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旅と建築探訪記

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#海外旅行

【建築】拝啓、フランク・ゲーリー様

【建築】拝啓、フランク・ゲーリー様

拝啓、フランク・O・ゲーリー様

私が初めてあなたの建築に出会ってからもう15年が経ちました。
そうです。それは建築専門外の私が"建築"というものに興味を持つきっかけだったのです。

初めて見たゲーリーさんの建築はウォルト・ディズニー・コンサートホール。そのありえないウネウネの造形に衝撃を受けました。それ以来、他の誰にも真似できないその独特の造形に魅せられ、私はゲーリーさんの建築を巡礼してきました

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【建築】インドにも国立西洋美術館があった?(ル・コルビュジエ)

【建築】インドにも国立西洋美術館があった?(ル・コルビュジエ)

ル・コルビュジエ設計の建築として名高い日本が誇る国立西洋美術館。この国立西洋美術館とほぼ同じ建物がインドにもあるらしい。コルビュジエはインドでも仕事をしているので不思議ではない。
その美術館とはチャンディーガル政府博物館・美術館(Government Museum and Art Gallery, Chandigarh)。

今回はその"ほぼ同じ"という2つの美術館を比較しながら見てみよう。

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【建築】街中なのに森の中のような台北市立図書館北投分館(九典聯合建築師事務所)

【建築】街中なのに森の中のような台北市立図書館北投分館(九典聯合建築師事務所)

台湾台北市の北投区。台北という大都市にありながら温泉の湧く街としても知られている。

北投区へは台北中心部から地下鉄MRTに乗ること20分、北投駅で降りる。駅前は郊外らしい庶民的な街並みだ。日本にもありそうな風景に見える。

駅から行き交う車に注意しながら15分程歩いていくと、

集合住宅や商業施設に囲まれた北投公園に突き当たる。公園はこの奥にある日本統治時代に開発された温泉街まで続いており、ホテ

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【建築】"スペース"が謎を呼ぶアルス司祭教会(アルド・ファン・アイク)

【建築】"スペース"が謎を呼ぶアルス司祭教会(アルド・ファン・アイク)

心揺さぶられる建築って何だろう?
これまでの建築探訪を振り返ると、自分にとっては教会などの宗教施設に印象的な建物が多かったように思う。今風のスタイリッシュな建築も大好きだが、心落ち着く宗教施設らしい空間が自分の好みに合っているのかもしれない。

今回もそんな建築の紹介である。

人口55万人のオランダ第三の都市デン・ハーグ。

中心部にはキラキラの現代建築が集まるが、その郊外に小さな教会がある。

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【建築】インドの巨匠建築家 バルクリシュナ・ドーシを知っているか?

【建築】インドの巨匠建築家 バルクリシュナ・ドーシを知っているか?

「知らん」
ほとんどの人はそう答えるだろう。私も「名前は聞いたことあるかな?」という程度だった。つい最近までは…。

2023年、インドを訪れた。その目的は友人に会うためとかタージ・マハルなどの観光地を巡るためとか色々あったが、メインはやはり建築探訪である。インドの建築といえばル・コルビュジエ。コルビュジエはスイス/フランスの建築家だが、インドにも多くの建築があり、チャンディーガルでは新しい都市計

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【建築】"作品を展示すること"に追求したブレゲンツ美術館(ピーター・ズントー)

【建築】"作品を展示すること"に追求したブレゲンツ美術館(ピーター・ズントー)

"作品を展示すること"
そんなの美術館なら当たり前じゃんって思うよね、普通は。

オーストリア・フォアアールベルク州の街ブレゲンツ。ボーデン湖畔にある街だが、ウィーンやザルツブルクからは遠く、観光としては少々マイナーだ。

もし人々がこの街を訪れるとしたら、主な目的は二つのいずれかだろう。
ブレゲンツ音楽祭か? あるいはブレゲンツ美術館か? もちろん私は後者だ。

1997年オープンのブレゲンツ美

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【建築】コレは雲か、魚か、帆船か? フォンダシオン ルイ・ヴィトン(フランク・ゲーリー)

【建築】コレは雲か、魚か、帆船か? フォンダシオン ルイ・ヴィトン(フランク・ゲーリー)

パリ郊外のブローニュの森といえば誰でも一度は耳にしたことがあるだろう有名な公園だ。市民の憩いの場として様々なレクリエーションを楽しめる。テニスの全仏オープンで有名なスタッド・ローラン・ギャロスや凱旋門賞の開催地であるパリロンシャン競馬場、国立民族民芸博物館やバガテル庭園といったスポーツ・文化施設も充実している。

