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「図解は絵心がないとできませんか?」〜質問に答える 1

これまで長く携わってきた研修や講義、講演で、そのときそのときに参加者からいろいろな質問を受けてきました。その中には繰り返し聞かれること、時間の関係で充分に答えることができなかったことなどがあります。そうした質問のなかから選んで、この場に答えを残しておきたいと思います。
今回、取り上げるのは「図解は絵心がないとできませんか?」という質問です。


絵やイラストがうまく描けないから図解ができないの?

絵と図解、それぞれどういうものなのかといった言葉の定義は検索すれば出てくるので、ここでは触れません。
この質問の真意は図解を作ろうとするけれど、どういう形にしたらよいのかなかなか頭に浮かばない、あるいは図解してみたけれど、わかりやすいものにならない、という悩みを抱えていて、うまくいかない原因はきっとイラストや絵がうまく描けないからだ、絵心が足りないせいだ、そう思い込んでる人が、なにか自分でも上手く図解できるようなアドバイスがあれば知りたいという気持ちから出ていることです。

それに対する私の答えはこうです。

絵の対象と図解の対象は別のもの

絵を描くという行為は実際に目に映ったもの、姿としてそこにあるものを写し取ることが基本です。絵の中には抽象画のようなものもありますが、そうしたものを除けば、そこにあるものをそのまま描くのが絵を描くということでしょう。

それに対して図解は目に見えないものを見えるようにするものです。図解で表現するのは構成や仕組み、関係などで、それらは目に見えるような形では存在しません。組織図では実際の組織そのものはたとえばオフィスであれば机とパソコンが並び、人がいるだけで、組織図のように階層構造の形をしているわけではありません。

必要とされることが異なる絵と図解

また絵は表現に独創性を要求されます。
そのため技能を身につけるために、他なの人の描いた絵を模写したり、真似したりすることはありますが、それはあくまで練習の段階のことで、自分の作品として発表するには、その人ならでは表現が求められ、他の誰かの作品をそのまま真似すれば盗作になってしまいます。

一方、図解の表現は絵で要求されるような独創性は要求されません。
企画やアイディアといった表現される内容そのものには独創性を要求されることがあっても、独創的な表現はそれほど必要なく、むしろ見る相手にとってなじみのある表現を基本とした方が理解しやすい
あまりに独創的な表現された組織図など、見る人がついてこれませんね。

もちろん図解にもプロのデザイナーが作ったものにはデザイン性、装飾性の高いものもありますが、一般のビジネスパーソンに必要とされるレベルであればオリジナルのデザインや装飾はなくても、相手の見なれたもので充分効果を上げられるので真似して作ってみて、それを使ってみることができます。

絵心がないからといって図解をあきらめることはない

絵を描くためには、専門的な教育が存在しますし、才能やセンスの違いが問われます。自分の作品として発表するまでには、それ相応の時間が必要です。

しかし図の場合はまずはよく見かける表現を組み合わせたものを使えば、とりあえず用が足ります。あまりに独創的な表現はかえって理解のさまたげとなるため、オーソドックスなものの方がよい場面が多い。

図解は絵を描くことやそのためのスキルを身につけることはよりはずっとハードルが低いのです。才能やセンスよりも、基本を押さえた上で回数をこなせば、誰もが図解を使いこなすことができます

だから絵心がないからといって図解することをけっしておきらめないでください。


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