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名も知らぬ庭木の世話をする父と、間違って覚えている母


父が庭で何やら作業をしている。
何の木だろうか。
よくわからないが丸い葉の背の低い木をブロッコリーのようなコロンとした形に剪定バサミで切りそろえていた。

実家にはちょっとした庭があり、いくつか木や花などの植物が植えられていたが、私はそのどれも名前を知らない。
恥ずかしながら、植物というものにあまり興味がない。

何が「恥ずかしながら」なのかはよくわからないが、それはきっと自分の中で植物を愛でるというのがなんとなく「いいこと」のような気がしているからだ。

ある程度の年になったら誰しも庭作業や畑仕事、園芸、ガーデニングなど花や植物を楽しむ気持ちになったりするのかなとなんとなく周りを見て思っていたし、自然を愛せるってなんだか慈悲深いというか優しそうなイメージがある。
マンガで出てくる園芸部員は大体真面目で誠実な感じだし、道端の花に目を向けるタイプのヤンキーなども、こぞってみんないい奴だ。

しかし、程々に若者でもなくなった私は、未だ一向に植物に対して興味が沸かない。
なんとなくそれがまだまだ子供のような、それともあまり優しくない人間のように思えて「植物も愛せないダメな奴」というイメージを勝手に抱いているのだきっと。

「それ、何の木?」

興味はなかったが何の気無しに、ハサミを動かす父に聞いてみる。

「わかりません。」

なんだって?

「え?知らないの?だってこれ、自分で植えたんじゃないの?」

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