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【亡き母に贈る詩】母の手

あなたの手を最後に握ったのは
少し暑い5月6日の昼下がり
白い病室 ベッドの上

まるで蝋人形のような
血の通わないむくんだ手

意識なく眠るあなたの手を握りながら
これまで恥ずかしくて言えなかった
あなたへの大好きを
何度も口にした

それから1年
あなたのいなくなった町を歩くたび
やさしく握ってくれた
あなたの手を思い出す

やさしく やさしく
数えきれないほど
私を抱きしめてくれた
あなたの手

あなたともう一度手をつなぎたい

決して叶わぬ私の願いを
育った町に残して
私はわが子の待つ家路についた

母よ
あなたの孫は
すくすく元気に育っていますよ



今日 5月6日は
昨年 急逝した母の命日
あと10年は生きるだろうと
誰もが思っていた健康な母が
急に倒れ 運ばれ
みるみる衰弱し
1週間ほどで旅立った

母がいなくなる
いつかそうなることはわかっていても
まだ先の未来のことだと思っていたから
心の準備ができていなかった

1年たっても
ただただ悲しい
ただただ寂しい
その思いは癒えず

今日は母に
偲ぶ詩を贈ろう

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