こじらせた自己愛
4年前(2015年)に出版したコミックエッセイ「アトピーの夫と暮らしています」(PHP研究所)。
実話に基づいた闘病記なのですが、「アトピー自体や治療の苦労」についての感想と同じくらい多かったのが、「お母さん強烈ですね」という感想でした。(実際には本に書いた100万倍(笑)ひどかった)
私の母はいわゆる毒親で、18年ぶりに同居したら、昔住んでいた頃よりパワーアップしていてビックリ。その毒の矛先は、私だけでなく、それ以上に我がオットに向いてしまいました。
↑これがアトピー本の原稿の一部。
アトピー本は、このように登場するのは「人間」です。しかし、母との話は、アトピー本を出版する前(2012年頃)に、「ひよこキャラクター」のマンガで何話か書きためていました。それが前回二回載せたマンガです。
どうもひよこのマンガにするとあんまり悲壮感がないようです。というか、この頃はまだ、そんなに深刻な事態を迎えていなかったのでしょう。
ひよこマンガ第1回「ショーゲキ的なひとこと。」
ひよこマンガ第2回「夫婦のプライバシー・1。」
今回はコミックエッセイはお休みして、母との関係や、この漫画の背景について、ちょっと真面目に書いてみることにします。
病気で会社を辞めたオットと共に実家に転がり込む
8年前(2011年)に、15年ほど暮らした東京を離れ、私は結婚して3年目のオットを連れて名古屋の実家に戻ることになりました。
理由は、会社員(SE)だったオットが、アトピーの悪化で会社を辞めたから。
アトピーはただかゆいだけの病気だと思われがちですが、私のオットは中でもかなり重傷なアトピー。かゆいだけでなく、体が熱をもってだるくなるのが特徴で、ひどいときには寝込んでしまうほどなのです。
それでも何とかオットはSEとしての激務を続け、二人で頑張っていました。そこへ名古屋の私の母から「一緒に住まないか」という申し出があり、悩んだ結果、会社を辞めて、名古屋で学校に写真の行くことに決めたのでした。
甘えることのできない母
ところが、そこから母に振り回されることになります。会社を辞めて引っ越し準備をする最中に「やっぱり一緒に住みたくない」(!!)と言い出して揉めに揉めたのなどは序の口。引っ越し後に母の家に到着したら、誇張ではなく一瞬も座らせてもらえず、片づけをさせられました。真夏なのにお茶も飲ませてもらえませんでした。
そんな風に同居は当初から波乱含みでしたが、それでも最初の1年くらいは、まだ母といろいろ話をする余裕がありました。母の方が反省して、謝ってくれることもあったのです。
当時、ほとんど読む人のいないブログにちまちま記録をつけていました。
ある日の記録では「あんたはオットの扱いがうまい」と褒められた、とあります。「自分にはそれができない」と。「子育てにも、お父さんに対してもできなかった」と。「自分は人をほめることも甘えることもできない」と。
「それは、お母さんが今まで人に甘えさせてもらえなかったからだね」と私は答えたようです。だからお母さんは、人に甘えるのが下手だし、人を甘えさせるのも下手。人は教わってないことはできないからだと。
同じように、かつての私は人に甘えることも甘えさせることもできませんでした。私は人に甘えると言うことを、9歳年下のオットに初めて教わった気がします。
甘えて甘えられて、褒めて伸ばす
私は、小さい頃は勉強もできたし、絵も得意だったけれど、ほめられたことがほとんどありませんでした。
むしろ、女の子が勉強や絵なんかできても仕方がない、と言われるだけでした。料理や家事ができないと意味がないと。母親だけでなく、母の実家に行くと、祖父母や叔母夫婦にも同じようなことを言われました。
そのくせ、苦手な運動については、走ることが遅いと笑われました。上の理屈で行けば、運動だってできても仕方がない訳ですが。できないことばかりをできないと笑われ、できないことはダメなんだと思いこまされてきたのです。
だからこそ、私自身はできるだけ、人のいいところを見て、褒めて行きたいと思うようになりました。自分にも欠点がたくさんあるように、相手にも欠点があって当たり前。それよりはいいところに目を向けたい。
相手のできないことに目を向けるのではなく、ほかにできることを見つけたい。もっと、こんなにできることがあるじゃないか、と言ってあげたいのです。
それで誰かの何かが変わるなら、いくらでも褒めたい。かつての私が救われたように。
甘えて甘えられて、その中でできることを頑張って、できないことはフォローしあえばいい。一人で何もかもできなくてもいいと思うのです。
母のこじらせた自己愛
2018年の今は母とは別居していますが、母との生活は、2011~2016年の5年にも及びました。しかし、その中で母は何一つ変わりませんでした。むしろ、どんどん頑なになって行ったのです。
オットとの共通の友人で、彼自身も父親との関係で悩んだことのあるCくんと飲んだ時のこと。母との話をチラッとしたところ、ほんのかいつまんで話しただけで、彼は「ああ、それは典型的な自己愛(型パーソナリティ障害)だね」と言いました。
その日から私は「自己愛性パーソナリティ障害」について調べまくりました。本を読み、ネットの記事を読み漁る日々。そのおかげで、今まで疑問だったことが本当に腑に落ちました。Cくんには感謝です。
もちろん、医師の診断を仰いだわけではないので、本当のところはわかりません。こうした精神的な病は、線引きが難しいものですし。母にはもっと別の要素も見られるようにも感じるので、他の障害も混ざっているのかもしれません。
ですが、何らかの精神的な病や障害なのだと仮定できるようになると、諦めのような気持ちも生まれました。私たちの力ではもはやどうすることもできない、と思うことができたのです。
ただひとつ言えるのは、あのまま3人で暮らしていたら、自分は犯罪者になっていたかもしれない、と思うほど、追い詰められていたということ。
母は私たちの言葉に耳を貸すことはなかったし、あとは、母が依存しきっている姉に、すべてを委ねるほかはありません。母は姉の言うことなら聞くでしょうから。
こんな背景があったことを知ってこの漫画を読むと、また違った見え方がするかもしれません。
こうやって見ると、「アトピー本」に登場する母、めっちゃ怖っ!!
これは2014年初めくらいの出来事を描いています。
(私の背後にいる黒いのは、私の本音の化身「黒ヒヨコ」。「黒ヒヨコ」は私が本音を吐き出すと喜ぶ、という設定)
母をこんなに怖く描く辺り、原稿を描いていた2015年には、相当追い詰められていましたね。翌年引っ越せて本当によかった。オットもストレスから解放され、今は本当に元気になりました。
ひよこのマンガを描いていた頃(2012年)はまだ平和だったのかもなぁ。
↓だってほら、ハハ、結構カワイイし(笑)
ひよこマンガの登場人物。
ひよこマンガ第1回「ショーゲキ的なひとこと。」
ひよこマンガ第2回「夫婦のプライバシー・1。」
ちなみにひよこの別のマンガは、ここで読めます。母は登場しないけどね。
もし、この記事を読んで「面白い」「役に立った」と感じたら、ぜひサポートをお願い致します。頂いたご支援は、今後もこのような記事を書くために、大切に使わせていただきます。