月と夢と、言葉遊びじいちゃん
ぼくは毎朝、町をパトロールしてる。
それで、途中でいつも角の家に寄り道する。
毎朝縁側に座ってる、おもしろいじいちゃんに会いに行くんだ。
「ねぇねぇじいちゃん!」
「やぁ、坊。今日も早いな。おはよう。」
「うんおはよう!ねぇ昨日、月見た?月が見えなくなったんだ!
かいきげっしょくっていうんだよ!」
「坊は見たのかい?」
「うん見たよ!ほんとに満月が、だんだんいなくなっていったの。」
「ほぅ、見えない月を見たとはそりゃすごい。」
「じいちゃんは見なかったの?」
「俺は見えないもんは見ない。それに、もしかしたら見られたくないかもしれないだろ?」
「え?そうなの?月は見られたくないから、見えなくなったの?」
「さてどうだろうな。でも人間が勝手に見てるだけで、本当はいつも見られたくないかもしれんぞ?」
「あなた、またそんな適当なこと言わないで下さい。」
「あっばあちゃん!」
「おはよう、ぼうや。」
「おはよう!ねぇばあちゃん、月は見られたくないから、昨日いなくなっちゃったの?」
「皆既月食はね、月がいなくなったんじゃなくて、地球の陰に入って太陽の光が当たらなかったから見えなかったのよ。だからだんだん欠けていって、全部陰に入った時に夕日のように赤くなったの。赤い月を見たでしょう?」
「うん!見た!」
「お前はまた、夢のない説明をするねぇ。」
「ふさげた話なんて、こんなあなたとずっと一緒にいるってことくらいで十分ですよ。」
「ほぅ、ずっと一緒にいてくれるのかい。そりゃあ今度は夢のある話だな、はっはっは。」
「じいちゃん、うれしい?」
「あぁ、うれしいねぇ。夢のようだ。」
「ぼうや、もういいからそんな屁理屈おじいさん放っておいて早くお上がりなさい。手を洗って。居間にお菓子があるわ。」
「わーい!やったー!」
ぼくは縁側から家に駆け上がった。
よくわかんないけど、じいちゃんとばあちゃんは今日も仲良しみたいだ。
お菓子もおいしいし、今日のパトロールも、異常なしだ。
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