外のブローニュの森といえば誰でも一度は耳にしたことがあるだろう有名な公園だ。市民の憩いの場として様々なレクリエーションを楽しめる。テニスの全仏オープンで有名なスタッド・ローラン・ギャロスや凱旋門賞の開催地であるパリロンシャン競馬場、国立民族民芸博物館やバガテル庭園といったスポーツ・文化施設も充実している。

そのブローニュの森に2014年、新たな施設がオープンした。

快晴の青空の中、最寄り

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【建築】これは美術館なのか? デポ・ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン(MVRDV)

【建築】これは美術館なのか? デポ・ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン(MVRDV)



オランダのロッテルダム。
第二次世界大戦で焼け野原となったこの街は「規則正しい都市計画」とは無縁で、現代らしくも奇抜でヘンテコなデザインの建物が並んでいる。

それらを設計する筆頭はロッテルダムを拠点とする建築事務所 MVRDV。

そのMVRDVによる注目の美術館、いや美術館ではない"ある施設"がミュージアムパーク(その名の通り、多くの美術館が集まる公園)に誕生した。デポ・ボイマンス・ヴァン

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【建築】インドの気候風土に結びついたアーメダバード繊維業会館(ル・コルビュジエ)

【建築】インドの気候風土に結びついたアーメダバード繊維業会館(ル・コルビュジエ)

インド西部にあるグジャラート州アーメダバード。
都市圏人口850万人を超える大都市だが、それでもインド国内では第5位である。15世紀からイスラム王朝により形成され始め、現在ではインドの他の都市同様ヒンドゥー教が主流だが、市内には古くからのモスクも残っている。

また世界遺産にも登録されている旧市街には今も多くの人々が住み、商い、活気のある町となっている。一般的に"旧市街"というと小綺麗に整備された

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