朗読教室

「こんな世界に私は住みたい」

「こんな世界に私は住みたい」

*2021年9月朗読教室テキスト③ ビギナーコース番外編 *著者 久坂葉子 こんな世界に私は住みたい 肩書もいらず勲章もなく 人はそれぞれはだかのままの心でもって 礼節だけはわきまえて 男も女も仕事をし 男も女も恋をして ひとりひとりの幸福を ひとりひとりのねぎごとを 心にそっと小さくもって 一生かかって、みずからのためしつくす こんな世界に私は住みたい              一九四九年六月十八日 何度となく教室で取り上げて、ウツクシキに通う生徒さんの心をきゅうっと

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『お伽草紙』

『お伽草紙』

*2021年9月朗読教室テキスト② アドバンスコース *著者 太宰治 桃太郎、カチカチ山、舌切雀、瘤取り、浦島さんなど、父は子供に読んで聞かせる。この父は服装もまづしく、容貌も愚なるに似てゐるが、しかし、元来ただものでないのである。物語を創作するといふまことに奇異なる術を体得してゐる男なのだ。  ムカシ ムカシノオ話ヨ  などと、間の抜けたやうな妙な声で絵本を読んでやりながらも、その胸中には、またおのづから別個の物語が醞醸せられてゐるのである。 ーお伽草紙「前書き」よりー

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『風の又三郎』

『風の又三郎』

*2021年9月朗読教室テキスト①ビギナーコース *著者 宮沢賢治 童話「風の又三郎」は9月の物語です。木枯らしが吹いているようなイメージがあったのですが、各章のタイトルが日付になっていて、9月1日に又三郎が村へやってくるところから始まり、ひと月もしないうちに去っていきます。 どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど どどうど どどうど どどう  *本文より くるみが青いのも、かりんがすっぱいのも、秋にかけて熟し

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第30回朗読発表会

第30回朗読発表会

先日の日曜日、8月8日は私が開催する朗読教室の朗読会でした。 なんと、ちょうど30回目。 教室を始めてもう10年以上になります。 新しい方も10年以上の方もそれぞれの個性が楽しい。 技術面の指導はついムキになって厳しいときもあるかもしれませんが、その人自身が見える朗読を大切にしているので、できないことは言っていない、はず(笑)多分!? レッスンでは、きれいに読むことを朗読表現の目的としません。 それではゴールが「みんな同じ」になってしまいます。 いつも思うのは、作品の解釈

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『魯山人味道』

『魯山人味道』

*2021年8月朗読教室テキスト② アドバンスコース *著者 北大路魯山人 もともとたべものは、舌の上の味わいばかりで美味いとしているのではない。シャキシャキして美味いもの、グミグミしていることが佳いもの、シコシコして美味いもの、ネチネチして良いもの、カリカリして善なるもの、グニャグニャして旨いもの、モチモチまたボクボクして可なるもの、ザラザラしていて旨いもの、ネバネバするのが良いもの、シャリシャリして美味いもの、コリコリしたもの、弾力があって美味いもの、弾力のないためにう

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『魚の話』

『魚の話』

*2021年8月朗読教室テキスト③ ビギナーコース番外編 *著者 立原道造 或る魚はよいことをしたのでその天使がひとつの願をかなへさせて貰ふやうに神様と約束してゐたのである。 かはいさうに!その天使はずゐぶんのんきだつた。 魚が死ぬまでそのことを忘れてゐたのである。魚は最後の望みに光を食べたいと思つた、ずつと海の底にばかり生まれてから住んでゐたし光という言葉だけ沈んだ帆前船や錨⚓️からきいてそれをひどく欲しがつてゐたから。が、それは果たされなかつたのである。 天使は見た、魚

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『十力の金剛石』

『十力の金剛石』

*2021年8月朗読教室テキスト① ビギナーコース *著者 宮沢賢治 「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン。  はやしのなかにふる霧きりは、蟻のお手玉、三角帽子の、  一寸法師のちいさなけまり」  霧がトントンはね踊おどりました。 「ポッシャリ、ポッシャリ、ツイツイ、トン。  はやしのなかにふる霧は、  くぬぎのくろい実、柏の、かたい実のつめたいおちち」 『十力の金剛石』は、これまでに何度も朗読したことがある物語です。一番最初は2015年6月に、森岡書店さんで展示をさ

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真に自分を正しく生かすものは。「人生論、愛について」武者小路実篤

真に自分を正しく生かすものは。「人生論、愛について」武者小路実篤

オンラインで朗読と音読のレッスンを始めてから、どうも情報発信の力不足を感じる。 「あなたの問題を解決するのは、この教室です!」というのが、レッスンの企画を考えるときに、ビジネス本などで薦められる考え方。 講師をしているので、もちろんどんな質問にも答えられるようでありたい。 身に付けたい技術について問題があれば、解決できる方法を提示したい。 そのための努力は、自分自身の疑問や実力養成に重なっているので自然としてしまう。 でも、レッスンのテーマを問題解決型で発信しようとする

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『セロ弾きのゴーシュ』

『セロ弾きのゴーシュ』

*2021年7月朗読教室テキスト① ビギナーコース *著者 宮沢賢治 ゴーシュはぼんやりしてしばらくゆふべのこはれたガラスからはひってくる風を吸っていましたが、町へ出て行くまで睡って元気を取り戻さうと急いでねどこへもぐりこみました。 活動写真館でセロを弾く係のゴーシュは、仲間の楽手のなかで一番下手だという理由で楽長にいつも叱られています。みんなが帰った後も、壁の方を向いてぼろぼろ涙をこぼしながら、一人残って練習をします。家に帰ってもやっぱり気になって夜中もとうにすぎてしま

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『こゝろ』

『こゝろ』

*2021年7月朗読教室テキスト② アドバンスコース *著者 夏目漱石  アドバンスコースでは、先月に引き続き夏目漱石を取り上げます。 『こゝろ』は、1914年4月から朝日新聞に連載された全110話の小説です(最終話は百十一となっていますが、自筆原稿では百三が抜けています)。昭和31年以降現在に至るまで国語の教科書に掲載されていますので、多くの人が”一部分を読んだことのある”物語だと思います。  個人的には2015年から1年と2ヶ月に渡り、毎月末の土曜に都内某所で朗読会を

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