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5.考察 5-1.近代和風建築調査報告書について

考察に突入します。
調査は約3年前です。当時47都道府県のうち、45都道府県の近代和風建築調査報告書が刊行されていました。未刊行であった広島県と熊本県については、後日調査してみたいと考えています。

5-1.近代和風建築調査報告書について
45都道府県の近代和風建築総合調査報告書の物件について室内装飾織物が使用されている記載の有無を確認したところ、10の物件で確認できた。また、記載は無いものの他の文献等の情報より4の物件で室内装飾織物が確認できた。報告書は近代建築の所在地・形態・意匠・及び保存状況等を把握し、その建築史的価値を評価するためのものである。染織史的な視点で行われた調査ではないため、必ずしも全ての室内装飾織物について記載されているわけではないと考えられる。実際にはもっと室内装飾織物が使用されている可能性もある。
室内装飾織物について確認できた14の物件の建築用途の内訳は、住宅10、別荘2件、料亭2件であった。大実業家や公爵の大邸宅、現在も営業している老舗料亭等で、贅を尽くした室内意匠の中で染織が使用される傾向にあると考える。
室内装飾織物が使用されていると記載のある箇所の合計は18箇所で、内訳は、襖4箇所、小襖4箇所、天井4箇所、壁4箇所、欄間1箇所、屏風1箇所であった(表9)。襖・小襖・屏風に織物が使用されることは前近代にもあったが、天井・壁・欄間については近代以降に使用されるようになったのではないかと考える。

表9_近代和風建築総合調査報告書_建築種別・室内装飾織物箇所一覧


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