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近代和風建築にみる室内装飾織物についての研究

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#室内装飾織物

5.考察 5-5.両者の比較

5.考察 5-5.両者の比較

萬松園と八勝館御幸の間の室内装飾織物を比較するという、それはそれは夢のような作業でした・・・。

5-5.岐阜県旧川上貞奴別荘(萬松園)と愛知県八勝館御幸の間 両者の比較
調査結果をもとに、旧川上貞奴別荘(萬松園)と八勝館御幸の間の両者を比較してみる。

5-5-1.使用している室内装飾織物について
旧川上貞奴別荘(萬松園)の室内装飾織物は、10部屋の13箇所に18種類が使用されていた。部屋ごと

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5.考察 5-4.愛知県八勝館御幸の間について

5.考察 5-4.愛知県八勝館御幸の間について

堀口捨己が、横山大観の障壁画の計画を却下して選んだという大襖の更紗。もとの更紗はどんなものだったのか???
この考察は、長い長い楽しい旅のような作業でした。

5-4.愛知県八勝館御幸の間について
 実地調査および文献調査結果をもとに考察する。

5-4-1.もとの更紗について
御幸の間に貼られた裂はもともとどのようなものであったかについて考察する。堀口自身は、大襖の裂について新渡りの南方の空色

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5.考察 5-1.近代和風建築調査報告書について

5.考察 5-1.近代和風建築調査報告書について

考察に突入します。
調査は約3年前です。当時47都道府県のうち、45都道府県の近代和風建築調査報告書が刊行されていました。未刊行であった広島県と熊本県については、後日調査してみたいと考えています。

5-1.近代和風建築調査報告書について
45都道府県の近代和風建築総合調査報告書の物件について室内装飾織物が使用されている記載の有無を確認したところ、10の物件で確認できた。また、記載は無いものの他の

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4.結果 4-3. 実地調査および文献調査結果  (旧川上貞奴別荘(萬松園))

4.結果 4-3. 実地調査および文献調査結果 (旧川上貞奴別荘(萬松園))

さていよいよ今回の論文作成のメインである実地調査と文献調査の結果にたどり着きました。実地調査は、論文作成にあたりご指導いただいた先生にもご同行いただきました。まずは旧川上貞奴別荘(萬松園)からご紹介します~。

実地調査および文献調査を行った岐阜県の旧川上貞奴別荘(萬松園)と愛知県の八勝館御幸の間についての結果は次の通りである。
なお、旧川上貞奴別荘(萬松園)の名称については、岐阜県近代和風建築総

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4.結果 4-2. 個別報告書結果

4.結果 4-2. 個別報告書結果

3種類の建築物についての個別報告書を調査しました。
茨城県旧矢中邸については現地を見学してきました。

4-2-1.群馬県中島知久平邸 
『群馬県中島知久平邸調査報告書・整備工事報告書』(群馬県太田市教育委員会、2015)
群馬県太田市では、文化財建造物を保存し活用していくために、中島知久平邸の調査および整備工事を進め、2014(平成26)6月に「太田市中島知久平邸地区交流センター」をオープンして

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4.結果 4-1.近代和風建築総合調査報告書 都道府県別結果

4.結果 4-1.近代和風建築総合調査報告書 都道府県別結果

研究結果について突入します。
まずは近代和風建築調査報告書を調査しました。神奈川県立図書館の所蔵でないものは東京都立中央図書館で、それでもないものは国立国会図書館に通って閲覧しました。

4-1.近代和風建築総合調査報告書 都道府県別結果
47都道府県の教育委員会が刊行した『近代和風建築総合調査報告書』を確認し、掲載された本文、写真のキャプション等の中から10の建築物について室内装飾織物の記載があ

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巻末図一覧

巻末図一覧

巻末図はこんな感じです。修論の大切な調査対象となりました「旧川上貞奴別邸(萬勝園)」と「八勝館御幸の間」の室内装飾織物のある箇所について、詳細を図面にしてみました。

巻末図一覧

1 転載 旧川上貞奴別邸(萬勝園)部屋配置図(かつての室名)
2 転載 旧川上貞奴別邸(萬勝園)部屋配置図(現在の室名)
3 旧川上貞奴別邸(萬勝園)_広間(桐の間)平面図・展開図
4 旧川上貞奴別邸(萬勝園)_書斎(

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引用文献・参考文献

引用文献・参考文献

多くの文献にお世話になりました。文献に出会うと、新たな好奇心が芋づる式にわいてきて、さらなる新たな文献に出会う、という構図でした。

引用文献・参考文献

朝日新聞社、町田私立博物館、2007、日本・インドネシア共和国国交50周年記念 
インドネシア更紗のすべて 伝統と融合の芸術、朝日新聞社
愛知県教育委員会、愛知県の近代和風建築、2007
池田俊彦、1990、数寄の名料亭[6]八勝館、毎日新聞

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1.序論 1-3.研究の範囲

1.序論 1-3.研究の範囲

研究の範囲はこんな感じです。

1-3.研究の範囲
本研究における「近代和風建築」の定義と「室内装飾織物」の範囲については次の通りである。
まず「近代和風建築」についてであるが、「近代」と「和風」という言葉はその視点により各種の考え方がある。例えば初田は「幕末・明治以降、近代に建設された和風建築を指して近代和風建築と呼んでいる」(初田、2001、4)という。「和風」という言葉は、明治以降に日本に新

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1.序論 1-2.目的

1.序論 1-2.目的

目的はこんな感じです。

1-2.目的
前近代の日本の建築の室内装飾では、掛け軸や屏風の表装、畳の縁等に織物が使われていた。これらは染織史の分野で様々な調査研究が行われ、実態の解明がされている。近代和風建築においても、前近代同様に掛け軸や屏風の表装、畳の縁等に織物が使われているが、建築の近代化に伴い、それに対応した室内装飾として織物の新しい使われ方も始まる。その代表例が明治宮殿である。近代和風建築

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1.序論 1-1.研究の背景

1.序論 1-1.研究の背景

研究の背景はこんな感じです。

1-1.研究の背景
現代の和風建築の壁面に日本の伝統ある室内装飾織物を見ることができる場合がある。2つの事例をあげる。1つ目の事例は2005(平成17)年4月に国の迎賓館として開館した京都迎賓館である。内閣府迎賓館京都事務所発行のパンフレットによると「日本建築の長い伝統の粋と美しさを現代の建築技術と融合させる「現代和風」の創造を目指して設計された」という。大臣会合や

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修士論文のこと

修士論文のこと

学生時代に超ウルトラさぼりんぼうだった私が、55歳にして、「そうだ、大学院いこう!!!」と思い立ちチャレンジしました。きっかけは、53歳のときに、大好きな美術館・博物館業界を知りたいと思い博物館学を学んだところ、私には専門性が無い〜、と気づいたことです。ではどんな専門性を磨こうとしたかというと、染織と建築のはざまににある室内装飾織物の世界です。これから少しずつ「近代和風建築にみる室内装飾織物につい

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