そのブローニュの森に2014年、新たな施設がオープンした。

快晴の青空の中、最寄り

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【建築】これは美術館なのか? デポ・ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン(MVRDV)

【建築】これは美術館なのか? デポ・ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン(MVRDV)



オランダのロッテルダム。
第二次世界大戦で焼け野原となったこの街は「規則正しい都市計画」とは無縁で、現代らしくも奇抜でヘンテコなデザインの建物が並んでいる。

それらを設計する筆頭はロッテルダムを拠点とする建築事務所 MVRDV。

そのMVRDVによる注目の美術館、いや美術館ではない"ある施設"がミュージアムパーク(その名の通り、多くの美術館が集まる公園)に誕生した。デポ・ボイマンス・ヴァン

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【建築】インドの気候風土に結びついたアーメダバード繊維業会館(ル・コルビュジエ)

【建築】インドの気候風土に結びついたアーメダバード繊維業会館(ル・コルビュジエ)

インド西部にあるグジャラート州アーメダバード。
都市圏人口850万人を超える大都市だが、それでもインド国内では第5位である。15世紀からイスラム王朝により形成され始め、現在ではインドの他の都市同様ヒンドゥー教が主流だが、市内には古くからのモスクも残っている。

また世界遺産にも登録されている旧市街には今も多くの人々が住み、商い、活気のある町となっている。一般的に"旧市街"というと小綺麗に整備された

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【建築】ルーヴル・ランスに似合う空(SANAA)

【建築】ルーヴル・ランスに似合う空(SANAA)

その日、滞在中のベルギー・ブリュッセルは雨だった。市内の美術館は一通り巡ったし雨の建築探訪は煩わしいし、どうしようか…。しかし近隣の天気予報を調べると、少し遠いが晴れている場所があった。しかも有名建築もある!

ヨシ、そこ行こう!

ベルギー国鉄からフランス国鉄に乗り継いでランス駅(Lens)で降りる。建築ファンであれば、ここが何処なのかお分かりになるだろう。

そう、あのルーヴル美術館の別館、ル

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【建築】水と光と影がつくるセレモニーホール Hofheide(RCRアルキテクタス)

【建築】水と光と影がつくるセレモニーホール Hofheide(RCRアルキテクタス)

人生の最後の場、家族や友人が集まり大切な人を偲ぶ場である葬礼。かつてはお寺や個人宅、現在はセレモニーホールで行われることが多い。
そのセレモニーホール、不特定の人が短時間利用するだけなので、装飾は控えめな建物が多い。実用的と言えるが、凡庸とも言える。

しかし近年は、日本でも海外でも建築家が設計した洗練されたデザインのセレモニーホールもある。伊東豊雄さん設計の「瞑想の森 市営斎場」は有名だ。

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【建築】図書館の"本のあり方"を問うブック・マウンテン(MVRDV)

【建築】図書館の"本のあり方"を問うブック・マウンテン(MVRDV)

市民にとって身近な公共施設である図書館。最近は著名な建築家が設計を手がけることも多く、デザイン面でも注目される傾向にある。
こうした図書館には一つの特徴がある。それは本の収納・閲覧はもちろん、居心地の良さにも配慮していることだ。落ち着きのあるインテリア、くつろげる閲覧席、快適な光環境、etc。

特に光環境、つまり自然光の取り入れ方は重要だ。
一般的に図書館と自然光との相性は良くない。直射日光が入

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【建築】美しい森に溶け込む自然公園のパビリオン(石上純也+STUDIO MAKS)

【建築】美しい森に溶け込む自然公園のパビリオン(石上純也+STUDIO MAKS)

建築家・石上純也。私のお気に入りの建築家の一人だ。しかし実はまだそれほど作品を見ていない。今までにKAIT広場、KAIT工房、木陰雲を訪れた程度である。その中でもKAIT広場はスゴかった。「技術に走り過ぎている」という批判もあるようだが、スゴいものはスゴイとしか言いようがなかった。

その石上さん設計のパビリオンがオランダの公園 Park Vijversburgにある。
「石上さん設計」と書いたが

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【建築】簡素でありながら心が震えるファールス修道院(ハンス・ファン・デル・ラーン)

【建築】簡素でありながら心が震えるファールス修道院(ハンス・ファン・デル・ラーン)

皆さんは映画・音楽・美術館などに行く時、何から情報を得るだろうか?
訊くまでもない質問だと思うが、今の時代、ほとんどの人はネットで調べるだろう。私が建築を見に行く時もそうしている。そして実際に訪れてみると、それなりに満足感も得られる。ただし意外性のある建築に出会うことは少ない。どうしても自分好みの建築を選んでしまうからだ。
そこで最近はネットに加えて、というか以前はそれは普通だったが、詳しい人や地

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