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【標準図解】と【応用図解】「図解のパターンは覚えたけど、作ろうとすると、どういう形にしたらよいのか頭に浮かびません」〜質問に答える 2

二十数年間、携わってきた図解や資料作成などについての研修や講義、講演で、そのときそのときに参加者からいろいろな質問を受けてきました。その中には繰り返し聞かれること、時間の関係で充分に答えることができなかったことなどがあります。それらは何冊かの著書の内容に反映しましたが、取り上げてこなかったものもあります。そうした質問のなかから選んで、この場に答えを残しておきたいと思います。
今回、取り上げるのは「図解のパターンは覚えたけど、作ろうとすると、どういう形にしたらよいのか頭に浮かばない」という質問です。


いざ図解を作ろうとすると、形が思い浮かばない

図解に関する書籍やネットの記事では、身につけるべき図解としてフロー図やツリー図(階層構造図)といったいくつかのパターンが取り上げられています。それらは図解の一歩を踏み出すために役に立つものです。

ところがそれらを身につけても仕事で図を使おうとするとうまくいかないことがあります。少し複雑な内容を図にしようとすると、パターンに当てはめようとしても、具体的な形に落とし込めない。
またなんとか図解を作ってみたけれど、どうもしっくりいかず、使ってみたけど理解してもらえなかったということもあります。

こうしたいざ図解しようと思ったら頭に浮かばない、あるいは図解してみたけれど、わかりやすいものにならなかったという悩みを聞くことが少なくありません。

この疑問に対する私の答えはこうです。

伝える図解には2種類あります

伝えるために使う図解には「標準図解」と「応用図解」があります。
この分類や名称は私が考えたもので一般的ではありませんが、こう考えるとわかりやすいと思います。

標準図解
とは、ツリー図(階層構造図)やサイクル図、フロー図
,ポジショニング図といった定型のパターンがあるものです。たとえば図解の元になる文章がある場合にはその文章は数行までのものです。

もうひとつの応用図解は決まった型がありませんが、より複雑な事象やメカニズム、概念(コンセプト)、方法論(メソドロジー)といったものを表現することができます。お役所が作る「ポンチ絵」と呼ばれる(しばしばごちゃごちゃしてわかりにくい)図も、この応用図解に含まれます。元になる文章がある場合には、数行にとどまらず数十行を越えて、一冊の本の内容のエッセンスをひとつの図解にまとめることもできます。

こうした二つの図解の違いを理解し、自分が図解を作るときには、どちらの図解にするのかを意識します。

2つの図解は作り方が異なる

「標準図解」は多くの人が持っている標準的なイメージを利用して表現するものです。そのため相手は、その読み方、見方を説明されなくても理解することができます。
標準図解を作る場合は、定型を構成するひな形がきまっているので、そこに材料をあてはめ、形を整えて、きれいに見えるようにバランスを工夫したり、装飾したりすることでできあがります。

一方「応用図解」の形は、表現したい対象にあわせて、そのつど作る必要があります。そのため作成プロセスこそが重要となります。

その際のポイントは『構造と関係の視覚化』です。すなわち
 1)重要な要素は何か
 2)それら要素の関係はどうなっているのか
 3)全体の構造はどうなのか
といったことが視覚的に表現されていること
、すなわち目で見てわかることです。


標準図解はパターンを使って見ばえをよくする

標準図解を作っても、うまくいかないのは、定型パターンの選択ミスがあったり、標準的なイメージと違った表現をしまったりすることが少なくありません。
たとえば、一般的に原因と結果を説明するためには原因から結果に向けて矢印を引きますが、それを(因果関係があるからといって)逆方向に引いてしまえば見た相手は混乱してしまいます。
また時間の流れを一般的なイメージと逆方向である右から左に進む表現をしてしまえば、やはり伝わりにくい表現になってしまいます。
図解の作成にあたっては標準的なルールにしたがう必要があります。

応用図解は形を作るプロセスこそが重要

応用図解を作るときには、集めた情報を分類・整理し、枠で囲って、その枠を線(矢印を含む)で結んだり、配置や形を工夫すれば無事に完成というわけにはいきません。先にあげた『構造と関係の視覚化』がきちんとできている必要があります。
また応用図解では表現する対象がより複雑であるため、そこに使われる表現も図解にふさわしいものにすることが大切です。たとえば枠で囲んだキーワードやフレーズの言い回しをなるべくシンプルな表現になるように工夫しなければ、文字やただの文章そのままをぎっしりと書きこんだ、わかりいくい窮屈な印象を与える図になってしまいます。
また配置を整えないまま関係ありそうな項目の囲み枠どうしを片っ端から線で結んでいけば、線が入り組んだごちゃごちゃしたわかりにくい図になってしまいます。

2つの図解は、こう使い分ける

テレビのニュース、新聞や一般雑誌の記事などに使われている図解は、そのほとんどが標準図解です。その場合、それぞれの項目に関連のある写真やイラストなどをあしらってわかりやすくされていることも多いのですが、骨組みに注目すればたいてい標準図解に該当します。

テレビのニュース、新聞や一般の雑誌記事の標準図解が使われる理由は、さまざまな関心のレベルを持つ人が見るからです。たとえばテレビのニュースはスマホをさわりながら見たり、自宅のリビングでリラックスして見たりしている人もいるし、家族が食事している場で映像と音声を流していることもあるでしょう。そうした見方では、よほど関心のある話題以外は熱心に見ることを期待できません。

こうした状況では読み方、見方を考えさせるような表現を使うと伝わらないので、誰もがわかるような表現を使う必要があるのです。

一方、仕事で使う場合には、何か他ごとをしていて、そのついでに見るというわけではなく、一定の関心を持って、理解しようとしてくれるという状況での説明です。そこでの表現は、基本図解に加えて、応用図解を使い、より複雑な表現方法を使うことができるし、表現の対象範囲もぐっと広げることが可能です。

図解では、「標準図解」と「’応用図解」を、状況に応じて使い分けることが重要です。たとえば多くの人が集まるイベント会場に設置するパネルに使う表現であれば、行き交うさまざまな関心レベルの人の足を止めさせるために標準図解を中心に使う。
そしてパネルを見て、関心を持ち説明用のテーブルに座ってくれたときに、説明資料を使うのであれば、そこでは応用図解を使って、より詳しい内容を伝えます。

図解を作るときには、標準図解と応用図解のどちらの図解を使ったらよいのかを考えて作りましょう。
また定型パターンの図解を活用して、その限界を感じ始めたら、次のレベルに移るときです。応用図解に取り組んでみることをおすすめします。

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