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European Horizons

中高大を共にしている仲間と成田を発ってはや18日。ドバイを目下に地球を半周、ビッグ・ベンを眺め、ロンドン橋を渡り、ロゼッタ・ストーン、アルノルフィーニ夫妻像との対面を果たしサンドイッチを頬張る。ジェームズ・ボンドとすれ違いウィンザー城の城壁と対峙、ビートルズになってロンドンバスに乗って、グリニッジをまたけば本初子午線。百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、今まで机上で学んできたことが本当の世界として広がっているのだと実感する。

英米豪圏からの活発な若者たちと挨拶をかわしながらドーバーを渡り、アムステルダムの夜を目にし、ドイツでソーセージを食べオーストリアで空を飛ぶ。西洋人たちに自分の名を呼んでもらえるのが嬉しくなって、ベネチアの夜を眺め語らいあう。電車とロープウェイを乗り継げばそこは憧れのスイスアルプス。しかしやはり山は歩かねば満足出来ぬ、ここは次の訪問リストに入れて、今回は谷からロープで飛び下りる。フランスのカントリーで西洋人とワインを飲み交わして陽の差す暖かなエッフェル塔。カタツムリのフランス料理を初めて口にしたその翌朝、もう西洋人たちは思い出を僕の心において去ってしまった。

シャンゼリーゼの木漏れ日が淡い気持ちを包み込み、オルセーとルーブルに足を運べばヨーロッパ何百年の歴史が僕を圧倒する。感覚は五感以外にも沢山あるのではないか。斜陽を受けた体の温かみはなんというのだろう。言葉は感覚を言い表すには全く足りないのではないか。英語にない日本語表現もあるが、日本語にない英語表現もある。もう一生会わないかもしれない世界の仲間とSee youと言って別れを告げたが、それに静かな寂しさを覚えたのは僕が日本語話者だからだろうか。ヨーロッパに潜む歴史が僕を違う時空へと連れ回し、その深みと文化が僕を芯から振るい、全てがアトラクションのようにリアルに降りかかる。

こんな旅ももう終わるという。視覚偏重のこの現代世界で、肌で感じ胸で覚えた旅はそれこそinvaluable, 測れないほどの(それだけ大きな)価値があるように思われる。ナポレオンはどんな光を見ただろうか。死を前にした国王ルイはどんな音を聞いただろうか。サモトラケのニケを発見した農夫は何を思っただろうか。時空を彷徨うヨーロッパの旅先で、青年は今、生まれ変わる。

パリのホテルにて 2023,9,25


ドバイ上空


タワーブリッジ


ロゼッタストーン


アルノルフィーニ夫妻像


ウィンザー


ウィンザー城


グリニッジ本初子午線
グリニッジ大学


ドーバー海峡


アムステルダム


ライン渓谷


オーストリア・チロル


ヴェネツィア


ユングフラウ


キャニオンスウィング


ジュネーブ


シャトー


エッフェル塔


アレクサンドル三世橋


モナリザ


サモトラケのニケ


ヴェルサイユ宮殿

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